好調〈ボルボ〉が取り組んでいること。
2021年上半期に、94年の歴史の中で過去最高の半期業績を記録したボルボ・カーズ社。7月発表時で、過去12カ月間の世界の販売台数は約77万5000台。さらに電動化された“リチャージ”ラインナップは総販売台数の25%に達したという。もちろんその勢いは日本でも同様。なぜ〈ボルボ〉は好調なのか。ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長マーティン・パーソン氏にその要因について聞いてみた。
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最近、街で見る〈ボルボ〉が増えたと実感している人も多いだろう。事実、実際に売れている。まずは単刀直入に業績好調の理由について尋ねてみた。
「第一に、〈ボルボ〉は非常に強力で魅力的な製品ラインナップを持っています。現在の〈ボルボ〉は、より表情豊かなエクステリアデザイン、洗練されたインテリア、そしてエキサイティングなドライビングパフォーマンスを備えています。もちろん安全技術でもリードし続けています。第二に〈ボルボ〉のモデルは、より環境に優しいクルマを求めるお客様の需要の高まりにも合致しています。昨年、〈ボルボ〉はモデルラインナップ全体を電動化しました。現在、私たちはマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドを提供しています。そして間もなく、最初の完全な電気自動車である“C40リチャージ”が加わります。さらに半導体不足に関連する供給の課題をよい形で克服することができたことも挙げられるでしょう。これは、スウェーデンの本社が日本を重要視しているということです」
この5年間で〈ボルボ〉はクルマの電動化を急速に進め、日本市場においては、2025年に35%、2030年には100%をBEV(完全な電気自動車)にするという目標を打ち出している。さらに日本でBEVが普及するためにはどんなことが必要と考えているのだろうか。
「ひとつは現実的な課題、もうひとつは消費者の電気自動車に対するイメージや意識の問題です。まず現実的な問題としては、BEVのコストと充電へのアクセスが挙げられます。BEVはバッテリーの製造コストが高いため、現在はICE(内燃機関車)よりもかなり高価です。しかし、これは今後数年間で変化するでしょう。そうなれば、維持管理費が低く、持続可能性に優れたBEVが消費者に支持されるようになるはずです。これを加速させる要因のひとつが、政府によるBEVモデルへのインセンティブです。欧州でBEVの販売が本格化したのは、政府が的を射た支援を行ったことが大きな要因です。残念ながら、日本ではそのレベルはまだ低いと言わざるを得ませんが、最近ではこの状況が改善される兆しが見えてきています。充電に関しては、公共充電の拡大がポイントになります。日本には人口密度の高い都市部、高度な高速道路網、充電スポットとなる商業施設(ショッピングモールなど)が数多く存在しており、実は強力な公共充電ネットワークを構築するうえで有利な状況にあるのです」
また、消費者の心構えや姿勢の点では、BEVはまだ新しい存在のため、消費者が最初に躊躇するのは当然のことと理解を示す。
「現在、多くの消費者が充電ポイントへのアクセスを心配しています。一方で、日本のドライバーの平均的な走行距離は、他の国に比べてはるかに短いことを認識する必要があります。その平均的な走行距離は、週に200〜250㎞程度だと仮定しましょう。〈ボルボ〉のBEVである“C40リチャージ”の場合、航続距離は400㎞以上です。そうすると、ほとんどのドライバーは月に2〜3回しか充電しなくて済むことになります。その場合、お客様が公共の充電設備を利用できれば、必ずしも自宅で充電する必要はありません。そして、“充電の心配”がなくなれば、静かで楽しいドライブ、低コストでの購入、持続可能性など、BEVのメリットが前面に出てくるはずです」
また、BEVを推進する一方で、新しいターゲットに向けてブランドをアピールすることが課題と語るマーティン氏。どうやら多くの若い消費者は〈ボルボ〉に対して少し古いイメージを持っていると感じているようだ。
「私たちが、〈ボルボ〉の現代的な位置づけを説明できれば、彼らは〈ボルボ〉の価値観が自分たちに合うと感じ、興味を持つようになります。そのためには、マーケティングに使用するメディアチャネルとメッセージの両方を刷新する必要があります。“C40リチャージ”発売と同時に開始するサブスクリプション・プログラムがその一例です。これはクルマを必要としながらも所有には興味がない消費者に適しています。さらに〈ボルボ〉のサブスクリプション・プログラムは、任意保険が含まれるうえ、お客様を固定期間で縛るのではなく、3カ月前に予告すれば違約金なしでキャンセルできるという点でもユニークです。これは、若いお客様にとって非常に魅力的なものになるでしょう」
さらにオンライン販売も強化する〈ボルボ〉。未来への取り組みはまだまだ加速するようだ。
〈ボルボ〉C40リチャージ
C40リチャージは、今年4月に発表された〈ボルボ〉初のEV専用となるクロスオーバーモデル。前後に電気モーターを搭載し、航続距離は約485㎞。オンラインのみでの販売となる。日本導入を記念した特別な100台では、特別なサブスクリプション・プログラムの注文もオンラインで受け付け予定。
ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長
Martin Persson
マーティン・パーソン
1971年スウェーデン生まれ。1996年交換留学で初来日。翌年帰国し、リンショーピン大学大学院理学修士号、ボルボ大学院開発プログラムを取得。1999年ボルボ・ジャパンに入社。キャリアを積み、2008年本国のボルボ・カー・コーポレーションのグローバルCRM責任者に就任。その後、ロシア、中国に赴任し、ボルボ・カー・ロシア社長などを経て、2020年10月から現職。
●ボルボ・カスタマーセンター
TEL:0120-922-662
URL:volvocars.com
『Urban Safari』Vol.25 P29掲載