『犯罪都市 NO WAY OUT』(2月23日公開)監督/イ・サンヨン 出演/マ・ドンソク、イ・ジュニョク、青木崇高、國村隼 配給/ツイン
主演最新作『犯罪都市 NO WAY OUT』が2月23日から日本公開されるマ・ドンソク。体格がよく、一見いかつい風貌だが、よく見ると優しそうな目を持つ彼は、今や韓国映画界を代表するスター俳優に。ヒット作請負人として名を馳せ、『犯罪都市NO WAY OUT』も韓国興行収入100億円を突破する大ヒットへと導いている。
『FLU 運命の36時間』
長きにわたるアメリカ生活を経て、30代前半から韓国での俳優活動を本格化させたマ・ドンソク。アメリカの大学で体育学を学び、フィットネストレーナーやナイトクラブの用心棒として働いていたという経歴が物語るように、演じる役柄は肉体を生かしたものが多め。パンデミック下で卑劣さを見せる軍人を演じた『FLU 運命の36時間』(2013年)や謎の武装集団のリーダーを演じた『殺されたミンジュ』(2014年)、連続殺人鬼を演じた『罠』(2015年)など不穏な役どころもあり、一見したところのいかつさと俳優としてのキャリア構築はやはり無縁ではないとも言える。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)
そんなマ・ドンソクの分岐点の1つと言えるのが、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)のユ・サンファ役。ゾンビとの戦いを描いたパニック映画に、身重の妻をいたわる男性役で登場。頭に血がのぼりやすく、怒りを拳に託しがちな乱暴者ではあるが、その気質がゾンビとのバトルでは大活躍。乗車していた列車にゾンビが大量発生する中、バッタバッタと素手でゾンビをやっつけていく男役がハマりまくっていた。それでいて妻には弱い人間味も手伝い、映画の大ヒットともどもマ・ドンソク株も急上昇。「一見強面だが、実は……」な魅力が自身のキャラクターとの一致も見せていく。
『ファイティン!』(2018年)
『無双の鉄拳』(2018年)
「一見強面だが、実は……」な魅力で目を引くものと言えば、『ファイティン!』(2018年)のアームレスラーや『無双の鉄拳』(2018年)の荒くれ者なども。ムキムキの上腕二頭筋で腕相撲大会に挑むアームレスラーも、妻を何者かに誘拐されてしまう荒くれ者も、愛する者への思いを原動力に、根っこの優しさを見せるオトコたちだった。それは、代表作の1本に数えられる『悪人伝』(2019年)で演じた暴力団の組長も。自分を襲撃した人物に復讐するため、無慈悲な暴力性を炸裂させる組長役は限りなく“悪役”に分類されるものだが、ちょっとした優しさも随所に。手を組むことになる刑事とのバディ感も絶妙で、つい声援を送りたくもなった。
『神と共に 第二章:因と縁』(2018年)
それらの優しさに茶目っ気をふんだんに注入し、ユーモアを増量させたのがファンタジーアクション大作『神と共に 第二章:因と縁』(2018年)の温和な屋敷神や『スタートアップ!』(2019年)のミステリアスな料理人。特に後者は「一見強面だが、実は……」から「へなちょこを装っているが、実は強者」にシフトし、うさん臭いおかっぱ頭の男を嬉々としてコミカルに演じていた。マ・ドンソクのハリウッド映画デビューとなったマーベル大作『エターナルズ』(2021年)も、その系譜にあると言って差し支えないかもしれない。人類を見守ってきた不老不死の種族・エターナルズの中でもとりわけパワフルで、怪力自慢のギルガメッシュを演じ、パートナー役アンジェリーナ・ジョリーとの息の合ったやり取りを披露。エプロン姿でお料理に励む姿まで見せたかと思えば、もちろんバトルシーンではアクションスターぶりを遺憾なく発揮し、ハリウッドの度肝を抜くことになった。ちなみに、マ・ドンソク自身が語ったところによると、『エターナルズ』出演当時にはマーベルと数本の出演契約を交わしたそう。その後続編などの進捗状況は聞こえてこないが、いつかは復活の可能性も期待したい。(後編https://safarilounge.jp/online/culture/detail.php?id=14858に続く)
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