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2024.05.04


【まとめ】手に汗握る!サスペンス映画46本

『Safari Online』で紹介してきたサスペンス映画をまとめてご紹介。随時更新していくので、サスペンス映画好きな人は定期的にチェックしてみて!

 

 
カンバセーション ・・・盗聴・・・

『カンバセーション ・・・盗聴・・・』
製作年/1974年 監督/フランシス・フォード・コッポラ 出演:ジーン・ハックマン、ジョン・カザール

盗聴屋が知った男女の運命とは?
オスカー獲得した『ゴッドファーザー』を太陽とするなら、その直後にコッポラが手掛けた本作はまるで月のようにミステリアスな光を放つ一作だ。男の職業は盗聴屋。頼まれた仕事なら何でもこなし、決して細かな事情に踏み込むことはない。だが今回の一件は違った。公園で密会する男女をガンマイクで盗聴し、内容の解析を進めるうちに彼は、男女が誰かに命を狙われているのではないかというパラノイアを膨らませはじめる。果たしてその真相は……。

もともとアントニオーニ監督作『欲望』やヘルマン・ヘッセの小説などから影響を受けて着想した本作。製作準備中にウォーターゲート事件が勃発し、スタッフ一同、フィクションが現実化したかのような衝撃を受けたとも言われる。ちなみにジーン・ハックマンはこれとよく似た役柄で24年後、『エネミー・オブ・アメリカ』(1998年)に登場。盗聴の特殊技能や鉄網だらけの仕事場、半透明コートなど、随所に目配せらしきものが垣間見られる。ストーリー的には異なるものの、どちらも鑑賞すれば楽しみ方が2倍に広がる。 

 
 

 
何度も観たくなる傑作サスペンス映画5選!

『ミシシッピー・バーニング』
製作年/1988年 監督/アラン・パーカー 出演:ジーン・ハックマン、ウィレム・デフォー

骨太な視点で激動の時代を描く一作!
1964年、ミシシッピー州でアフリカ系の青年と公民権運動家らが行方不明になり、後に射殺体で発見された事件を基にしたサスペンス。これに対処すべくFBIが送り込んだのは、ウィレム・デフォー演じる若手エリートと、ジーン・ハックマン演じるベテラン捜査官だ。片や北部出身の理想に燃える男で、片や南部出身でこの地の社会や人々の心理も知り尽くした男。このなかなか噛み合わないタッグぶりが物語を力強く加速させる。

当時はアフリカ系アメリカ人の権利獲得のため公民権運動が激しさを増していく時代だが、それに対してKKKなどの過激な差別主義者たちは猛烈に反発。舞台の街では保安官までもがその古くからの考えに固執し、秘密を漏らした者には肌の色に関わらず容赦なき制裁が振るわれていく。度重なる暴力、殺人、放火。それに対応してFBIからは更なる大要員が配備され、さながら戦争のごとき“大炎上”へと転じていくさまは壮絶だ。この事件に出口はあるのか。鍵を握るヒロイン役として、若手時代のフランシス・マクドーマンドが好演しているのも見逃せない。 

 
 

 
心理サスペンス映画5選!

『羊たちの沈黙』
製作年/1991年 原作/トマス・ハリス 監督/ジョナサン・デミ 脚本/テッド・タリー 出演/ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン

クローズアップ映像にスリルが倍増!
若い女性を狙った猟奇連続殺人事件が発生。FBI候補生クラリスは犯人像の手がかりを求めて、獄中の精神科医レクターを訪ねる。レクターは天才的な頭脳を持つ一方で、人を殺してその内臓を食べた猟奇犯罪者でもあった。クラリスは彼と面会を重ね、“バッファロー・ビル”と呼ばれる犯人に近づいていく。その頃バッファロー・ビルは新たな標的として、上院議員の令嬢を拉致・監禁していた……。

サイコスリラーのブームの先駆けたとなった、おなじみのアカデミー賞受賞作。トマス・ハリスのベストセラー小説を、ジョナサン・デミ監督は濃密な構成で映像化。とりわけ、クローズアップのインパクトは大きく、クラリス=ジョディ・フォスターとレクター=アンソニー・ホプキンスの顔を交互にとらえたドアップの映像をはじめ、絵的にドキドキさせられる場面は多い。続編『ハンニバル』や、前日談『ハンニバル・ライジング』と併せて、是非! 

 
 




『ゆりかごを揺らす手』
製作年/1992年 監督/カーティス・ハンソン 出演/アナベラ・シオラ、レベッカ・デモーネイ、アーニー・ハドソン

夫を亡くした妻の復讐劇にゾッとする!
『ミザリー』(90)、『氷の微笑』(92)など、過去に類をみないヒロインが登場するサスペンスやスリラーがブームとなっていた1990年代の初め。この1992年の映画も、主人公の恐ろしさが全世界を震え上がらせた。発端は、ある産婦人科医の患者に対するセクハラ騒動。その患者、クレアの訴えで窮地に立たされた医師は自殺。ショックで医師の妻ペイトンも流産してしまう。やがてクレアの家にベビーシッターが雇われる。そのベビーシッターこそ、ペイトンだった。クレアに対する信じがたい復讐劇がはじまる。

無垢な赤ちゃんが眠るゆりかご。それを揺らす手の正体は……という物語。喘息の持病があるクレアに発作を起こさせるなど、ペイトンの行動は強烈にエグいのだが、クレア側も長女エマの機転などで対抗。壮絶なバトルの要素も呈していき、終盤は肉弾戦にまで発展し、呆然とさせられる。完璧に“悪女”のペイトンなのだが、赤ん坊であるクレアの息子に自分の母乳を与えるなど、母性を失った悲しみも抱えているところがポイント。基本は戦慄のスリラーながら、切ない後味に引きずられる人も多いことだろう。 

 
 

 


『マンハッタン殺人ミステリー』
製作年/1993年 監督・脚本・出演/ウディ・アレン 出演/ダイアン・キートン、アンジェリカ・ヒューストン

名所を巡るコメディサスペンス!
倦怠期を迎えた夫婦、ラリー(ウディ・アレン)とキャロル(ダイアン・キートン)が暮らすアパートの隣室で、老婦人が心臓発作の末に死去。老婦人の夫が死に関与しているのではないかと疑うキャロルは友人やラリーを巻き込み、探偵よろしく“犯罪捜査”を始めるが……。大半のウディ・アレン監督作同様、そしてタイトルからも分かるように、物語の舞台はニューヨーク。監督自身のお気に入りレストランやカフェがさり気なく登場するのはもちろん、リンカーン・センターやマディソン・スクエア・ガーデンなど、誰もが知るスポットでも物語が展開する。スリルよりはユーモアが中心の作品だが、ニューヨークの空気を感じながらゆるくハラハラするのにオススメ。 

 
 

 


『ジャック・サマースビー』
製作年/1993年 原案・脚本/ニコラス・メイヤー 監督/ジョン・アミエル 出演/リチャード・ギア、ジョディ・フォスター、ビル・プルマン

帰還した夫は本物……?
南北戦争終結直後の小さな村に、戦場に行っていた農園経営者のジャック・サマースビー(リチャード・ギア)が数年ぶりに帰還。ジャックの妻ローレル(ジョディ・フォスター)や村人たちは、戦死したはずの彼の帰還に戸惑う。しかも、嫌われ者だった以前のジャックとは違い、彼は思慮深い人物へと変貌していて……。

実際に起きた事件をベースにしたフランス映画を、設定を変えてハリウッドでリメイク。ネタばらしすると、帰還したジャックは本物のジャックによく似た偽者。「なぜ彼はなりすましをするのか?」「彼はいったい何者なのか?」の謎が、物語を支配していく。そこへ妻ローレルと偽ジャックが新たに紡ぐ夫婦愛の物語が加わり、ラストは号泣必至。 

 
 

 
ワイルドなブラピに惚れる!
ブラッド・ピット骨太映画5選!

