
ストーリーや映像など、映画は“これまで観たことのない”何かを体験させてくれるもの。その意味で本作はちょっと別次元。多くの人が未体験の“感覚”を届けてくれるからだ。何が新しいかというと……全編が幽霊の目線で描かれているのだ!
4人家族が引っ越し先に選んだのは、それなりに大きな家。快適な新生活がはじまるのだが、10代の娘が何か異変に気づく。クローゼットの中に誰かがいるような気配がしたり、ちょっと部屋を離れている間に、本の置いた位置が変わっていたりするのだ。やがて一家に原因不明の現象が相次ぐ。“引っ越して来た家に何かがいる”というホラー映画にはよくあるパターンの本作なのだが、まだ空き家の室内をカメラがゆっくり移動するオープニングから、得体の知れない感覚に襲われる。やがて、そのカメラの視点が“そこに住み着いた何か”だと認識できると、映画を観るわれわれもその目線になって、ちょっぴり複雑な悩みも抱える4人家族を見守っていく。
最初は些細な違和感だった現象も、ある人物の行動が阻まれたりと、映画が進むにつれ、幽霊の深い思いに感情移入させられるのが、本作の特色。油断した一瞬にショッキングな仕掛けが用意されていたり、予測できない幽霊の行動でスリルも満点だ。幽霊の目的も察せられる終盤、一家が迎える結末と、未体験の展開を味わいつつ、観終わった後は不思議な恍惚感にも襲われる。監督は、長編デビュー作の『セックスと嘘とビデオテープ』でいきなりカンヌ国際映画祭のパルムドールに輝き、『トラフィック』でアカデミー賞監督賞も受賞したスティーヴン・ソダーバーグ。その後も、『オーシャンズ』シリーズ、『マジック・マイク』といった王道エンタメまで手がけてきたように、どんなジャンルでも撮れるベテラン監督にもかかわらず、本作のような新たなチャレンジも軽々とこなすところが、彼のポリシーなのだろう。そして誰が監督したとか関係なく、『プレゼンス 存在』は大胆なシチュエーションで魅せる一作になっている。
『プレゼンス 存在』3月7日公開
監督/スティーヴン・ソダーバーグ 脚本/デヴィッド・コープ 出演/ルーシー・リュー、クリス・サリヴァン、カリーナ・リャン、エディ・メデイ、ウェスト・マルホランド 配給/ロングライド
2024年/アメリカ/上映時間84分
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