
スーツ姿で都会を歩く大人も、波を追って世界を旅するサーファーも、本質的にはよく似ているだろう。それは身軽であること。自然体であること。そして、自分らしいスタイルを貫くこと。そんな"自由を知る大人"の美学を、〈ルイ・ヴィトン〉2027年春夏メンズコレクションは新しいラグジュアリーとして提案した。
クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスが今季インスピレーション源に選んだのは、世界中の海を旅するサーフカルチャー。ショー会場には巨大な波を思わせる舞台が現れ、水の音が響き渡るなか、夕暮れのパリに月が昇る幻想的な演出が繰り広げられた。
彼が表現したかったのは、波が誰に対しても平等であるように、海が人と人、そして自然をつなぐ存在であるというメッセージ。国境や文化を超えて共有されるライフスタイルとして、サーフィンをダンディズムと重ね合わせたのである。
そんな世界観を映し出したコレクションでは、ファレルらしいリラックスしたテーラリングに、海辺で過ごした時間を感じさせる素材やディテールを融合。ウェットスーツに着想を得たテクニカル素材は、ルイ・ヴィトンの卓越したサヴォアフェールによって上質なテーラリングへと昇華され、旅と機能性を兼ね備えたワードローブへと姿を変えた。
また、長年着込まれたような風合いや補修跡を思わせる加工、手紡ぎのような質感、貝殻や波を想起させるクラフトワークなど、海辺の時間がそのまま服へ落とし込まれているのも印象的だ。ファレルが得意とするトロンプルイユ(だまし絵)の技法によって、見慣れた素材は思いがけない質感へと変化し、視覚だけでなく触覚でも楽しめる仕掛けが随所に散りばめられている。
一方で、鮮やかなアシッドカラーやチェッカーフラッグ柄など、サーフカルチャーとともにスケートカルチャーへのオマージュも随所に登場。ファレル自身のルーツを感じさせるストリートのエッセンスが、メゾンのクラフツマンシップと自然に溶け合っていた。

ショー演出もまた印象的だった。砂丘のような舞台には未来的なシルバーのキャンピングカーが置かれ、ガラス張りの空間が海とともに暮らすノマドライフを表現。映像にはサーファーのマイキー・フェブラリーとジュリアン・ウィルソンが出演し、波音とともに流れる音楽はファレルが〈ルイ・ヴィトン〉のスタジオで制作した新曲が使用された。
さらに今回のコレクションは、美しい海を未来へつなぐ取り組みにも結び付いている。〈ルイ・ヴィトン〉はサステナビリティプログラム『リジェネレーション 2030』の一環として、環境保全団体コーラル・ガーデナーズを支援。フランス領ポリネシアでは1000株のサンゴを移植し、およそ250平方メートルのサンゴ礁再生活動をサポートする予定だという。
今季ファレルが描いたのは、サーファーのための服ではない。都市にも海にも自然になじみ、旅を楽しみながら人生を軽やかに生きる"現代のダンディ"のワードローブだ。
自由を知る大人ほど、肩の力が抜けていてエレガント。そのことを、〈ルイ・ヴィトン〉は2027年春夏コレクションで改めて教えてくれた。
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