『セブン』
製作年/1995年 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ

不穏な空気感にハラハラする!
“GLUTTONY=暴食”として殺された肥満の男、“GREED=強欲”として殺された悪徳弁護士……。キリスト教の“七つの大罪”をモチーフにした猟奇連続殺人事件を追うことになった退職間近の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と、若手刑事のミルズ(ブラッド・ピット)。ジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー)を名乗る犯人が自首してきたが、“七つの大罪”の残るふたつ“ENVY=嫉妬”と“WRATH=憤怒”の死体はまだ発見できていない。取引を持ちかけたジョンは、サマセットとミルズをある場所に連れて行き……。

予測不可能な意外すぎる展開、彩度の低い映像で感じさせる不穏な空気、カイル・クーパーが担当した斬新なタイトルバックとエンドロール。さまざまな要素が話題となった傑作サスペンスで、一躍デヴィッド・フィンチャーの名を知らしめた。ブラッド・ピットはワイルドと美しさが同居した佇まいや、ラストでの衝動と決断の一連のシーンなど、キャリア初期の中でもベストアクト! 蛇足だが妻役のグウィネスとは本作をきっかけに交際した。 

 
 

 
何度も観たくなる傑作サスペンス映画5選!


『黙秘』
製作年/1995年 監督:テイラー・ハックフォード 出演:キャシー・ベイツ、ジェニファー・ジェイソン・リー

変幻自在、キャシー・ベイツの存在感に唸る!
米メイン州の屋敷で死亡事件が発生。現場で鈍器のようなものを振り上げる姿を目撃されたメイドが容疑者として浮上する。その中年女性は、かつて夫が死亡した際も容疑をかけられており……。あらゆる状況から見て彼女が怪しいのは明らかだが、演じるのが『ミザリー』で強烈なイメージを残したキャシー・ベイツというのも、先入観を強める一つの大きな要因だ。その結果、我々は物の見事に騙され、ラストではまさかの胸揺さぶる熱い感動すら押し寄せてくるのだから、これは本当に油断も隙もない映画である。

スティーヴン・キングの原作小説を脚色したのは、有名劇作家の息子であり、当時脚本家として駆け出しだったトニー・ギルロイ。今や『ボーン』シリーズの脚本やSWドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』のクリエイターとしても知られる彼だが、本作ではフラッシュバックを巧みに使い、過去と現在をスリリングに併走させながら女性たちの人間ドラマをより深みあるレベルへ昇華させている。いま見直しても語り口に無駄がなく、非常に“技あり!”な一本だ。 

 
 

 
雪が降ったらご注意を!?
冬のサスペンス映画5選!

『ファーゴ』
製作年/1996年 製作/イーサン・コーエン 監督/ジョエル・コーエン 出演/フランシス・マクドーマンド、スティーブ・ブシュミ

寒さは判断力を失わせる?
米ミネアポリスで、多額の借金に悩むカーディーラーが、妻の偽装誘拐を画策。チンピラコンビを雇い、彼女を誘拐させて、富裕な義父から身代金を巻き上げようとする。ところがチンピラコンビが犯行中、目撃者らを殺害したことから計画が狂い始めた。妊娠中の保安官マージは丁寧な捜査で、少しずつ事件の真相に迫っていく。一方、カーディーラーやチンピラコンビは不測の事態によって追いつめられ、図らずも惨劇を広めてしまう。

米映画賞を席巻した、鬼才コーエン兄弟の秀作サスペンス。舞台となるミネアポリスは、真冬には気温が氷点下より上がることが稀で、当然降雪量も少なくない。そんな極寒の中で物語は展開。雪原に死体が転がり、真っ白な大地は鮮血に染まる。犯罪に手を染めた人々が暴走する物語は、緊張感とブラックユーモアに彩られ目が離せない。彼らを狂気に追い込んだのは、それぞれの欲望に加え、判断力を失わせる寒さが影響しているのかもしれない。  

 
 

 
ワイルドなブラピに惚れる!
ブラッド・ピット骨太映画5選!

『デビル』
製作年/1997年 監督/アラン・J・パクラ 出演/ブラッド・ピット、ハリソン・フォード、マーガレット・コリン

同じルーツを持つ2人の友情と対峙!
IRAの活動家フランキー(ブラッド・ピット)と引退間近の警察官トム(ハリソン・フォード)。立場は異なれど、同じアイルランド系というルーツを持つふたりの奇妙な友情と対峙を描いたサスペンス・アクション。武器調達のためにNYにやってきたフランキーは仲介者の紹介で準備が整うまでトムの家に居候することになる。ごく普通の家庭で束の間の穏やかさを感じるフランキーと、若いフランキーに親身になるトムの温かな描写と、銃撃戦などの激しいアクションシーンの対比に引きこまれる。

特にブラッド・ピットの、ハードでかっこいい役柄の中に時折見せる、庇護欲を駆り立てる子犬のような瞳と、お父さん然としたハリソン・フォードの渋みがいい。アイルランド独立運動を率いた武装組織IRAや、アメリカにはアイリッシュ系移民が多いことなど、背景もわかっているとより興味深いかも。もちろん何も知らずに見ても面白い! 

 
 

 


『ガタカ』

製作年/1997年 監督・脚本/アンドリュー・ニコル 出演/イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、ザンダー・バークレイ

適正者と偽り宇宙飛行士を目指す!
遺伝子操作によって優良な要素だけを持って生まれた“適正者”と、自然妊娠で生まれたことで能力や外見の劣る“不適正者”が存在する未来。ヴィンセント(イーサン・ホーク)は“不適正者”のハンデを抱えながらも宇宙飛行士になる夢を叶えるため、“適正者”であるジェローム(ジュード・ロウ)から生体IDを買い取る。こうしてジェロームになりすましながら、夢に向かう日々を送りはじめるヴィンセントだったが……。

公開から20年以上経った今も、大勢のファンに愛され続けるSFサスペンスの傑作。社会的な差別を受ける“不適正者”のヴィンセントが“適正者”になりすまし、苦闘を繰り広げる展開がスリリング。単なる“なりすまし”の枠を超え、生きることの意味や運命とは何かを考えさせる。 

 
 

 


『ジャッキー・ブラウン』
製作年/1997年 原作/エルモア・レナード 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 出演/パム・グリア、サミュエル・L・ジャクソン、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン

ロケ地のセレクトが抜群!
国内便のキャビンアテンダント、ジャッキー・ブラウンは、武器密売人オデールの裏金を運ぶ仕事で安月給を補っている。ある日、彼女はオデールの逮捕を目論む捜査官に捕まってしまい、裏金の運搬を見逃す代わりに捜査への協力を求められる。冷酷なオデールは、ミスには容赦しない。逆境の中で、ジャッキーは保釈金融業者マックスの協力を得て、オデールから大金を強奪して逃亡するという一世一代の賭けに打って出る。

8歳の頃からロサンゼルスで暮らしているクエンティン・タランティーノは、キャリアの前半に『レザボア・ドッグス』をはじめ、この地を舞台にした作品を連打してきたが、本作もそのひとつ。主に彼が育ったサウスベイで撮影が行なわれた。ジャッキーが大金受け渡しのために乗りこんだデル・アモ・ショッピング・センターをはじめ、生活感を匂わせるロケ地のセレクトが妙味。 

 
 

 


