1984年に全米公開された『ビバリーヒルズ・コップ』は同年の北米興収でトップの2億3千万ドル超を弾き出す。殺された幼馴染みの弔いを決意したデトロイト市警の刑事、アクセル・フォーリーが、犯人を追って単身ビバリーヒルズに乗り込む。そんな絵に描いたようなアウェイ的状況や、アクセルを演じるエディ・マーフィが劇中で炸裂させるアドリブの面白さが一般映画ファンの気分にマッチして、その後、映画はシリーズ化。マーフィは映画デビュー作『48時間』(1982年)、『大逆転』(1983年)に続くこの単独主演作で、TV番組”サタデーナイトライブ”の人気スタンダップコメディアンから世界規模の映画スターへと羽ばたいて行く。あの頃のエディはキレキレのジョークと歌も歌える気鋭のコメディアンとして破竹の勢いだった。
さて、世界規模の人気をゲットしたのはエディ・マーフィだけじゃない。アクセルが映画の中で着ている地元デトロイトのNFLチーム、デトロイト・ライオンズのスタジアムジャケットは、映画が公開されてから少なくとも30年が経過しても尚、トップセラーであり続ける。胸にはライオンズの名前とヘルメットが、両上部袖には”67”という年号がステッチされ、背中にはフルネームの”デトロイト・ライオンズ”とライオンズのヘルメットが縫い付けられている。袖の素材は最高品質のフリースとフェイクレザーで、襟はリブニット、そして、ビスコースの裏地、内側と外側にそれぞれ2つのポケットが装備された逸品だ。映画の影響でオンラインショップにはレプリカが並び、多くのマニアが購入に走る。
映画を介してここまで売れたスタジャンはほかにないかも知れない。それほど、モデルとしてのエディが魅力的だったのだ。
ほかにも、アクセルはウォッシュアウトのデニム、グレーのスウェットシャツ等、その引き締まったボディにいかにもアウトサイダーコップ的で自由なアイテムを常備服にして、気取った街、ビバリーヒルズに風穴を開けていく。服も加担する痛快さがこの映画の最大の魅力だ。
それから約40年後、撮影時に61歳になったエディ・マーフィは再び当たり役でシリーズに復帰。『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』と題されたシリーズ最新作で、アクセルはお馴染みのスタジャンを着て画面に登場している。胸のワッペンはチーム名&ヘルメットからタイガースのアイコンであるブルーのライオンに変わっているが、下に着ているスウェットもウォッシュアウトジーンは昔のまま。エディは親父が着るアメカジの極意を伝授してくれている。歳とともに着る服まで老いる必要はないという。
『ビバリーヒルズ・コップ』
製作年/1984年 製作/ジェリー・ブラッカイマー 監督/マーティン・ブレスト 脚本/ダニエル・ペトリ・Jr. 出演/エディ・マーフィ、ジャッジ・ラインホルド、ジョン・アシュトン
●noteでも映画情報を配信しています!フォローをよろしくお願いいたします。
https://note.com/safarionline
photo by AFLO