小林 圭/レストランKei オーナーシェフ
フレンチの総本山で“3つ星”として輝きを放つ理由。
2020年ミシュランガイドで3つ星を獲得し、いまやパリ有数の予約のとりにくい店となった〈レストランKei〉。オープンした2011年の翌年に早くも1つ星に輝き、2017年に2つ星、2020年から3つ星を3年連続獲得と、一流への階段を駆け上がってきた。その原動力はどこにあるのか。オーナーシェフ小林 圭氏に聞いてみた。
「私たちのレストランは“出会い”によって作られるものです。ゲストも食材も然り。食材を使うということは、その命を預かるということ。出会ったからには責任を持たなくてはなりません。その預かった命をどうやって皿に返して、ゲストの記憶に残るものにするのか? その自問自答の繰り返しがレストランを育ててくれると思って、ここまで歩んできました」
だが、現状には慢心せず。“3つ星はスタートライン”という認識には驚く。
「私が目指しているのは、レストランを通して世界一の劇場を作ること。来てくれたゲストの心を満たし、感動を与えたいのです。もちろん、人によって育った環境が違うので簡単なことではありませんが、すべてのゲストに“今までの人生において一番いい時間を過ごせた”といってもらえること。それが究極の目標です」
そんな小林氏は、“料理と同じように生きていくうえで必ずしも必要ではないが、心を満たすために必要なもの”という考えから、機械式時計も愛する人物。とりわけ〈オーデマ ピゲ〉の熱烈なファンという。
「世界三大時計ブランドと呼ばれる老舗でありながら、革新し続けていることに惹かれます。私の店の歴史はまだ11年ですが、料理の世界で革新を続け、いつかクラシックと呼ばれるようになる。料理人としてそうありたいと願っています」
『Urban Safari』Vol.30 P5掲載
photo : Kouki Marueki(BOIL) text : Takumi Endo