『トレーニング・デイ』
製作年/2001年 監督/アントワン・フークア 脚本/デヴィッド・エアー 出演/デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、エヴァ・メンデス
LAの裏の顔がわかる!
ロス市警の麻薬課に配属された新人の刑事ジェイクは、アロンゾというベテランの上司と組むことに。勤務初日の彼に、アロンゾは街をめぐりながら麻薬密売の最前線を見せる。情報屋との接触、麻薬の押収、銃撃やレイプがはびこる街の実態……何よりジェイクを驚嘆させたのは、麻薬犯罪者を脅して私服を肥やしているアロンゾの素顔。汚職仲間に引き入れようとするアロンゾに、正義感の強いジェイクは抵抗するが……。
アロンゾを演じたデンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を受賞したことで知られる社会派サスペンス。本作で描かれるLAは、観光客が気軽に訪れることができるような街ではなく、貧困層が暮らすサウスセントラルやワッツなどの犯罪多発地区。当然、ロケは困難だったが、街の現実を知ってほしいという住人たちの協力もあり、ストリートのリアルを映し出すことに成功した。LAの裏の顔を知るうえでも必見。
『コラテラル』
製作年/2004年 製作・監督/マイケル・マン 脚本/スチュアート・ビューティ 出演/トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、マーク・ラファロ、ジェイダ・ピンケット=スミス
LAの夜景に魅了される!
街を流すタクシー運転手マックスは、ビンセントという謎めいた客の依頼で、多額の報酬と引き換えに一夜の貸切運転を引き受ける。ところが、ビンセントの正体は殺し屋で、一夜に5人を始末する仕事を遂行しようとしていた。殺人の共犯となりかねない危険な状況下で、マックスは反抗を試みるが、百戦錬磨のビンセントにかなうはずもない。やがて最後の標的の元に向かうことになったマックスは、ある決意を固める……。
新作ドラマ『TOKYO VICE』も話題の鬼才マイケル・マンが、トム・クルーズとジェイミー・フォックスを主演に迎えて生み出したハードボイルド。ほぼ全編が夜のLAを舞台にしており、夜景の鮮烈さが、とにかく映える。マン監督は2004年当時としては珍しい、解像度の高いデジタルビデオを導入して、フィルムではとらえきれない夜の美しさを映像に収めた。ちなみにマン監督は『ヒート』でもLAの街を描いている。
『マルホランド・ドライブ』
製作年/2001年 監督・脚本/デヴィッド・リンチ 出演/ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、ジャスティン・セロー
ハリウッドの深い闇を描く!
自動車事故によって記憶を喪失し、とある留守宅に迷いこんだ女性。そこはとある女優の家だった。その姪であり、叔母に憧れて上京してきたベティは、リタと名乗るこの女性に同情して、彼女の記憶探しに協力することに。謎を解くカギは、リタがふと思い出した“ダイアン・セルウィン”という女性の名前。ベティは映画のオーデション通いのかたわら、調査を進め、一方でしだいにリタに魅了されていく。その先には、驚がくの事実が……。
ロサンゼルスの名所といえば、何といってもハリウッド。この映画の都に、『ツイン・ピークス』でおなじみの奇才デヴィッド・リンチが切りこんだ。マルホランド・ドライブは実在する山道で、LAの夜景を見下ろすことができるが、本作は見据えるのはその美しさではなく、むしろ深い闇。物語はシュールかつ難解だが、人々の夢を吸い寄せ、欲望が絡み合うハリウッドの、魔物のような側面を感じてしまうに違いない。
『ジャッキー・ブラウン』
製作年/1997年 原作/エルモア・レナード 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 出演/パム・グリア、サミュエル・L・ジャクソン、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン
ロケ地のセレクトが抜群!
国内便のキャビンアテンダント、ジャッキー・ブラウンは、武器密売人オデールの裏金を運ぶ仕事で安月給を補っている。ある日、彼女はオデールの逮捕を目論む捜査官に捕まってしまい、裏金の運搬を見逃す代わりに捜査への協力を求められる。冷酷なオデールは、ミスには容赦しない。逆境の中で、ジャッキーは保釈金融業者マックスの協力を得て、オデールから大金を強奪して逃亡するという一世一代の賭けに打って出る。
8歳の頃からロサンゼルスで暮らしているクエンティン・タランティーノは、キャリアの前半に『レザボア・ドッグス』をはじめ、この地を舞台にした作品を連打してきたが、本作もそのひとつ。主に彼が育ったサウスベイで撮影が行なわれた。ジャッキーが大金受け渡しのために乗りこんだデル・アモ・ショッピング・センターをはじめ、生活感を匂わせるロケ地のセレクトが妙味。
『ダイ・ハード』
製作年/1988年 監督/ジョン・マクティアナン 出演/ブルース・ウィリス、アラン・リックマン、ボニー・べデリア
LAアクションサスペンスの最高峰!
NY市警の刑事ジョン・マクレーンはクリスマス休暇で、妻ホリーが暮らすLAへ飛び、彼女が重役を務める日系企業ナカトミ商事のビルへと向かった。社屋ではクリスマス・パーティが開かれ、賑やかな雰囲気。ところが、このビルを謎のテロリスト集団が占拠し、社員をすべて人質にとった。一味の目を逃れたマクレーンは、たったひとりでテロリストに立ち向かい、ホリーを救うためにゲリラ戦に挑む……。
ご存知、アクション・サスペンスの最高峰。舞台は高層ビルという限定空間で、LA市内の風景は多くは出てこないが、ナカトミビルはLAに実在する建物。映画を製作した20世紀フォックス社のビル、フォックスプラザが撮影に使われており、その外観は、ほぼ劇中で見られたまま。マクレーンがダイブした屋上のシーンはもちろん、戦闘が繰り広げられる屋内の場面のいくつかも、実際にこのビル内で撮影したものだ。
photo by AFLO