Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.11.21


ニコラス・ケイジ「自分の名前をグーグル検索したらパニックに陥ったよ」(映画『ドリーム・シナリオ』インタビュー)



ハリウッドのトップ俳優には、トラブルやスキャンダルに見舞われ、ジェットコースターのような人生を送る人もいる。ニコラス・ケイジは、そんな一人かもしれない。1995年の『リービング・ラスベガス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、『ザ・ロック』や『フェイス/オフ』といったアクション大作も成功させて俳優人生が安泰かと思われたら、世界各地の豪邸購入に加え、古城や恐竜の化石、高級車、大好きなアメコミの膨大なコレクションなど、映画で得たギャラを文字どおり湯水のように使い、税金未納も含めて莫大な借金を作ってしまう。これまで離婚歴は4回と、家庭生活も不安定。しかしそのニコラス・ケイジも、ここ数年、人生のジェットコースターの高い場所をキープしている。

出演作が軒並み高い評価を得て、新作『ドリーム・シナリオ』ではゴールデングローブ賞の主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネート。ケイジが演じる大学教授のポールが、何百万人もの夢に同時に現れるという“怪現象”が起こり、彼は一躍、有名人になるが……という物語。気鋭のスタジオ、A24の製作ということで作品自体もユニーク。この『ドリーム・シナリオ』のオンラインでの会見では、質問に答えるケイジの背後から、まだ1歳(当時)の娘の泣き声が聞こえ、彼が照れくさそうな表情を浮かべるなど、家庭生活も幸せいっぱいであることをうかがわせた。

ーー『ドリーム・シナリオ』のオファーを受けた理由から聞かせてください。

「まずタイトルに惹かれたんです。『夢(ドリーム)』と脚本(シナリオ)』という単語が両方とも好きだったので、脚本を読んでみたところ、俳優人生でもベスト5に入るくらいの仕上がりでした。主人公のポールを演じるうえで、僕自身が十分に積んできた人生経験を生かせると感じましたね」

ーー脚本ベスト5の他の4本とは?

「『赤ちゃん泥棒』、『バンパイア・キッス』、『リービング・ラスベガス』、そして『アダプテーション』です」

ーー大学教授役にも親近感をおぼえたとか……。

「そうなんです。父が大学教授で、僕の記憶の中には、生徒たちの想像力を広げることに喜びを感じる彼の姿が残っています。学問の世界は競争が激しく、大学内で多くの教師が誰かを出し抜こうとしている事実も、父親を通して知っていました。ですから僕はポールを演じる際に、学内で不遇な目に遭いながらも、生徒たちと心から繋がりを持ちたい教師であることを意識したんです。そこに父親像を無意識に重ねていたかもしれません。だいぶ前の作品ですが、1989年の『バンパイア・キッス』では、キャラクターと一体化する方法として、父が英語の授業をする際のちょっとイギリス人っぽいアクセントを真似したりもしましたよ」
 

  

 
ーーポールが生徒を授業に集中させるという意味で、今回も“声”が重要でした。

「実は演技をはじめた頃、僕は自分の声にコンプレックスがあったんです。映画の中の僕のヒーロー、たとえばハンフリー・ボガートなどはルックス以上に声の響きで魅了していました。それに比べると、僕の声はちょっとインパクトに欠けると思って……。だから僕は“ニック・ケイジの声”で個性を開発しようと決め、今に至っています」

ーーポールが多くの人の夢に出てきて、自分ではどうすることもできない状況を、どんな風に理解したのですか?

「たしか15年くらい前ですが、ある朝、目が覚めて、なぜか自分の名前でグーグル検索をしたんです。一番やっちゃいけないことですよね(笑)? そこで見つけたのは、僕が過去に演じたキャラクターが危機的状況になるシーンを集めたマッシュアップ動画。眺めているうちに自分でもパニックになり、それからしばらく食事中も“心ここにあらず”で、自分でも何か起こっているのかわからない状態になりました。もちろん動画を削除することはできません。『ドリーム・シナリオ』の脚本を読んで、その時の経験がリンクしたんです。人は夢をみるけれど、それを他人がコントロールすることはできない。そんなポールの切実な思いが痛いほど理解できました」

ーーちなみに、あなたはよく夢をみるタイプですか?

