一体なにがいいのか?
〈レッドウィング〉“アイリッシュセッター”の昔と今!
1990年代ストリートのリバイバルブームの今、再注目されているのが“古きよきアメカジ”。ヴィンテージデニムはもちろん、バッファローチェックやレタードスタジャンといった懐かしのキーワードが並ぶ中、タフなブーツもガゼン注目を浴びている。なかでも王道アメカジの象徴ともいえる〈レッドウィング〉“アイリッシュセッター”の存在はやはり別格。今一度、その魅力はどこにあるのか、再認識しておいたほうがいい。
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ポイント1:アメリカンワークブーツにおける金字塔
ポイント2:作りは頑丈なのに履き心地が軽い
ポイント3:アッパーの色&素材次第で万能に使える
左は1960年の広告、右は1982年の広告。看板モデルである“アイリッシュセッター”は、ハンティングブーツとして生まれた
長らく履いていなかった“アイリッシュセッター”を、久しぶりに箱から出したという人も多いはず。余談だが、長期保管しているとオイルが抜け、いきなり履くとアッパーの革が割れたりする場合があるのでご注意を。さて、日本に〈レッドウィング〉が紹介されたのは、おおよそ1970年代。『Made in USA Catalog』」(1975年刊)にて広く知られることになるのだが、〈レッドウィング〉の歴史はそれよりもずいぶん前に遡る。1905年に働くためのワークブーツを作るメーカーとして、アメリカのミネソタ州にある、その名もレッドウィング・シティで創業した。
創業時の西部開拓時代から、狂騒の時代、そして現在に至るまで、働く男の足元には常に〈レッドウィング〉が
歴史については様々なメディアで紹介されているが、ズバリその魅力とはなんなのかといえば、やはりアメリカ製という点にある。’80年代頃より、数々のアメリカブランドが生産を海外にシフト。そんな中でも、〈レッドウィング〉は一貫して一族経営、そしてアメリカ生産にこだわり続けてきた。アメカジ好きにとって、アメリカ製であることは本懐。ノスタルジーと言われようが、重要なポイントだ。
とはいえ、アメリカ製であればオールOKというわけではない。〈レッドウィング〉が素晴らしいのは、品質の高さを約束するためのアメリカ製という点である。その証が、自社でタンナーを構えているところ。正確には子会社だが、安定した品質の革を確保するために、“S.B.フット”というタンナーを傘下に収めている。アメリカにはアメリカ製を貫き、親子代々仕事を受け継いできた職人を抱える名門ブーツブランドはいくつかある。だが、タンナーまで行き届いた生産体制を敷いているのは稀有。それは品質の安定だけにとどまらず、様々な革質や色みの開発においても寄与している。
ミネソタ州のファクトリーには、親子2代、3代と続いてブーツ作りに従事する職人も多い
日本では、ともすれば〈レッドウィング〉=ファッションブーツブランドという認識を持っている人も多いかもしれない。確かに、〈レッドウィング〉が日本のアメカジスタイルを支えてきた貢献度は高い。今季も、楽ちんスウェットパンツにタフなブーツなんて着こなしが人気を博しているのも事実。しかし、本国アメリカには日本では展開していないリアルな労働者用ブーツがあり、実はそっちのほうが多数だったりする。つまり、今もなおガチンコのワークブーツメーカーってこと。一貫した自国生産、自社生産という尊敬に値する真っ直ぐさが、「結局〈レッドウィング〉履いときゃ、間違いないんじゃない?」なんて言わしめる理由だ。
RED WING
《日本で定番の“アイリッシュセッター”はコレ!》
“875”
Leather:オロ・レガシー
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
これ以上も以下もない絶対的存在!
“875”は、1950年に登場した“854”から紡がられる、名作“アイリッシュセッター”の系譜。’97年に本国で“アイリッシュセッター”の名を新たなブランドラインの名称に変更することが決定され、その名は消滅。しかしながら、今もなお日本のファンからは“アイリッシュセッター”の愛称で呼び続けられている。現在では、スタイルNo.875を直系モデルとし、様々なバリエーションを展開。こちらがその“875”で、現在のモデルは2014年に誕生したオロ・レガシー・レザーを採用している。
初代“854”ではゴツゴツしたブロックパターンのソールだったが、1952年に登場し、現在に続く原型となっている“877”からクッションクレープソールを採用。軽く、衝撃吸収性に優れ、そして静粛性の高いフラットな形状をさらに進化させたのが、このトラクショントレッドソール。
6インチ クラシック・モックと現在のモデル名にあるとおり、トウはモック仕様。いわゆる“拝みモカ”で、高さがあるため指先の動きを妨げないメリットがある。ソールは、耐久性が高く、オールソール交換が可能なオールアラウンド・グッドイヤーウェルト製法が用いられる。
ハンティング用ブーツとあって、シュータンはアッパーと一体化されている。これにより、シュータンのズレを気にすることがなく、また、土埃や水滴が入りにくいといったメリットも得られる。たっぷりとオイルを含んだオロ・レガシー・レザーは、エイジングをより楽しめるレザーとなっている。
“8875”
Leather:オロラセット・ポーテージ
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
やっぱりこの色がしっくりくる!
