“ダイバーズウォッチ”は読んで字のごとく、ダイビングに必要なスペックや機能を備えた、特殊な設計の時計。ダイビングは一歩間違えば生命に危険が及ぶこともあるため、防水性はもちろん耐久性や機能性、視認性など、様々な要素に通常の時計とは異なる、安全を確保するための高度な技術が投入される。その結果、外観もいかにも“装備然”とした大型で武骨なものになりやすく、一般的にダイバーズウォッチは装飾性を重んじる、いわゆるドレスウォッチとは対極の存在。
しかしながら、ダイバーズウォッチの虚飾のない機能美はファッションアイテムとしての魅力も十分。その資質が最大限に生きる新作が、イタリアの名門時計ブランド、〈パネライ〉から発表された。
くだんのモデルはドイツの高級モビリティブランド、ブラバスとのコラボレーション。両社は2021年にパートナーシップを締結し、ダイバーズコレクションのサブマーシブルから複数のコラボモデルを発表している。最新作は、消費者の手に届く前のプレコンシューマーチタン合金から100%リサイクルされたチタンパウダー“eチタニオ”を独自のDMLSテクノロジーで成形した超軽量のケースを採用。ケースの重さは従来のチタンケースよりも約30%軽い、わずか23.6g。これにより時計の総重量115gという快挙が実現した。
DMLSテクノロジーはDirect Metal Laser Sintering(直接金属レーザー焼結法)の略で、精密な3Dプリント工程によって粉末状の素材を高出力光ファイバーレーザー焼結によって融合する。金属の塊から削り出すのではなく、素材を何層にも重ねて構築するため極薄の中空構造が可能となり、この画期的なレイヤリングによって生まれるケースのチタン壁の厚さはなんと30ミクロン(0.03mm)! 強度や防水性を損なうことなく軽量化と、特殊な工程に由来する独自の美しい質感が得られる。
特筆すべきはケースだけではない。3年がかりで開発した〈パネライ〉初のスケルトン仕様の自動巻きキャリバーP.4001/Sを搭載し、大胆なオープンワークの中でムーブメント……精巧な“エンジン”がデザインの一部として機能する。デイト表示は特殊な偏光技術によって開口部を光が通過する時のみ数字が可視化され、スケルトナイズドの審美性を妨げない“ポラライズドデイト”。逆回転防止ベゼルに用いられるカーボンファイバーの複合素材“カーボテック”も軽量化や高級な美観に寄与。7時位置にさりげなくあしらわれたBRABUSのロゴがスペシャル感をことさらに盛り上げる。さらに時分針とスモールセコンド、第2時間を表示するGMT針などにあしらわれたレッドもブラバスのDNAを表現したもので、あらゆる細部にパネライとブラバスの技術と美へのこだわりが結実している。
世界限定177本(ブティック限定)。ケース径47mm、自動巻き、チタンケース、カーフ+ラバーストラップ(リサイクルPETを68%使用したファブリックストラップ付属)、30気圧防水。682万円。(オフィチーネ パネライ)
〈パネライ〉は現在でこそファッショニスタ御用達の高級メゾンとして親しまれているが、1860年の創業後、当初はイタリア海軍の潜水特殊部隊にダイバーズモデルを提供するミリタリーサプライヤーとして実績を築いたブランド。民生用のモデルを発表したのは1993年以降で、現行のラインナップには“巷デビュー”の以前から培った、極限状態を耐え抜くための技術やアイデアが遺憾なく発揮されている。パネライ サブマーシブル Sブラバスeチタニオはサスティナビリティを意識しながら最新のテクノロジーやマテリアルを駆使し、あくまでスタイリッシュに仕上げた実力派ダイバーズ。インパクトのある47㎜径のビッグフェイスに潜むドラマチックなブランドストーリーの面影が、スタイルの種類を問わず、その日のファッションをより高級に、魅力的に仕上げるはずだ。
●オフィチーネ パネライ
URL:panerai.com