『隣人は静かに笑う』
製作年/1998年 監督/マーク・ぺリントン 出演/ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス

隣人の嘘にはご注意を!
お隣りに住んでいるのが恐るべき人物だったら……というのは、いかにも映画的。しかし今作ほど危険な隣人も珍しいかも。大学教授のマイケルが、やけどを負った隣家の少年を助けたことから、2カ月前に引っ越してきたばかりのその隣人、オリバーの一家と交流するようになる。マイケルの専門はテロリズムの歴史。自称・建築技師というオリバーだが、郵便の誤配達から彼が嘘をついていることが徐々に明らかになっていく。

怪しい隣人のオリバー役、ティム・ロビンスの一見、人のよさそうな演技もあって、その裏に隠れた真実とのギャップで、じわじわ背筋を凍らせる。そして訪れる最初の悲劇はかなりショッキングだし、急転直下のクライマックスまで予想外のサスペンスを味わえるはず。いくつかツッコミどころはあるけれど、得体の知れない恐怖感と、アクションエンタメの両面からアプローチしているので、意外に気軽に観られる“怖い隣人”モノと言えそう。 

 
 

 


『リプリー』
製作年/1999年 原作/パトリシア・ハイスミス 監督・脚本/アンソニー・ミンゲラ 出演/マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ジュード・ロウ

憧れのお坊ちゃまになりすます!
貧しい青年トム・リプリー(マット・デイモン)は、ひょんなことから大富豪の放蕩息子であるディッキー(ロブ・ロウ)と意気投合。やがてリプリーは傲慢だが魅力あふれるディッキーに強い憧れと愛情を抱くが、ディッキーはリプリーの想いを冷淡に拒否。リプリーはディッキーを衝動的に殺し、彼になりすますことを思いつく……。

『太陽がいっぱい』の原作としても知られるパトリシア・ハイスミスの小説を、故アンソニー・ミンゲラ監督が映画化。憧れのお坊ちゃまになりすますトムの突発的な計画は初めこそ順調に行くものの、徐々に綻びを見せ、彼を怪しむ人の死体も増えていく。アラン・ドロンがリプリーに魅力を持たせた『太陽がいっぱい』とは異なり、滑稽な主人公を襲うシビアな展開が残酷。 

 
 

 


『アメリカン・サイコ』
製作年/2000年 原作/ブレット・イーストン・エリス 監督・脚本/メアリー・ハロン 出演/クリスチャン・ベール、ウィレム・デフォー、ジャレッド・レト、ジョシュ・ルーカス

光と闇のニューヨークで起こる連続殺人!
ウォール街の証券会社に勤めるエリートビジネスマン、パトリック・ベイトマン(クリスチャン・ベール)は一等地の高級マンションに住み、ハイブランドのスーツに身を包み、誰もが羨む夢の生活を送っていた。しかしその一方、ベイトマンはあり余る物質では満たされない虚無感と心の闇を感じるように。うわべだけのライフスタイルを維持する中、殺人の衝動に取り憑かれ、若く美しい女性を次々と殺していくが……。ブレット・イーストン・エリスの同名小説を映画化したサイコサスペンスで、1980年代のニューヨークを舞台に物語が展開。ゴージャスな雰囲気の中で描かれるベイトマンの表向きの日常と、夜の街で行われるダークな悪事のコントラストもニューヨーク的。 

 
 

 


『トレーニング・デイ』
製作年/2001年 監督/アントワン・フークア 脚本/デヴィッド・エアー 出演/デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、エヴァ・メンデス

LAの裏の顔がわかる!
ロス市警の麻薬課に配属された新人の刑事ジェイクは、アロンゾというベテランの上司と組むことに。勤務初日の彼に、アロンゾは街をめぐりながら麻薬密売の最前線を見せる。情報屋との接触、麻薬の押収、銃撃やレイプがはびこる街の実態……何よりジェイクを驚嘆させたのは、麻薬犯罪者を脅して私服を肥やしているアロンゾの素顔。汚職仲間に引き入れようとするアロンゾに、正義感の強いジェイクは抵抗するが……。

アロンゾを演じたデンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を受賞したことで知られる社会派サスペンス。本作で描かれるLAは、観光客が気軽に訪れることができるような街ではなく、貧困層が暮らすサウスセントラルやワッツなどの犯罪多発地区。当然、ロケは困難だったが、街の現実を知ってほしいという住人たちの協力もあり、ストリートのリアルを映し出すことに成功した。LAの裏の顔を知るうえでも必見。 

 
 

 


『マルホランド・ドライブ』

製作年/2001年 監督・脚本/デヴィッド・リンチ 出演/ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、ジャスティン・セロー

ハリウッドの深い闇を描く!
自動車事故によって記憶を喪失し、とある留守宅に迷いこんだ女性。そこはとある女優の家だった。その姪であり、叔母に憧れて上京してきたベティは、リタと名乗るこの女性に同情して、彼女の記憶探しに協力することに。謎を解くカギは、リタがふと思い出した“ダイアン・セルウィン”という女性の名前。ベティは映画のオーデション通いのかたわら、調査を進め、一方でしだいにリタに魅了されていく。その先には、驚がくの事実が……。

ロサンゼルスの名所といえば、何といってもハリウッド。この映画の都に、『ツイン・ピークス』でおなじみの奇才デヴィッド・リンチが切りこんだ。マルホランド・ドライブは実在する山道で、LAの夜景を見下ろすことができるが、本作は見据えるのはその美しさではなく、むしろ深い闇。物語はシュールかつ難解だが、人々の夢を吸い寄せ、欲望が絡み合うハリウッドの、魔物のような側面を感じてしまうに違いない。 

 
 

 


『パニック・ルーム』
製作年/2002年 製作・脚本/デヴィッド・コープ 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、ジャレッド・レト、クリステン・スチュワート

娘を守るため母親が繰り広げる密室の攻防戦!
恐るべきレクター博士と対峙した傑作『羊たちの沈黙』をはじめ、飛行機内で娘が消えてしまう『フライトプラン』など、スリラーやサスペンスの似合う超実力派スターといえば、ジョディ・フォスター。そんな彼女が、やはり同ジャンルの巨匠である『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャーと組んだのが、この作品。11歳の娘サラとともに元夫が購入した豪邸に引っ越したメグ。しかし強盗たちが侵入し、メグと娘は家に備えられた緊急避難用の『パニック・ルーム』へ逃げこむ。

メグは閉所恐怖症で、サラは糖尿病でインスリンの注射が必要。その2人がパニック・ルームに立てこもることで、多くのトラブルも発生。パニック・ルームの機能や秘密も、犯人グループとの攻防をサスペンスフルに盛り上げる。さらにメグの娘への愛情がドラマチックな要素を加速させ、このあたりに女性を主人公にした効果が絶大だ。事件が起こるまでのスピード感や、その後の緊迫の瞬間の数々、密室の閉塞感など、フィンチャーの演出が冴えわたり、一瞬も息がつけない。サラ役は現在、トップスターとなったクリステン・スチュワートで、子役としての才能にも驚くはず。 

 
 

 
何度も観たくなる傑作サスペンス映画5選!

