ヤンキー映画に心揺さぶられるのはなぜだろう。やさぐれた者への共感か、はみ出した者へのねじれた憧れか。とかく危うい若者の物語には、無条件のパワーがある。品川ヒロシ監督が自身の中学時代からの親友を主人公に、ヤンキーたちの青春を描いた『OUT』もそう。同名コミックの実写化でもある本作には、“愛すべき”という言い方がしっくりくる。
そもそも、主人公の井口達也からして愛すべき存在だ。暴走族の一員として盛大に暴れ回り、あげく少年院に入ることになった達也が映画の冒頭で出所。昔の仲間とは距離を置き、小さな焼肉屋の住み込み店員として再出発を誓う。だが、現実はそうそう上手くはいかず、只者ではない空気を放つ彼を、暴走族連中が放っておくはずもない。喧嘩をして問題を起こそうものなら一発アウトの保護観察中でありながら、達也はズブズブと、必然にも似た形で拳の世界に再び足を踏み入れてしまう。
危険信号を察知しながらも近づいてしまったり、妙なところで義理堅かったり。「よせばいいのに」の一言で片付けられそうな達也の迷える姿を、倉悠貴が目力も印象深く熱演。健気な達也の不器用でもどかしい奮闘を、焼肉屋のおじちゃんやおばちゃんと同じ目線で見守りたくなる。かつての『ドロップ』やそれを自らリブートした『WOWOW連続ドラマ ドロップ』もそうだが、品川監督が放つ世界のヤンキーたちには配役の妙もあり、どこか繊細さがある。それは主人公に限らず、本作で達也と友情を結ぶ暴走族の総長・丹沢敦司(醍醐虎汰朗)や副総長・安倍要(水上恒司)も。敦司は冷酷なリーダーだが見た目は少女のように愛らしく、かたや要はむくつけき外見だが内に細やかさを秘めていて、それぞれがきちんと青春映画らしさを背負っている。
とはいえ、もちろんバトルシーンはダイナミックで、それぞれの戦いぶりに血湧き、肉踊らされるほど。華やかさも痛みもあり、長尺ではあるが見ていて飽きることはなく、それも彼らの大事な青春の1ページなのだと感じさせてくれる。
『OUT』11月17日公開
原作/井口達也/みずたまこと『OUT』(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊) 監督・脚本/品川ヒロシ 出演/倉悠貴、醍醐虎汰朗、与田祐希(乃木坂46)、⽔上恒司、與那城奨(JO1)、⼤平祥⽣(JO1)、⾦城碧海(JO1)、小柳心、久遠親、山崎竜太郎、宮澤 佑、長田拓郎、仲野温、じろう(シソンヌ)、大悟(千鳥)、庄司智春(品川庄司)、渡辺満里奈、杉本哲太 配給/KADOKAWA
2023年/日本/上映時間129分
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Ⓒ2023『OUT』製作委員会