「僕は夢をたくさんみます。両親の話では、子供の頃から悪夢でうなされていたそうです。大人になってからは、悪夢への対処法も考えるようになりました。たとえば飛行機事故の夢が続いた場合、目が覚めた時にそのような事故に遭った人への同情で心を満たすようにするわけです。思いやりの精神に方向性を変えることで、悪夢がトラウマにならない。ただ夢と現実の関係や、夢が叶える魔法などは、冷静に考えると現実的じゃないと感じますね」

ーーでは、みたい夢は?

「ありきたりですが、妻と子供と一緒に過ごしている夢です(笑)」

ーー俳優のキャリアを始めて40年以上が経ちますが、演技への取り組み方は変わってきましたか?

「結果がうまくいったかどうかは別にして、僕にとって過去の演技はすべて“実験”でした。今もどこか学生のような気分で、長期間の勉強をしている感覚なんです。今年60歳になり、その少し前に『ドリーム・シナリオ』のような作品と出会えたのも、実験の積み重ねの結果でしょう。オスカーをもらった『リービング・ラスベガス』の頃を振り返ると、役との感情的な繋がりを必死で見つけ、練習していました。本番直前までセリフを繰り返したり、セットをウロウロ歩き回ったりもしましたが、最近は監督の『アクション!』という声で瞬時にスイッチが入りますね。役に入り込んだうえで感情表現のテクニックを駆使しているんです」

ーーでは今後の目標は?

「僕が愛した往年の映画、若い頃に憧れた俳優の“リズム”のようなものを身体に染み込ませ、現代の作品に持ち込むことでしょうか。演技に抽象性やシュールレアリズムを与えたいんです。このようなチャレンジを成功させた例といえば、たとえば美術の世界ではピカソやアンディ・ウォーホールなと何人も挙げられます。彼らの功績を、僕は演技という分野で目指したいんですよ。もちろんキャラクターの本物の感情を観てくれる人に伝えることが大前提ですけれどね」

『ドリーム・シナリオ』11月22日公開
製作・出演/ニコラス・ケイジ 監督・脚本/クリストファー・ボルグリ 出演/ジュリアンヌ・ニコルソン、リリー・バード、ジェシカ・クレメント、マイケル・セラ 配給/クロックワークス
2023年/アメリカ/上映時間102分

●こちらの記事もオススメ!
デンゼル・ワシントン「大谷も好きだけど、ジャッジも好き。NYヤンキースの大ファンだから、悔しくてたまらないよ」【映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』来日インタビュー】
 

  

 

 
取材・文/斉藤博昭  text:Hiroaki Saito
© 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED
Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタントエレガントな時間を、手元に宿す。
SPONSORED
2025.11.28

Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタント
エレガントな時間を、手元に宿す。

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!
SPONSORED
2025.12.01

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!
大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!

1950年にはじまった〈ゴールドウイン〉のヒストリー。その新作スキーウエアコレクションの名前は、創業地にちなんだ“オヤベ”だ。歴史の深みを感じさせ、エイジレスなスタンダードデザインでありながら、機能は最新鋭。素材はもちろん、ひとつひとつの…

TAGS:   Fashion
初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!
SPONSORED
2025.11.25

初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!
カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!