『ミスティック・リバー』
製作年/2003年 監督/クリント・イーストウッド 出演/ショーン・ペン、ティム・ロビンス

哀しみの傷跡を抱えた、荘厳なる街の神話
悠然と流れるミスティック川のすぐそばで、幼なじみの3人の男子たちがとある事件をきっかけにわだかまりを抱え、数十年後、一つの謎めいた殺人事件の顛末へと流れ着いていくーーー。心に闇を抱える役柄を演じたティム・ロビンスを静とするなら、酸素吸入を必要とするほどの激しさで悲しみの演技に臨んだショーン・ペンはまさに動。一級の俳優たちが織りなす剥き出しの演技ひとつひとつに心掴まれ、その果てにある運命結末に深く重く打ちのめされる逸品だ。

イーストウッド組の常連スタッフはいつも気心知れあい、俳優陣を変に緊張させることもない。ただし、何度もテイクを重ねることもなくスピーディに段取りが進むので、だからこそ役者陣は入念に準備して一発で結果を出さねばならない。このリラックスしながら周到に醸成される重厚感。そしてあらゆる要素を大河の如くひとつの流れへと集約させていくイーストウッドの手腕。何度見直しても発見の尽きない、まさに映画の教科書のような作品である。

 

 
 

 
ソン・ガンホ映画5選!

『殺人の追憶』
製作年/2003年 監督・脚本/ポン・ジュノ 出演/ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル

農村で起きた殺人事件を追う!
韓国の農村で若い女性を狙った殺人事件が続発。地元警察のパク刑事と、都会から派遣されたソ刑事が中心となって捜査に当たる。ぶっきらぼうなパク刑事は、さっさと捜査を終わらせようと、容疑者でっちあげの暴挙に出ることも。対するソ刑事は論理的かつ冷静に捜査に当たるが、解決の糸口が見つからないまま新たな被害者を出してしまう。やがて目撃者の証言により、ついに容疑者が浮かび上がるのだが……。

『パラサイト 半地下の家族』で世界的な鬼才となったポン・ジュノ監督の出世作。サスペンスフルなドラマで社会性もあるが、一方で彼らしいユーモアが全編にあふれている。そんな笑いの部分の多くを担うのが、ガンホふんするパク刑事。犯人は陰毛のない男と決めつけて銭湯に張り込むなどの、ピント外れの捜査がおかしい。仕事ぶりは、いい加減で強引かつ乱暴だが、それでも憎めないのはガンホの人間臭い個性ゆえ、だろう。 

 
 

 
心理サスペンス映画5選!

『マシニスト』
製作年/2004年 監督/ブラッド・アンダーソン 脚本/スコット・コーサー 出演/クリスチャン・ベール、ジェニファー・ジェイソン・リー

不眠と苦境のピリピリ感が観る者にも伝わる!
工場で働く男トレバーは不眠症に悩まされ、1年にわたって眠ることのない生活をおくっていた。食欲もなく体はやせ細り、なじみの娼婦にも心配される始末。アイバンと名乗る新人の溶接工と出会った日、彼は不注意から職場で事故を起こしてしまう。“アイバンに気を取られた”と弁明するも、そんな人物はおらず、トレバーは工場で孤立を深めていく。しかし再びアイバンは姿を現わし、トレバーは真実を追求しようとするが……。

『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』など、サスペンスの分野で才気を発揮しているブラッド・アンダーソン監督の代表作。主人公トレバーが見ているものは現実か、幻想か!? 不眠症と苦境ゆえにピリピリとした感覚を増していく、彼の精神状態の描写がスリリングで、衝撃的な事実を明かす結末まで目が離せない。体重を30キロ減量してガリガリの体型で役に挑んだクリスチャン・ベールの熱演も話題となった。 

 
 

 


『セルラー』
製作年/2004年 原案/ラリー・コーエン 監督/デビッド・R・エリス 脚本/クリス・モーガン 出演/キム・ベイシンガー、クリス・エヴァンス、ジェイソン・ステイサム、ジェシカ・ビール

誘拐された女教師の頼みの綱は1台のケータイ!
自宅に侵入した男たちによって、高校教師のジェシカが誘拐される。屋根裏部屋に監禁された彼女は、犯人たちが破壊した電話器のコードを接触させて修復。その電話からたまたま発信できたのが、見ず知らずの青年、ライアンの携帯電話だった。最初は状況がわからず、変な電話だと無視する彼だが、ジェシカの置かれた状況が事実だとわかり、電話のやりとりで救出を試みる。2004年の作品で、タイトルの『セルラー』は、セルラーフォン(携帯電話)のこと。スマートフォンが主流となった現在はあまり使われなくなった言葉。

ジェシカが唯一、連絡がとれるのがライアンということで、2人の会話が命綱になって緊迫感がぐんぐん上昇。ジェシカが理系の教師という設定も、絶妙に使われる。生死ギリギリのジェシカのサバイバルをキム・ベイシンガーが熱演するが、最初は軽いノリのライアン役、クリス・エヴァンスが、正義のヒーローとしての使命感をもつ変貌を鮮やかに体現。この作品の7年後、彼はキャプテン・アメリカを演じると考えると感慨深い。犯人の素性や犯行の動機もショッキングだし、ラストまで一気の勢いのノンストップ感も魅力だ。 

 
 

 


『コラテラル』
製作年/2004年 製作・監督/マイケル・マン 脚本/スチュアート・ビューティ 出演/トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、マーク・ラファロ、ジェイダ・ピンケット=スミス

LAの夜景に魅了される!
街を流すタクシー運転手マックスは、ビンセントという謎めいた客の依頼で、多額の報酬と引き換えに一夜の貸切運転を引き受ける。ところが、ビンセントの正体は殺し屋で、一夜に5人を始末する仕事を遂行しようとしていた。殺人の共犯となりかねない危険な状況下で、マックスは反抗を試みるが、百戦錬磨のビンセントにかなうはずもない。やがて最後の標的の元に向かうことになったマックスは、ある決意を固める……。

新作ドラマ『TOKYO VICE』も話題の鬼才マイケル・マンが、トム・クルーズとジェイミー・フォックスを主演に迎えて生み出したハードボイルド。ほぼ全編が夜のLAを舞台にしており、夜景の鮮烈さが、とにかく映える。マン監督は2004年当時としては珍しい、解像度の高いデジタルビデオを導入して、フィルムではとらえきれない夜の美しさを映像に収めた。ちなみにマン監督は『ヒート』でもLAの街を描いている。 

 
 

 


『テイキング・ライブス』
製作年/2004年 原作/マイケル・パイ 監督/D・J・カルーソ 脚本/ジョン・ボーケンキャンプ 出演/アンジェリーナ・ジョリー、イーサン・ホーク、キーファー・サザーランド

被害者になりすます猟奇殺人犯をアンジーが追う!
1983年のカナダで、10代の少年が家出。少年はその足で自分に似た背格好の少年を殺害し、身分証を奪って去っていく。19年後、ある工事現場で白骨死体が発見されたのを皮切りに、猟奇的な連続殺人事件が発生。捜査に協力するFBI捜査官のイリアナ(アンジェリーナ・ジョリー)はプロファイリング術を駆使し、犯人が殺人を繰り返しては、そのつど被害者になりすましていることを突き止めるが……。

長年にわたってなりすましを繰り返してきた猟奇殺人犯と、犯人を追うFBI捜査官の攻防がミステリアスに展開。「これほどまでに巧妙で残忍な犯人はいったい何者なのか?」にスポットが当たっていく。犯人がサイコパスのためなりすましの心情はなかなか理解しがたいが、変わり種サスペンスとして楽しめる。 

 
 

 
ミュンヘン

『ミュンヘン』
製作年/2005年 監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ

終わりなき憎しみの連鎖を描く!
今年『フェイブルマンズ』で高評価を集めたスピルバーグ と戯曲家トニー・クシュナーが初コラボした一作。時は1972年、ミュンヘン・オリンピックの選手村にアラブ系テロリストが乱入し、11人ものイスラエル人の命が奪われた。これを受けてイスラエル政府は秘密裏に報復を指示。アヴナーをはじめ5人の工作員たちは「祖国と民族のために」と使命感を燃やしターゲットを抹殺していくのだが、彼らも憎しみの連鎖から逃れられなくなり、一人また一人と無残に命を落としていく……。

さすが史実を伝えるときのスピルバーグは一切の妥協と容赦がない。事件の生々しさや工作員が陥る極限の精神状態をむせ返るほどの臨場感で描きつつ、それでいて“home(祖国、家)”という概念を巡って人が優しくも非情にもなれる恐るべき無限地獄を浮かび上がらせていく。世界が9.11テロやイラク戦争を経て”復讐”の終わりのなさを痛感する最中に製作、公開された本作。ラストにそびえるツインタワーが、重く深い意味合いを投げかけている。 

 
 

 
心理サスペンス映画5選!

