保温性はダウン超え!?
知っておくべき“高機能中綿”の価値!
ゴアテックスやソロテックスなど、昨今のファッションアイテムに高機能素材はなくてはならない存在に。そんな高機能素材の中で冬に最も需要が高まるのが、ダウンの保温性に勝るとも劣らない“高機能中綿”。でも、ひと口に高機能中綿といっても種類は様々。それぞれ特性が異なるので、恩恵に預かりたければ是非とも覚えておきたいところだ。
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ポイント1:軽くて薄く、それでいて暖かい
ポイント2:イージーケア
ポイント3:プラスαの機能を備えている
ナイロン糸が登場したのは1930年代のアメリカ。その頃から今まで、化学繊維は止まることなく進化し続けてきた。’70年代に“ゴアテックス”が登場してからは、その進化は加速。いまやファッションにおいて、化学繊維を駆使した高機能素材の存在は欠かせないものとなった。その種類や機能は実に様々だが、今回は保温性に着目したい。
軽くて暖かい天然素材といえば、やはりダウン。ただし、天然素材ゆえに扱いやケアに手間がかかり、また昨今はサスティナブルな観点から使用を控えるブランドも出てきた。そんな流れもあり、高機能中綿への注目は増すばかり。インサレーションといった呼び方をされる高機能中綿にも種類があるが、総じて言えるのがより“薄さと軽さ”を求め、それでいて“高い保温性”を両立していること。また、撥水性や耐久性、保形力、抗カビ性といった、天然のダウンではなかなか得難い機能を有しているのも魅力。メーカーによっては、家庭用洗濯機によって丸洗いできるイージーケアを謳っているものもあり、そうなると日常着として高機能中綿を使ったウエアに興味をそそられるのは当然のことだろう。
いいことだらけの高機能中綿だが、注意したいのは見わけ方。ウエアに付けられている製品表示タグには、通常ポリエステルといった素材表記しかされていない。ポイントは、高機能中綿メーカーのタグが付いているかどうか。これが、高機能中綿を使用している証となる。それを見わけるには、当然高機能中綿メーカーを知る必要がある。その数は多く全部を紹介しきれないが、ひとまずよく使われている“プリマロフト”を中心に、5社を参考として紹介していこう。
“PRIMALOFT(プリマロフト)”
THE NORTH FACE
4万6200円(ザ・ノース・フェイス/ゴールドウイン カスタマー サービスセンター)
アイコン的メーカーといえばココ!
1983年に、アメリカ軍の要請を受けてアルバニー社が開発したのが“プリマロフト”。超微細なマイクロファイバー製で、軽さと保温性に加えて柔軟性や撥水性、通気性や収納性など、ミリタリー由来ならではのマルチな機能を備えている。これを採用する〈ザ・ノース・フェイス〉の1着は、’70年代に発売されたシエラパーカのヘリテージモデル。オリジナルはダウンを採用していたが、これは“プリマロフト ゴールドラックス”。先の性能に加え、リサイクルポリエステルを素材に使用するサスティナブルなスペックになっている。
“THERMOLITE(サーモライト)”
DEUS EX MACHINA
インナーに中綿!
4万9500円(デウス エクス マキナ/ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム)
より薄さと軽さを追求可能に!
“サーモライト”は、コーデュラナイロンでも知られる、アメリカのインビスタ社が開発。特徴は中空ポリエステルを使用していること。文字どおり繊維の中心が空洞になっており、そこに熱を溜めこむことで高い保温性を長い時間得られるという仕組み。空洞ということは軽量性においてもメリットがある。〈デウス エクス マキナ〉のUSアーミーのモンスターパーカに着想を得たコートは、“サーモライト”をデタッチャブルライナーに採用。高い保温力ゆえの薄手仕様が、3シーズン着用やほかのアウターとのレイヤードも可能にしてくれる。
[ハーフテン カンタベリー]
HALFTEN CANTERBURY
7万4800円(ハーフテン カンタベリー/カンタベリー吉祥寺)
表面的じゃなく芯から暖かい!
“エナジーコクーン”は、日本のゴールドウイン社が開発したもので、2021年に発表されたばかりの新進。見どころはリサイクル素材を採用している点。二酸化炭素排出量の削減をはじめ、環境負荷低減素材の製品比率を2030年までに90%以上に引き上げることを目標にする同社らしい高機能中綿だ。特徴は、リサイクル化学繊維を2種類の粒わたに加工し、光電子を繊維に盛りこんだこと。それにより保温性と遠赤外線効果が得られる。今季デビューした〈カンタベリー〉の新レーベルでは、こんなミリタリーコートに採用された。
[グラミチ パフォーマンス]
GRAMICCI PERFORMANCE
3万4800円(グラミチ パフォーマンス/インス)
暖かいと気持ちいいを両立!
“ヴィーヴォ”は、高機能中綿開発で世界をリードする、英国のCLOインサレーション社が開発。保温性と断熱性に優れたコチラには、無数のホールによりアウター内の蒸れを放出するという特徴も。魅力なのは、伸縮性にも優れるという、暖かさに加えて快適性にもこだわっている点。〈グラミチ パフォーマンス〉のクラフトエボNY66フードジャケットでは、高いストレッチ性を有する超軽量&薄手トリプルリップストップ生地との併用で、さらなる快適性を確保。大型ポケットもしかり、ついヘビロテしたくなるアウターに仕上がっている。
[エーグル]
AIGLE
4万2900円(エーグル/エーグルカスタマーサービス)
人にも自然にも優しい高機能中綿!
“ソロナオーラ”を開発したのは、あのデュポン社。高機能素材の元祖と言えるナイロンを開発した会社だ。特徴は、自然に優しい植物性樹脂を主な成分にしているということ。それでいてスペックは高く、ためこんだ熱を長い時間蓄熱してくれる。また、伸縮性や弾力性に優れることから、型崩れを起こしにくいのも見どころ。この〈エーグル〉のオビゴム ジャケットでは、撥水生地と組み合わせてより機能的に。ロックプリントをあしらうことで、ファッション性と機能性が見事に調和した1着に仕上がっている。
今回紹介した5社以外にも、まだまだ高機能中綿メーカーは存在する。それはつまり、冬アウターにおいて、高機能中綿はもはや不可欠な存在になったということ。各メーカーの機能をすべて把握するのは難しいが、たいていの商品説明にはどこのメーカーを採用しているかが記載されているので、購入前によくチェックしたい。
●インス
TEL:0120-900-736
●エーグルカスタマーサービス
TEL:0120-810-378
●カンタベリー吉祥寺
TEL:0422-29-7150
●ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
TEL:0120-307-560
●ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム
TEL:03-3401-5001
photo : Tomoo Syoju(BOIL) styling : Takumi Tagawa text : Masafumi Yasuoka