‘90年代にアメカジにハマっていた人なら、「やっぱりこの色」という人は多いはず。アッパーの色は、もともと上で紹介したモデルのようにオレンジがかったオロラセット・レザーだったが、’90年代に次第に赤みがかった色に。その後、原点回帰ということでアメリカ市場では色を元に戻されるが、日本市場では赤みがかった色が人気だったため、“8875”というモデル名を冠して日本でのみ残されることになった。
Leather:ホーソーン・アビレーン
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
どこかほっこりする顔つき!
表革とは違う、タフな雰囲気が魅力の1足。ベージュカラーのラフアウトレザーを採用した同モデルは、実は日本からの働きかけで誕生したもの。’89年に、日本企画として当時ペコスブーツなどで採用されていた銀面付きの上質な同レザーを“875”に転用。“8173”と命名され市場に投入されると、ファッションとしての魅力の幅がさらに広がったと話題に。以来、現在にも続くロングセラーモデルとなった。
Leather:ブラック・クローム
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
今では大人ブーツの最有力候補に!
東京ストリート、特に藤原ヒロシ氏に憧れていた人にとっては、このブラックこそが最上と考える人も多いかと。ワークにしてストリートな雰囲気が漂うこちらのモデルは、’95年に誕生。“アイリッシュセッター”が日本でブームを起こした真っ只中に登場した、ブラック・クローム・レザーバージョンは、ホワイトソールとのコントラストも相まって、爆発的な人気を獲得。昨今のアメカジ人気再燃で再び注目が集まっている。
Leather:カッパー・ラフ&タフ
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
ヴィンテージな気分を満喫!
いくらアメカジが絶賛リバイバル中とはいえ、真っさらな〈レッドウィング〉を履くのはちょっと気恥ずかしい。そんな人の選択肢となってくれるのが、このモデル。アッパーにはヌバック・レザーの一種である、ラフ&タフ・レザーを採用。銀面をわずかに擦りオイルとワックスで仕上げた同レザーは、その独特なムラ感から、新品の状態ですでに味深い色みを楽しませてくれる。
Leather:スレート・ミュールスキナー
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
こんなモデルが牽引役に!
ワークやストリートの印象が強い“アイリッシュセッター”を、グッと大人な雰囲気に変えてくれたのがコレ。アッパーにはグレーカラーのラフアウトレザー“ストレート・ミュールスキナー”を採用。高い耐久性や耐水性はそのままに、グレーカラーになることで都会的な洗練さと品のよさを演出している。デニムだけでなく、スラックスさえサマになる1足に仕上がっている。
“8847”
Leather:ブラックチェリー・エクスカリバー
4万1690円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
理解できるエイジングレザー!
創業者の名を冠したモデル“ベックマン”でお馴染みのブラックチェリーカラー。この1足では、深みのある同カラーをまとった新しいレザー、ブラックチェリー・エクスカリバーを採用している。見どころは、そのムラ感。これはオイルをたっぷりと含んでいるためで、それにより履きこむほどに絶妙な味のある色みに育ってくれる。美しさと経年変化の楽しみを両立するモデルだ。
Leather:ラセット・タオス(ゴアテックス搭載)
5万490円(レッドウィング/レッドウィング・ジャパン)
進化するベーシックの好例!
時代を問わない歴史的名作による、時代に沿ったアップデイト。防水透湿素材であるゴアテックスを採用することで、見た目には古きよきアメリカ感を存分に楽しませてくれつつ、リアルな実用性を高めることに成功した。アッパーにはラセット・タオスを採用。通気性を備える高性能な防水レザーだが、見た目に無機質にならないようアンティークプリントを施してあるのが嬉しい。
ご覧のとおり、’90年代を知る世代にとっては「アイリッシュセッターって、今こんなに種類があるの?」とビックリした人も少なくないだろう。あの頃買った1足をまだ現役で履き続けている人も多いだろうが、これだけ種類が増えたら新たな1足を買い足ししたくなるはず。“アイリッシュセッター”はもはや時代もトレンドも問わない名作とあって、何足あっても無駄にならない。
〈レッドウィング〉に興味のある人はこちらの動画もどうぞ!
photo : Tomoo Syoju(BOIL) styling : Takumi Tagawa text : Masafumi Yasuoka