『あるスキャンダルの覚え書き』
製作年/2006年 監督/リチャード・エアー 脚本/パトリック・マーバー 出演/ジュディ・リンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ

孤独なオールミスの黒い欲望にハラハラ!
定年を間近にした独身の女性教師バーバラは堅物ゆえ、同僚や教え子にも疎まれていた。そんなある日、家庭を持つ美人の美術教師シーバが教え子と関係を持っていることを知る。彼女に友情以上のものを感じていたバーバラはシーバに近づき、黙っている代わりに教え子との関係を止めるよう説き伏せる。だが、ことはこれでは終わらず、孤独をこじらせたバーバラはシーバを自分のものにしようと画策し……。

英国ブッカー賞の候補になった名著を、アカデミー賞に輝く2大女優の共演で映画化。シーバ役のケイト・ブランシェットは誰からも愛されているキャラクターを妙演。しかし、衝撃的なのはバーバラ役のジュディ・デンチだろう。飼い猫だけが友だちのオールドミスの孤独と、心の底から沸き起こる欲望が黒く染まっていくさまを体現。後に明かされる意外な事実とともに、その変容には大いにハラハラさせられる。 

 
 

 
心理サスペンス映画5選!

『ゾディアック』
製作年/2007年 原作/ロバート・グレイスミス 監督/デヴィッド・フィンチャー 脚本/ジェームズ・バンダービルト 出演/ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.

“容疑者と地下室で二人きり”という恐怖!
1969年の米サンフランシスコで、残虐な殺人事件が続発。現地の新聞社に送られてきた声明文により、正体不明の犯人は“ゾディアック”と呼ばれ、恐れられるようになる。刑事や記者が事件の調査に当たり、容疑者も浮かび上がるが、解決には至らなかった。一方、新聞社の風刺画家グレイスミスは事件に興味を抱き、独自の調査を熱心に続けた結果、ある怪しい人物に行き当たる。

ゾディアック事件として知られる実際に起こった未解決連続殺人事件の謎に、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・ファンチャー監督が肉迫。記者や刑事ら、事件に憑かれていくことで疲労を募らせる人々の心理に焦点を絞る。一方で、グレイスミスが容疑者らしき人物と地下室でふたりきりになる場面など、緊張感にあふれた見せ場も。ジェイク・ギレンホールやロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロら演技派俳優たちの競演も見どころだ。 

 
 

 


『アメリカン・ギャングスター』
製作年/2007年 原作/マーク・ジェイコブソン 製作・監督/リドリー・スコット 脚本/スティーヴン・ザイリアン 出演/デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッティング・Jr.

70年代ニューヨークの裏社会が堪能できる!
ギャングの運転手をしていたフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)は、やがて麻薬ビジネスの道へ。大胆かつクレバーなやり方で、一大帝国を築き上げていく。一方、汚職が蔓延する警察組織でもがく刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)は、麻薬取締局の一員となり、フランク逮捕を目指すことになるが……。1970年代初頭のニューヨーク、ハーレムに君臨した伝説のギャングと、彼を追う刑事の攻防が展開。名匠リドリー・スコットが監督を務め、ニューヨークでのロケも実施している。本編には、自由の女神やエンパイア・ステート・ビルなども象徴的に登場。危険な香り漂う70年代ニューヨークの裏社会を、存分に堪能することができる。 

 
 

 


『ブラック・スワン』
製作年/2010年 原案・脚本/アンドレス・ハインツ 監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、ウィノナ・ライダー

ヒロインが闇に落ちる姿に衝撃を受ける!
真相がわからずハラハラさせるサスペンス。そして、背筋も凍るようなシーンが登場するスリラー。両方の要素をハイレベルで合体した作品は少ないが、『ブラック・スワン』はそんな貴重な一本だ。NYの一流バレエ団に所属するニナは、次回公演『白鳥の湖』の主役候補に上がっていた。美しく純粋な白鳥と、官能的に相手を誘惑する黒鳥を一人で演じ分けるという難役だが、演出家はニナの隠れた才能に気づいて抜擢。しかしリハーサルがはじまり、役に没頭しようとするニナは不可解な現象に見舞われるように……。

主役を踊るプレッシャー、代役に選ばれたライバルのダンサーや演出家との悩ましい関係などから、ニナは幻覚や妄想に襲われる。それが一瞬の映像で表現されたり、かなりダークな描写だったりと、さまざまに駆使されるので、多様な恐怖を味わう感覚。なかでもニナの肉体が白鳥と一体化するビジュアルは生々しくて衝撃的! 現実と非現実がひとつになるクライマックスは、本作でアカデミー賞主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマンの狂気ともいえる熱演に圧倒されるはず。いま何かと話題のセクハラ、パワハラ問題も取り入れており、その部分もスリリング。 

 
 

 


『127時間』
製作年/2010年 製作・監督/ダニー・ボイル 出演/ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ

岩に挟まり、絶体絶命!
なんとか肉体を動かせれば、生き残る術を見つけられるかもしれない。しかし、まったく動けない状況では、助けを呼ぶことすらできない。閉所での生死ギリギリの恐怖を体感させるのが、この『127時間』だ。ユタ州でキャニオング(渓谷でトレッキングやクライミング、水泳などを楽しむこと)の最中、滑落によって岩の間の小さな隙間で動けなくなってしまったアーロン。大声で叫んでも、周囲には誰にもいない。わずかな水と食料で耐えながら、彼はビデオカメラで自分を記録しはじめる。実話の映画化で、タイトルは彼が生還するまでの時間を示している。

さまざまなサバイバル映画があるが、本作ほどの“究極の決断”は珍しい。動けない原因は、岩に挟まった右腕。なんとしても生きて脱出したいアーロンは、持っていた小型ナイフで挟まった部分を切断しようと決意する! もちろんそんなに簡単に腕を切断できるわけはなく、想像を絶する過酷な痛みが待ち受け、映画を観ているこちらも気を失いそうな感覚に! 

 
 

 
何度も観たくなる傑作サスペンス映画5選!

