大どんでん返し……とまでは行かなくとも、当初の印象を裏切られる映画には心地よさが伴うもの。そんな爽快感を求める人には、是非2010年の韓国映画『ハロー!?ゴースト』を見てほしい。
主人公サンマンを演じるチャ・テヒョン
『猟奇的な彼女』などのチャ・テヒョン主演の本作は、不幸続きで孤独な人生を送る青年の物語。生きることに疲れきった彼、サンマンは何度も自殺を図ろうとするが、なぜかそれすらも成功させられないでいる。そんな彼の前に4人のゴーストが出現。取り憑かれてしまったサンマンは彼らを成仏させるため、それぞれの願いを叶えようとしぶしぶ協力することに。
ヘビースモーカーのおじさん、しくしくと泣き続ける女性、エロいおじいさん、元気いっぱいの大食い少年と、現れるゴースト4人がやけに個性的。おどろおどろしさはなく、むしろぬるっと現れて話が平然と展開するため、冒頭から「コメディですよ! 楽しんで!」と言われている気分になる。『猟奇的な彼女』を例に挙げるまでもなくトホホ演技の似合うチャ・テヒョンがゴーストたちの願いを叶えようとするも、その姿が彼にしか見えないため、1人でジタバタしているヘンな人に見えるのも笑いどころ。このシュールなドタバタ感が一番の特徴に思えてくる。
麒麟の川島が自身のラジオ番組でサンドイッチマン伊達から本作を薦められて視聴し号泣したとトーク。今でも口コミで評判が広がっている作品だ。『ハロー!?ゴースト』発売中(1572円/ツイン)
ところが、ゴーストとのドタバタを経てサンマンが孤独を緩やかに脱し、新しい恋の到来すら訪れた頃、物語は意外な方向に。ゴーストたちはなぜサンマンに取り憑いたのか? 彼らはサンマンに何を求めているのか? それらの謎が思わぬ形で明かされていく。そして真実にたどり着いた時、物語を追っていた鑑賞者は設定1つ、台詞1つがすべてクライマックスに向けての伏線だったと気づくことに。ゴーストたちのあんな挙動やサンマンのこんな心のつぶやきを思い返し、涙を流さずにはいられなくなる。
現実的ではないものとの触れ合いを経て、主人公が変化、再生するファンタジーは決して珍しくもないが、この構成と終着点には素直に唸らされるところ。感動を最大限味わいたい場合、できれば前情報なしで見るのがベストだが、となるとコメディに終始する作品に思われがちという……なかなか悩ましい佳作でもある。
『ハロー!?ゴースト』アマゾン・プライムビデオで配信中(2022年11月19日現在)
製作年/2010年 監督・脚本/キム・ヨンタク 出演/チャ・テヒョン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、イ・ムンス
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