
遡るならアカデミー賞受賞作の『パラサイト 半地下の家族』、昨年で言うとパク・チャヌクの『しあわせな選択』など、世界で評価される韓国映画には低温でヒリヒリしたものが多い印象だが、『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』で感じられるのはほっこりと温かい韓国。不遇の少女と孤独な大人の物語が2024年ベルリン映画祭に集った観客の心を温め、子供たちが審査員を務める『ジェネレーションKプラス』部⾨の最優秀作品賞を受賞した。
とは言ったものの、はじまりはやるせない。ソウル国際芸術団で舞踏の練習に日々明け暮れる⾼校⽣イニョン(イ・レ)は事故で親を亡くし、天涯孤独の身に。家賃を払えず家からも追い出されてしまい、こっそりと練習室に寝泊まりするようになる。そんなイニョンの非常事態に気づいたのが、芸術団の監督を務めるソラ(チン・ソヨン)。生徒たちをいつも震え上がらせている鬼監督のソラは、見るに見かねてイニョンを自宅に住まわせる。
とにかく気持ちのいい作品で、温かい。その大きな理由になっているのが、主人公の人柄だろう。イニョンは親を亡くして悲嘆に暮れるし、競争の激しい芸術団では理不尽ないじめにも遭うが、決してめげない。孤独な状況に陥っても何とかサバイブしようとし、いじめっ子に頬をぶたれたら当然のようにぶち返す。メソメソすることのないイニョンの凜とした姿が頼もしく、時にユーモラスですらあり、それが作品のカラーになっているのだ。
そんなイニョンだからこそ、共同生活を送ることになるソラとの時間にも笑いが生まれはじめる。そもそも、行き場のないイニョンがソラの洗練された家に転がり込む経緯もちゃっかりしていて、鬼監督でなくとも眉をひそめたくなるシチュエーション。だが、イニョンはスマイルとガッツでいとも自然に、冷淡に見えたソラの心の壁を打ち砕いていく。また、孤独なイニョンの身を案じる大人はソラ以外にもおり、近所の薬局で働く薬剤師がイニョンの良き理解者としてさりげなく登場。ソン・ソックが絶妙な空気感と距離感で寄り添う大人を演じ、いい味を出している。
監督を務めたキム・ヘヨンにとっては、本作が長編監督デビュー作となる。日本上陸は前後するが、昨年は『今夜、世界からこの恋が消えても』の韓国リメイク版で監督を務めた。同作は日本のオリジナル版とはまた一味違う味わいだったが、その理由も『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』を観れば納得かもしれない。ほどよい強さで、希望を持ち、ユーモアの力も借りながら背中を押してくれる作風に、監督の人柄が表れている。
『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』4月10日
監督/キム・へヨン 出演/イ・レ、チン・ソヨン、チョン・スビン、イ・ジョンハ、ソン・ソック 配給/日活/KDDI
2023年/韓国/上映時間102 分
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