映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』は、とことん優しい気持ちになれる珠玉の一作!
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人気俳優が監督、つまり“撮る側”になって才能を発揮する。これまでもクリント・イーストウッド、メル・ギブソン、ベン・アフレックなど多くの成功例があるが、そこに新たに加わったのが、ジェシー・アイゼンバーグ。監督2作目となる『リアル・ペイン〜心の旅〜』は、アカデミー賞でも2部門ノミネートと絶賛を集めている。
『ソーシャル・ネットワーク』で若き日のマーク・ザッカーバーグを演じ、マジシャンたちの犯罪アクション『グランド・イリュージョン』の主役など、演技派スターとしてのキャリアを積んできたジェシー・アイゼンバーグは、もともと舞台の脚本を書くなどクリエイター志向。この『リアル・ペイン』は自身の経験を基にオリジナル脚本を完成させた。NYに暮らす従兄弟同士のデヴィッドとベンジーが、亡き祖母の思い出をたどるため、彼女の故郷であるポーランドへの旅に出る。祖母は第二世界大戦のホロコーストを生き延び、アメリカへ渡ったのだった。現地の史跡ツアーに参加した2人は、思わぬかたちで自分自身と向き合うことに……。こんな風に書くとシリアスなドラマのようだが、作品のムードは軽快で心地よい。タイトルにある“ペイン=痛み”を受け止めつつ、とことん優しい気持ちになれる珠玉の一作だ。
大きなポイントになのは、デヴィッドとベンジーの正反対の性格。妻子もいて広告の仕事も順調なデヴィッドに対し、無職なうえ、私生活で苦悩を抱えるベンジー。ただしベンジーは遠慮なく周囲の人々の懐に入るお調子者の面もある。一方でデヴィッドは何事にもきっちりしすぎて、本心を隠すタイプ。旅先でのいくつものエピソードと、絶妙なセリフのやりとりで、そんな2人のどちらかに激しく感情移入してしまうのが、本作のマジック。特にジェシー・アイゼンバーグが自ら演じたデヴィッドのコンプレックスは切なすぎて、深い部分で共鳴するはず。そして難しい役どころであるベンジーを軽妙かつ愛おしく表現したキーラン・カルキンは、アカデミー賞の助演男優賞でも大本命。“マコーレー・カルキンの弟”という形容詞は完全に過去のものになったと実感する。ショパンの名曲にいろどられた2人の旅の終点。そのラストシーンの余韻はいつまでも心に残ることだろう。
『リアル・ペイン〜心の旅〜』1月31日公開
製作・監督・脚本・出演/ジェシー・アイゼンバーグ 出演/キーラン・カルキン、ウィル・シャープ、ジェニファー・グレイ 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2024年/アメリカ/上映時間90分
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Photo by AFLO