『ルート・アイリッシュ』

製作年/2010年 監督/ケン・ローチ 出演:マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ

知られざる”戦場の真実”が胸に突き刺さる!
バグダッド中枢部から空港へと延びる道を”ルート・アイリッシュ”と呼ぶ。この世界で最も危険な場所で、民間軍事会社スタッフの親友はなぜ命を落としたのか? 自らもかつて同じ仕事を担っていた主人公が、人脈を伝って、産業の闇を暴き出そうとするーーー。ケン・ローチ作品といえば英国内の労働者階級、貧困、社会問題などに焦点を当てた作風で知られるが、本作ではリヴァプールを舞台にしながら当地とイラク戦争とを一直線につなぐ優れた社会派サスペンスに仕上がった。

核となるのは民間軍事会社の存在だ。正規の軍隊とは異なる同社のリクルートによって労働者階級の英国人たちが戦地に派遣され、そこで大きなリスクに晒され、トラウマを抱え、時には亡骸となって無言の帰国を遂げる。しかも最大の皮肉は、こういった働きが戦争を抑制するどころか、軍事産業をさらに根強く発展させ続けるということだ。ドラマとしての緊迫感を高めつつも、こうした渾身の告発が胸に突き刺さる一作である。 

 
 

 
裏切りのサーカス

『裏切りのサーカス』
製作年/2011年 監督/トーマス・アルフレッドソン 出演/ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース

凄腕諜報員たちの頭脳戦にシビれる!
英国情報部の幹部メンバーの中に「もぐら(二重スパイ)」がいる。東西冷戦下でその人物は、英国のために身を捧げているように見せかけながら、ソ連側に情報を漏らしているというのだ。ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン……秘密裏にそう名付けられた面々をターゲットに、いま初老スパイ、ジョージ・スマイリー指揮下の炙り出し作戦が幕を開ける。

いやはや、これは数あるスパイ映画の中でも最高級の味わい。銃撃戦や格闘などが全く起こらない中で、一筋縄ではいかない諜報員たちの血の涙もない頭脳戦が繰り広げられ、その向こう側にはいつもうっすら、自分たちを写す鏡のごとく組織化されたKGBの気配が見え隠れする。70年代BBCドラマでは『スター・ウォーズ』オビ=ワン役、アレック・ギネスが名演を見せたが、これとはやや印象を異にする新たなゲイリー・オールドマンの存在感がまた絶品。わずかな仕草、声のトーン、眉や広角の動きにすら気が抜けない。ちなみにクリスマス・パーティ場面で原作者ジョン・ル・カレもちらりと映るので、お見逃しなきよう。 

 
 

 


『グランドピアノ 〜狙われた黒鍵〜』
製作年/2013年 監督/エウヘニオ・ミラ 脚本/デイミアン・チャゼル 出演/イライジャ・ウッド、ジョン・キューザック、ケリー・ビシュ

1音でも間違えたら即死亡!
あるトラウマを抱え、演奏から遠ざかっていた天才ピアニストのトムが5年ぶりに表舞台へ復帰。亡き恩師の追悼コンサートで、恩師とトム以外は弾きこなすことができないという難曲の演奏に挑む。だが、その譜面には「1音でも間違えたら、お前を殺す」という脅迫が記され、会場では謎のスナイパーの銃口がトムに向けられていた……。

イライジャ・ウッドが絶体絶命に陥った天才ピアニストを、彼を翻弄するスナイパーをジョン・キューザックが演じるサスペンススリラー。迫力の演奏シーンを味わいながら、最高級のグランドピアノの前で命懸けの演奏をすることになるピアニストの運命にハラハラさせられる。
 

  

 
誰よりも狙われた男

『誰よりも狙われた男』
製作年/2014年 監督/アントン・コービン 出演/フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス

複雑化した諜報戦の内幕を描く!
ジョン・ル・カレ原作による激渋なスパイ映画。かつて9.11テロの実行犯らが拠点にしていたとも言われるハンブルグを舞台に、諜報組織内のライバル同士やCIAらが繰り広げる”新時代の勢力争い”をジリジリと焼け焦げるような筆致で描く。起点となるのは、この地にふらりと流れ着いたイスラム系チェチェン人の若者。どうやら彼は莫大な遺産を相続しているらしく、彼を泳がせて資金の流れを辿れば隠れたテロ計画を炙り出せるかも……そう画策するベテラン諜報員バッハマンだったが、事態は思いもよらない力学によって内側からことごとく崩れ落ちていく。

名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最晩年作品としても名高く、タバコをくゆらせ、相手を出し抜き、焦燥に駆られ、笑顔を浮かべつつ刃のような言葉を突きつける姿が、まさにリアルなスパイとしての凄みを漂わせる。悪者は一人も登場しない。誰もがより良い世界を望んでいる。なのに周囲の誰一人として信用できず孤独は増すばかり。暗闇の中、おぼろげな出口を求めてさまよう、玄人好みの一作である。 

 
 

 
マリアンヌ

『マリアンヌ』
製作年/2016年 監督:ロバート・ゼメキス 出演/ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール

諜報員同士の成りすまし夫婦がむかえる結末とは!?
その”出逢い”は、スリリングで情熱的だった。第二次大戦下のカサブランカで二人は諜報員として出会い、仲睦まじい夫婦に成り済ましたまま、現地のドイツ大使の暗殺に打って出る。初めてのミッションはこれ以上ないほど大成功。やがて彼らは猛烈に愛し合い、ロンドンで新婚生活を始め、やがて子宝に恵まれるなど未来は輝かしいものに見えた。しかし……。

序盤は、名作『カサブランカ』(42)にも似た空気感を織り交ぜながら男女の駆け引きを描き、かと思えば後半、事態は予想を遥かに超えた心理戦の様相を呈しはじめる。主演のブラピはかつてアンジェリーナ・ジョリーと『Mr.&Mrs.スミス』(05)に主演したが、本作に少なからず重なり合うテーマとエッセンスを感じ取る人もきっと多いはず。ゼメキス作品ならではの特殊効果も健在で、砂嵐が吹き荒れる中、クルマの座席で愛し合う二人を映すカメラが、窓ガラスをすり抜けて遠ざかっていく場面など、クラシカル&マジカルな映像そのものがまるで一人のスパイの如く介在しているのが印象的。 

 
 

 
心理サスペンス映画5選!

『ネオン・デーモン』
製作年/2016年 原案・監督・脚本/ニコラス・ウィンディング・レフン 出演/エル・ファニング、キアヌ・リーヴス、カール・グルスマン

嫉妬と妬みがジワジワとやってくる!
モデルになる夢を追い、ロサンゼルスにやってきた少女ジェシー。モーテル生活をおくりながらモデル事務所との契約にこぎつけ、敏腕カメラマンに見出されてチャンスをつかんだ彼女は。事務所の先輩である売れっ子モデルたちを差し置いて、ファッションショーのトリに抜擢される。華々しい成功はジェシーに自身の美ぼうを自覚させるに至った。だが、一方ではそんな彼女を妬んだ者たちの恐ろしい策略が……。

『ドライヴ』の鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンがファッション業界の狂気に切り込んだ衝撃作。ヒロインが抱く成功への渇望や、見知らぬ地での不安、それらが自信や傲慢へと変わるさまを見据える。一方では、嫉妬という他者の激しい感情があり、それらが絡み合って突入するクライマックスは弱肉強食の冷酷な世界を象徴するかのようで、ただただ壮絶。キアヌ・リーブスが、何を考えているかわからない不気味なキャラで出演している点にも注目。 

 
 

 


『ガール・オン・ザ・トレイン』
製作年/2016年 原作/ポーラ・ホーキンズ 監督/テイト・テイラー 脚本/エリン・クレシダ・ウィルソン 出演/エミリー・ブラント、レベッカ・ファーガソン、ヘイリー・ベネット

記憶を無くしたヒロインが知る真相とは?
主人公が男性か女性かで、サスペンスは大きく印象が変わる。そんな事実を改めて教えてくれるのが本作。愛する夫と離婚し、その悲しみから立ち直れないレイチェルは、アルコールを断ち切れない日常を送っていた。そんな彼女の日課は、通勤電車から理想の夫婦が暮らす一軒家を眺めること。その近くには、レイチェルがかつて夫と生活していた家もあり、元夫は新たな妻を迎えていた。ある日、彼女は理想の夫婦の妻が不倫しているのを目撃してしまう。思わずその家へ向かうレイチェルだが、途中で記憶をなくし、気づくと自室で血まみれになっていた。

