デザインのメッカに折衷主義のアートな家!
建築やインテリアなどのクリエイティブ業界エリアといえばウエストハリウッド。レストランやナイトクラブも立ち並ぶ。ここにビバリーヒルズ出身のインテリアデザイナーが住んでいる。プロならではの改装の腕前や室内装飾のコツを拝見しよう。
- SERIES:
- 西海岸リビング&インテリア! vol.22
West Hollywood
カリフォルニア州ロサンゼルス ウエストハリウッド
owner
ライアン・セギアン
インテリアデザイナー
2階の階段ホール。イタリアのピエロ・フォルナセッティの大胆な絵柄のウォールペーパーを用いて、限られたスペースを効果的に活用。鹿の角や絵画を壁に飾り、ギャラリー風の空間に仕上げた。正面には家主のベッドルームが覗く。
小さなギャラリー風の家!
部屋を区切らずにワンフロアで広々とした1階。スケルトンの階段が、モダンな印象を与えている。正面がリビングルーム、左手にキッチン、左手前がダイニングエリアと分かれる。中央の重厚感あるオーク製コーヒーテーブルは特注。「居間は折衷主義を一番表現した、お気に入りの場所」とセギアン。
ライアン・セギアン[Ryan Saghian]
1992年、LAビバリーヒルズで生まれ育つ。
インテリアデザイナー歴16年。〈ライアン・セギアン・インテリア・デザイン〉を経営。
〈ライアン・セギアン・ホーム・コレクション〉の創業者。
建築、インテリア、アート、ファッションのデザインの中心地であり、ライブハウスやナイトクラブ、コメディクラブなどエンターテイメントのスポットが集結するウエストハリウッド。街の中央にはクリエイターに人気のデザインコミュニティ向け多目的施設パシフィックデザインセンターがそびえ立つ。
このセンター近くに暮らすのが、インテリアデザイナーのライアン・セギアン。選んだ理由は「デザイン業界のメッカで、徒歩で楽しめる場所が充実しているから」。1923年築のケープコッド・バンガローの家を2019年に購入。「デザインに終わりはない」という信条のもと、現在に至っても依然改装中。緑色と白の組み合わせだったファサードを淡いトープ色と黒に塗り替えてシックな外観に。お気に入りの3つの屋根付き窓も色を替えて、都会的に変貌させた。
インテリアは折衷主義とマスキュリンがテーマ。黒と白で統一して家の中もスタイリッシュに。コツを聞くと「考えすぎずに直感を大事にして、好きなものに囲まれるようにすること。部屋の雰囲気は光の加減で変わるから、特に重要なアイテムはライト。個性を出したいなら、アートや本、壁の色や柄でアクセントをつける」と即答。あなたにとって家とは? と尋ねると「先取りスタイルの適度な自己表現の場であり、僕自身のサンクチュアリ」。インテリアの技術を顧客の家へ提供するプロの答えが返ってきた。
邸宅データ
●敷地面積:0.1エーカー(約158坪)
●家の面積:2194平方フィート(約62坪)
●家の値段:330万ドル(1ドル149円換算で約4億9170万円)
●部屋数:5部屋(2寝室含む。バスルームは3室)。2階建て
●築年:1923年
●家族構成:1人
裏庭から覗いたリビングルーム。大きなフレンチドアを全開すると外と内が繋がって、開放感たっぷりに。ここも外壁を淡いトープ色、窓枠を黒に塗り替えて内装と色合いを合わせた。
艶やかに輝く〈ヤマハ〉のピアノは、趣味で弾いているそう。ブックスタンドには写真家アニー・リーボヴィッツの写真集を置き、ギャラリーの世界観に。
玄関脇にある〈ソーホー・ホーム〉の収納付きコンソールの上には、モニカ・オードの絵画や小さな置物をディスプレイ。折衷主義を凝縮したコーナー。
木や花で癒される裏庭にはストリングライトを吊り下げ、夜をイルミネーションで彩る工夫を。〈J.アレクサンダー〉の家具を置き、タバコを吸いながらのんびり過ごしている。
①光が美しい寝室
黒と白でコーディネートしたベッドルーム。ベッドは〈ミッチェル・ゴールド〉。モノクロのアクセントウォールと、リチャード・アヴェドンの写真で斬新に。左右対称の家具でシンメトリーの美しさを表現。
②緑豊かなガーデン
木と花であふれる前庭。セギアンが好む、ファサードの3つの屋根付き窓を眺めながら一服できるテーブルと椅子を配置。ここでもタバコを吸って休憩しているそう。
③モダンなキッチン
黒と白でまとめたキッチン。高級ガスレンジは、セギアンがデザインを依頼されたブランド〈ダコア〉。右奥の冷蔵庫も〈ダコア〉。インパクトのある右奥の絵画はダニー・ミニック作。カウンターの左奥に並べられた黒のトースターとポットは〈スメッグ〉。
④温かみのある食卓
窓に囲まれた明るいダイニングエリア。木目調のダイニングテーブルとチェアは〈J.アレクサンダー〉。ピンクの女性の絵はラッセル・ヤング作。左の壁の作品は絵画ではなく、サージ・アトクエ・クロティ作のタペストリー。セギアンが額に収めて、絵画のようにディスプレイ。
⑤折衷主義の居間
インテリアデザイナーらしく、デザイン関連の本や写真集が棚にずらり。たくさんのモノクロの写真を飾って、黒と白でバランスよくまとめるセンスは見事。
⑥独創的な個室
遊び心あふれるパウダールーム。〈スカラマンドレ〉で購入したジャン=ポール・ゴルチエの壁紙が目を引く。個性的な絵柄が狭さを感じさせない空間を作っている。黒と白のマスキュリンな佇まいがここにも。
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雑誌『Safari』3月号 P39~41掲載
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photo : Toshi Sakurai text : Yoko Fujimoto