一流は一流を引き寄せるとは、よくいわれること。ロックアーティストHYDEがまとったのは“キング・オブ・ダイヤモンド”として名高い、世界最高峰のジュエリー&ウォッチブランド〈ハリー・ウィンストン〉。常に最高を求め続ける両者が出会うと、どんな…

TAGS:   Fashion Watches
〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!さりげに違い出しできる大人の冬アウター
SPONSORED
2025.11.25

〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!
さりげに違い出しできる大人の冬アウター

冬カジュアルの主役であるアウターは、さりげなく違いが出せる1着を選びたい。そこで注目すべきなのが、大人のための上質な冬アウターに定評のある〈タトラス〉。定番ベースのシンプルなデザインを基本としつつ、街ゆく人をハッとさせるさりげない“違い”…

TAGS:   Fashion
〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!大人の革小物はさりげなロゴ使いで!
SPONSORED
2025.11.25

〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!
大人の革小物はさりげなロゴ使いで!

普段、バッグや靴ほど目立たないが、意外とセンスを問われるのが財布などの革小物。大人ならシンプルながらも品があって、さりげない上質感のあるものが狙いめだ。となれば〈サンローラン〉の革小物を。小ぶりなアイコンロゴがピリッと効いた財布やカードケ…

TAGS:   Fashion
俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!
SPONSORED
2025.11.25

俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!
“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!

航空計器から着想を得た革新的なデザインが人気の〈ベル&ロス〉から、2本の限定モデルが登場した。情熱的な輝きを放つダイヤルの赤と闇夜にクールに浮かび上がる蓄光の緑。異なる魅力を宿す2本のパワーウォッチがファッションシーンでも注目を集める俳優…

TAGS:   Fashion Watches
大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!冬カジュアルに効く品格バッグ!
SPONSORED
2025.11.25

大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!
冬カジュアルに効く品格バッグ!

大人の冬カジュアルに欠かせない名脇役がバッグ。どんな着こなしにも似合う上質なバッグがあれば、気分よく外出できるというもの。そこでおすすめしたいのが、〈フルラ〉の新作として登場した“アーバン バックパック”。コートなら背負って、短丈ブルゾン…

TAGS:   Fashion
機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?
SPONSORED
2025.11.25

機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!
こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?

男のカジュアルウエアは、ワークやミリタリーをモチーフにしたタフで骨太なアイテムが定番。それは服だけでなく、足元も同じだ。とはいえ往年のワークブーツなどでは、履き心地やスペック的に現代の暮らしにフィットしない!? ならば、〈アシックス〉のワ…

TAGS:   Fashion
“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!“上質”を贈りたい 大人のギフト!
SPONSORED
2025.11.25

“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!
“上質”を贈りたい 大人のギフト!

クリスマスに忘年会、そしてニューイヤー……年末年始は、特別なギフトシーズン。頑張った自分へのご褒美に、大切な人に感謝を込めて、“とっておきの上質”を贈りたい。自分の身と心を一新させるようなワザありの逸品から、相手の顔が思わずほころぶ名品ま…

建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。
SPONSORED
2025.11.14

建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。
豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。

〈バルミューダ ザ・ストア 青山〉を訪れた建築家・クマタイチさん。暮らしに寄り添う建築を数多く手掛けてきたからこそ、関心を寄せたのは新しい加湿器“レイン”だ。ただ湿度を調整するだけでなく、暮らしを豊かに導くための機能や造形美を兼ね備えた“…

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!名作時計はファッション使いするのが決め手!
SPONSORED
2025.11.11

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!
名作時計はファッション使いするのが決め手!

2025年で創業165周年を迎え、そのうえ、22年ぶりにモータースポーツの最高峰である“F1”公式タイムキーパーにも返り咲いた〈タグ・ホイヤー〉。モータースポーツと密接な関わりをもち、勝利を象徴するウォッチとして君臨してきたそれは、時を経…

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。
SPONSORED
2025.11.18

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。
ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。

上質なレザーのしなやかな感触と使い勝手の良さで支持を集めている〈アニアリ〉のバッグ。ミニマルで洗練されたデザインは、装いを自然に洗練されたものへと導いてくれる。また、確かな日本の職人技に裏打ちされた使いやすさと安心感が、使うほどに深まる風…

TAGS:   Urban Safari Fashion

loading

ページトップへ