不倫していたと思われる妻の失踪事件に、レイチェルがどんな関係があるのか? 時系列がシャッフルされ、アルコールによる記憶の不確かさもカギとなって、ストーリーは二転三転。しかしラストはすべてが回収されて、驚きの事実が明らかになる。『プラダを着た悪魔』や『クワイエット・プレイス』などのエミリー・ブラントが、あえて血色の悪いメイクで挑み、アルコール依存症のレイチェルをリアルに表現。他人の家を覗きたいという人間の本能を刺激しつつ、「思わぬ瞬間を目撃して大変なことになる」というサスペンスやミステリーの醍醐味を満喫させる一作。 

 
 




『ストレイ・ドッグ』
製作年/2018年 製作・脚本/フィル・ヘイ 監督/カリン・クサマ 出演/ニコール・キッドマン、トビー・ケベル、タチアナ・マズラニー

ニコール・キッドマンが凄みのある演技を披露!
17年前の潜入捜査の失敗で心に深い傷を負ってFBIを辞職したエリン。LA市警の刑事に転身した彼女だったが、酒におぼれ、愛娘にも避けられていた。そんなある日、殺人事件が起こり、17年前に取り逃がした強盗一味のリーダー、サイラスが再び動き回っていることを知った彼女は、その行方を追って必死に駆け回る。エリンには、何が何でもサイラスを倒さなければならない理由があった……。

“ストレイ・ドッグ”とは“野良犬”のことだが、そんなタイトルにヒロインの境遇を重ね合わせたハードボイルド・サスペンス。人生の意味を見失い、ボロボロになりながら、過去にケリをつけようとするヒロイン。現在の捜査と、17年前の事件の顛末を平行して描いたミステリアスな構成は、観る者の興味を引くに十分だ。一方で目をう奪われるのは、主演を務めたニコール・キッドマンの熱演。シワの深いメイクで、生きることに疲れ果てた女性像を作り出し、凄みを見せつける! 

 
 

 


『トレイン・ミッション』
製作年/2018年 原案・脚本/バイロン・ウィリンガー、フィリップ・デ・ブラシ 監督/ジャウム・コレット=セラ 出演/リーアム・ニーソン、ベラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、ジョナサン・バンクス

ニューヨークの電車内で起こるタイムリミットサスペンス!
リストラされたばかりの保険セールスマン、マイケル(リーアム・ニーソン)はどん底気分のまま、10年間通勤に利用してきた電車で帰路に。そんな中、見知らぬ女性から「電車が終点に到着するまでに、乗客から“ある人物”を見つけ出せ」との指示を受ける。家族を人質に取られたマイケルは、困難なミッションに挑まざるを得なくなるが……。舞台となる電車はニューヨーク中心部と郊外を結ぶラインで、マイケルが電車に乗りこむグランドセントラル駅から終点のコールドスプリング駅まで約1時間半。ハドソン川を望める景色のいい路線で、ちょっとした観光気分にも。各停車駅のおおよその位置関係を把握しておけば、タイムリミットサスペンスのスリルを一層味わえる。 

 
 

 


『21ブリッジ』
製作年/2019年 原案・脚本/アダム・マービス 製作/アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ 監督/ブライアン・カーク 出演/チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、ステファン・ジェームズ、J・K・シモンズ

ニューヨークの橋が物語の鍵に!
マンハッタンで強盗事件が発生し、銃撃戦の末に警察官8人が殺害される。警察官の父を殺された過去を持つ刑事デイビス(チャドウィック・ボーズマン)はマンハッタン島を全面封鎖し、犯人の行方を追うことに。しかし、事件の真相に近づいていく中、思わぬ事実が浮かび上がり……。逃亡犯を捕まえるため、マンハッタン島にかかる21の橋をすべて封鎖する作戦がユニーク。マンハッタンとブルックリンを結ぶブルックリン・ブリッジをはじめ、イーストリバー下流に架かるマンハッタン・ブリッジ、クイーンズとブロンクスを結ぶヘルゲート・ブリッジ、1日の交通量が世界一多いジョージ・ワシントン・ブリッジなど、ニューヨークのスポットの中でも橋に特化した展開が面白い。 

 
 

 


『プロミシング・ヤング・ウーマン』
製作年/2020年 製作/マーゴット・ロビー 製作・監督・脚本/エメラルド・フェネル 出演/キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー

世の病巣をあぶり出す傑作!
主人公キャシーは医大で優秀な成績を収めていたものの、ある事件が原因となって中退し、カフェで店員をしている。ある事件とは、彼女の親友で、主席の成績を収めていた同級生がパーティのさなかで酔ったあげく、男子学生にレイプされたこと。カフェにやってきた当時の男子学生と偶然、再会したキャシーは彼との恋愛関係を育む一方で、レイプの主犯者の情報を集め、傷ついて世を去った親友の復讐に乗り出していく……。

ひとりの女性の復讐が、男性優位社会への抵抗へとつながっていく社会派リベンジムービー。成績優秀な女性に対する男性のやっかみや、それを解消するためのレイプ、それを隠ぺいするための権力、結局は女性にバカでいてほしい男権……といった社会構造に切り込み、世の病巣をジワジワとあぶり出す。現実を鋭く見据えたまなざしや、それを娯楽映画の枠に落とし込んだつくりが評価され、米アカデミー賞で5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。 

 
 

 
何度も観たくなる傑作サスペンス映画5選!

『ザ・メニュー』
製作年/2022年 監督/マーク・マイロッド 出演/レイフ・ファインズ、アーニャ・テイラー=ジョイ

これは新感覚!予測不能のダークで豊潤な味わい
美食家のタイラーと同伴者のマーゴは、他のゲストたちと共に専用船に乗って高級レストランへ到着する。なかなか予約の取れないこの店はシェフ、ジュリアン・スロウィックのこだわりのすべてを表現した、まるで要塞のような場所。提供されるディナーは一品一品にストーリーがあり、シェフの理念とこだわりが詰まったものばかり。さすが伝説のシェフ……と誰もが感心する中、徐々にその内容は異様なものへと転じ、ついには脱出不可能の恐怖のメニューへと変わりゆく。

こんな常識破りなサスペンス・ホラー見たことない! そもそも脚本家が新婚旅行の中でノルウェーの孤島レストランを訪れたことが着想のきっかけらしいが、本作の根底にあるのは”与える者”としての情熱や理念を粉砕された者の怒りや哀しみであり、金や権力さえあれば何事もまかり通ると考えている人々や消費社会への復讐劇とも言えるのかも。いやいや、まずは小難しいこと抜きにしてご来店を。あなたの食の概念が覆ること請け合いだ。 

 
 

 
シー・セッド

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
製作年/2022年 製作総指揮/ブラッド・ピット 原作/ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー 監督/マリア・シュラーダー 脚本/レベッカ・レンキェビチ 出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、アシュレイ・ジャッド 

唖然&呆然の連続!
2017年、新聞の大手、ニューヨーク・タイムズに衝撃のスクープが掲載された。ハーヴェイ・ワインスタインが性犯罪で訴えられるという記事だ。『パルプ・フィクション』や『恋におちたシェイクスピア』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどアカデミー賞にも輝く名作を多数手がけたプロデューサーで、ハリウッドの大物とされてきたワインスタイン。

自分の作品に出すからと女優たちにセクハラをはたらき、現場の女性スタッフにも信じ難い要求をし続けていた彼について、ようやく被害者たちが勇気ある告発に踏み出す。タイムズの2人の女性記者が、いかに証言者たちの背中を後押ししたか。そのプロセスを誠実に描きつつ、徐々に暴露されるワインスタインの秘密に唖然&呆然の連続となってしまう……。
 

