ドライバー (ライアン・ゴズリング)
昼間は自動車修理工&スタントドライバー、夜は犯罪に手を貸す寡黙な”逃し屋”、その名はドライバー。監督、ニコラス・ウィンディング・レフンの名を一躍日本の映画ファンに知らしめ、主役のライアン・ゴズリングがファッショニスタとして一際輝いていた犯罪ドラマ『ドライヴ』(2011年)で、ゴズリングが演じる魅惑のキャラクターだ。孤独なドライバーが恋した女性のために裏社会へと足を踏み入れていく、その物語自体もセクシーだが、ドライバーがまるで戦闘服のように纏うアメカジ・アイテムが何とも魅力的なのだ。
ドライバーが着ているのは主に3種類のレイアード。下から順番に説明すると、まず、素肌には修理中には汗だらけ、オイルだらけになっているヴィンテージのヘンリーネックT(素材は1940年代にアメリカ西海岸で流行った櫛のように解いたコットン素材、コームドコットン)、その上にはダークインディゴのリーバイス・トラッカー・ジャケット(フロントには6つの銅製リベットボタン、両サイドにはウエストのフィット感を調整するための短いボタンタブが)を羽織っている。ジャケットより濃いめのデニムは〈アクネ ストゥディオズ〉(Z世代に人気のスウェーデン発ブランド)のローライズデニム。かなりのフィット感でしゃがむとゴズリングの大臀筋が露わになるサービスショットもアリです。
実は、劇中に登場するミニマムなカジュアルウェアにはライアン・ゴズリング自身のイメージが反映されている。その最たるものが、ドライバーが一番上に着ているスコーピオン・ジャケットだ。これはゴズリングが韓国を旅した時に見つけた土産からインスパイアされたものだとか。
このジャケット、ホワイトとシルバーのサテンツイルの生地に施されたダイヤモンドステッチが独特のキルティング効果をもたらしていて、背中には巨大な黄色いサソリが刺繍されている。さらに、サソリの周りは濃いめの金糸を使ってサソリを浮き立たせる工夫まで施されている。
『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)や『ボヘミアン・ラプソディ』(1918年)で知られる撮影監督のニュートン・トーマス・サイジェルからは、白いジャケットは画面に映えないのでは? と言う疑問符が付いたために、何度も色の調整が繰り返された結果、たどり着いたのがホフホワイトとシルバーのコンビネーションだったという。
劇中、キーになるシーンでは、このスコーピオン・ジャケットが何度も雄叫びを上げる。それはまるで、感情を封印して生きるドライバーの情熱の発露であるかのよう。服がキャラクターのライフスタイルから内面までも表現しているのが、本作『ドライヴ』なのだ。
『ドライヴ』
製作年/2011年 原作/ジェームズ・サリス 監督/ニコラス・ウィンディング・レフン 脚本/ホセイン・アミニ 出演/ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、ロン・パールマン、オスカー・アイザック
photo by AFLO