『レイチェルの結婚』
製作年/2008年 製作・監督/ジョナサン・デミ 脚本/ジェニー・ルメット 出演/アン・ハサウェイ、ローズマリー・デウィット、ビル・アーウィン
ホームビデオ調の映像で描く家族のリアル!
姉であるレイチェルの結婚式に出席するため、実家に帰ってきたキム(アン・ハサウェイ)。しかし、過去10年にわたって依存症施設の入退院を繰り返し、トラブルメイカーと見なされてきたキムの帰還により、家族間に溜まっていた数々の問題が露呈しはじめ……。
『羊たちの沈黙』などを手掛けた故ジョナサン・デミの監督作。ホームビデオ調の映像で、家族のドラマをリアルに容赦なく映し出していく。本来なら幸せムードいっぱいになるはずの結婚式で進行する物語は、これでもかというほど痛々しく、決して気分のよいものではないかもしれない。それでも、いや“だからこそ”、家族とは何か? を問いかけてくる。
『ファミリー・ツリー』
製作年/2011年 原作/カウイ・ハート・ヘミングス 製作・監督・脚本/アレクサンダー・ペイン 出演/ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー
日頃の行いを改めたくなる!?
妻と2人の娘とともに、ハワイで何不自由なく暮らしてきた弁護士のマット(ジョージ・クルーニー)。ところが、ある日のボート事故で妻が昏睡状態に。さらには、妻には不倫相手がいて、離婚を考えていたことが発覚する。娘や友人はその事実を以前から知っていて、現実を知らぬは自分ばかり……の状態に陥っていた主人公が、目を見開き、人生を見つめ直すために奮闘。
『サイドウェイ』などのアレクサンダー・ペイン監督が、人生最大の危機を自覚した中年男に寄り添う。当たり前にあるもののようでいて、当たり前に感じてはならないものを、等身大のジョージ・クルーニーが反面教師になって教えてくれる1作。
『リトル・ミス・サンシャイン』
製作年/2006年 監督/ジョナサン・デイトン、バレリー・ファリス 脚本/マイケル・アーント 出演/トニ・コレット、スティーブ・カレル、アラン・アーキン
長旅で家族の絆を取り戻す!
美少女コンテストでの優勝を夢見るオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)は、家族とともに決勝大会の地カリフォルニアへ出発。だが、人生の勝ち組を自負したがる父、無言を貫く兄、自殺未遂を起こしたゲイの伯父、ドラッグを愛好するファンキーな祖父らとの道中はトラブルの連続で……。
アカデミー賞脚本賞にも輝いた、笑って泣けるヒューマンコメディ。それぞれ問題を抱えた家族が、長い旅の時間を通じて再生し、家族の絆を取り戻していく。いわゆる“はみ出し者”として描かれる主人公一家が愛おしく、問題を乗り越えようとする姿も健気。家族が1つになることの意味が、クライマックスで爽快なまでに弾ける。
『イカとクジラ』
製作年/2005年 製作/ウェス・アンダーソン 監督・脚本/ノア・バームバック 出演/ジェフ・ダニエルズ、ローラ・リニー、ジェシー・アイゼンバーグ
不器用一家に訪れる結末とは?
元人気作家の父と現人気作家の母が離婚を決意し、16歳の長男ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と12歳の次男フランク(オーウェン・クライン)は父と母の家を行き来する生活を送ることに。やがてフランクはストレスで奇行に走り、冷静に受け止めていたかに見えたウォルトも問題行動に出はじめるが……。
『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック監督が、自身の少年時代を赤裸々に投影させた自伝的家族ドラマ。80年代のニューヨークを舞台に、両親の離婚に振り回される兄弟の姿をユーモラスに、シビアに綴る。不器用な一家の物語は最後まで不器用だが、切なさとおかしみの先にある光にじんわりさせられる。
『ミナリ』
製作年/2020年 製作総指揮/ブラッド・ピット 監督・脚本/リー・アイザック・チョン 出演/スティーブン・ユアン、ハン・イェリ、アラン・キム、ユン・ヨジョン
新天地で支え合う家族の姿に感動!
農業での成功を目指す韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、家族を連れてアーカンソー州に移住。広さはあるものの荒れた土地とボロボロの住居を前に妻は不安を隠せないが、しっかり者の長女と好奇心旺盛な長男は新天地での日々に期待を膨らませる。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、一家の暮らしはゆっくりと前に進みはじめるが……。
80年代のアメリカ南部で、理不尽な運命に翻弄されながらも逞しく生きる家族の物語。祖母役のユン・ヨジョンが、アカデミー賞助演女優賞を受賞。どんな困難が襲い掛かっても家族と一緒なら乗り越えられるという、ストレートなメッセージに背中を押される。
Photo by AFLO