  

 


『別れる決心』
製作年/2022年 監督・脚本/パク・チャヌク 出演/パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ 

主人公たちの運命が劇的!
岩山から男性が転落し、死亡する事件が発生。現場に駆けつけた刑事のヘジュンは、被害者の妻ソレにも接触するが、彼女が妙に冷静な態度だったことを怪しむ。しかしソレの行動を監視し、尋問を繰り返すうちに、2人の距離はどんどん縮まっていき……。

刑事と容疑者という本来なら警戒し合う関係が、男と女の危険な愛へと変わる展開に、ヘジュンと妻のドラマ、中国から韓国に来たソレの過去なども交錯し、予想外の方向へ突き進む。ヘジュンとソレの視線がやたらと艶めかしく絡み合い、それぞれの妄想も盛り込まれたりと、全編とにかく妖しく心をかき乱す一作。
 

  

 

search/サーチ

『Search #サーチ2』
製作年/2023年 原案/セブ・オハニアン、アニーシュ・チャガンティ 監督・脚本/ウィル・メリック、ニック・ジョンソン 出演/ストーム・リード、ヨアキム・デ・アルメイダ、ケン・レオン、エイミー・ランデッカー

思わぬエモーショナルな展開に!
前作では高校生の娘をもつ父親がパソコンと格闘したが、今回はデジタル世代が物語を進めるので、そのスピード感に圧倒される。LAの高校生ジューンが、南米コロンビアで消息を絶った母親を探すストーリー。新しい恋人と旅行に出た母は、どうやら何者かに連れ去られたらしい。イチ早く現地の協力者を見つけたジューンだが、警察も絡んで事態は急変していく。

何気ない瞬間に、事件の重要なヒントが現れたりするので、映画を観ているわれわれは目が離せないのだが、逆に何かを観逃したとしても、それは作り手側の予想の範囲内。サスペンス感はキープされる。ノンストップで突っ走った先には、“その手もあったか!”という裏技や、思わぬエモーショナルな展開も待ち受け、パソコン上であることを忘れて最後まで興奮が止まらない!
 

  

 


『終わらない週末』
製作年/2023年 原作/ルマーン・アラム 製作・監督・脚本/サム・エスメイル 出演/ジュリア・ロバーツ、イーサン・ホーク、マハーシャラ・アリ、ケヴィン・ベーコン 配信/ネットフリックス

少しずつ奇妙な出来事が起こりはじめる!
同名の小説を映画化した本作。原作は2020年秋に発刊され、世界全体を脅かしていたコロナ禍とのシンクロも話題になった。ニューヨークのブルックリンに暮らす4人家族が、週末のバカンスということで郊外の海沿いの町へ向かう。レンタルしたのは豪華な一軒家。ところがその夜、家のオーナーだという親子が現れ、中へ入れてほしいと懇願してくる。いったい何が起こったのか? そもそも彼らは本当にこの家の所有者なのか? こんな基本設定だけでも、どこかゾクゾクする予感が漂う本作。

一家が借りたのは、庭に広いプールも備えた、ニューヨーク郊外とは思えない豪邸。週末のレンタルハウスは、日本でもポピュラーになってきているが、やはりアメリカはスケールが違う……などと、主人公家族の目線で休日気分の日常を伝えながら、やがて少しずつ奇妙な出来事が起こりはじめる。

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文=斉藤博昭、渡邉ひかる、相馬学、米原とおる、牛津厚信 text:Hiroaki Saito、Hikaru Watanabe、Manabu Souma、Toru Yonehara,
Ushizu Atsunobu
photo by AFLO
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柔道家・村尾三四郎が〈エンポリオ アルマーニ〉の新作を着る!
無限の可能性を秘めた挑戦者のスピリット

東京五輪で逃した代表の座をパリ五輪で掴み取り、その名を世界に知らしめた柔道家の村尾三四郎。幼少期から“本物”の強さを追い求めてきた“令和の三四郎”は、すでに4年後のロス五輪で頂点に立つ自分の姿を思い描き、自らの無限の可能性を探求する険しい…

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大人のライフスタイルにぴったりなのは〈エルケクス〉!“軽くて暖かい”が冬アウターの条件!
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2024.11.01

大人のライフスタイルにぴったりなのは〈エルケクス〉!
“軽くて暖かい”が冬アウターの条件!

ひと昔前とは違って、近年は寒暖の予想が難しい。となると、今期はどんなアウターを狙うべきか迷ってしまう。ならば、気温やシーンに合わせて3タイプのアウターを揃えておくのがいい。おすすめしたいのは、ベーシックで着まわしやすい〈エルケクス〉。軽く…

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個性派を語るなら〈ハリー・ウィンストン〉プロジェクトZシリーズ!攻め顔に唸る斬新時計を身にまとう!
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2024.10.24

個性派を語るなら〈ハリー・ウィンストン〉プロジェクトZシリーズ!
攻め顔に唸る斬新時計を身にまとう!

まずは、それぞれのフェイスを見てほしい。ほぼ年1回のペースで登場するプロジェクトZシリーズが、いかに個性的でアバンギャルドな美しさを持っているかがわかるだろう。一方で、最高峰のダイヤモンドで名を馳せるNYブランドが、これほど攻めたデザイン…

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〈マッカージュ〉なら羽織るだけでサマになる!大人のアウターは欲しいがつまった1着で!
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2024.10.24

〈マッカージュ〉なら羽織るだけでサマになる!
大人のアウターは欲しいがつまった1着で!

これからの季節に必要なのは、サッと羽織るだけでサマになるアウター。さりげない男の色気が漂って、さらに大人らしい上品さも欲しいところ。となると気になるのが、カナダ・モントリオール発の高級アウターブランド〈マッカージュ〉の新作。上質な素材使い…

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ラグジュアリー感が際立つ〈ファルコネーリ〉!大人の休日アウターはリッチで優しい素材がいい!
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2024.10.24

ラグジュアリー感が際立つ〈ファルコネーリ〉!
大人の休日アウターはリッチで優しい素材がいい!

〈ファルコネーリ〉といえば、知る人ぞ知るイタリアン・カシミヤのブランド。イタリアのクラフツマンシップと原産地にもこだわった選りすぐりの高級天然素材との組み合わせが、驚くほどの着心地のよさを生む。今回のジャケットやダウンも、カシミヤやメリノ…

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〈アウール〉の“ネーヴェ”は独特の色褪せ感が魅力!こなれた色落ちニットが休日スタイルの決め手!
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2024.10.24

〈アウール〉の“ネーヴェ”は独特の色褪せ感が魅力!
こなれた色落ちニットが休日スタイルの決め手!

“アフォーダブル・シック(上質を着こなす日常)”をテーマに、デザイン性と快適さを追求したアイテムが豊富な〈アウール〉。大ヒットしたジェットセッターパンツ“マルペンサ”でご存知の方も多いのでは? そんな〈アウール〉では、人気のロングセラーニ…

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シーンを選ばない〈Gステージ〉の1着!冬に頼りになるあったかウールの伸びるセットアップ!
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2024.10.24

シーンを選ばない〈Gステージ〉の1着!
冬に頼りになるあったかウールの伸びるセットアップ!

これからのホリデイシーズンは、なにかとイベントが多い。そんなときに頼りになるのが、黒のテイラードジャケットとパンツ。なかでも注目株は、オンオフ使えるセットアップが評判の〈Gステージ〉。温かみと品格がある素材感ながら快適に着られ、なおかつ表…

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