時代を映画で再現するツールとして1970年代のブラックカルチャーを彩った様々なアイテムは、作る人にとっても、着る人にとっても、また、見る人にとっても分かりやすくて懐かしくて、そして何よりも楽しい。アフロヘアにデニムジャケット、シープスキンのレザージャケット、スウェードのボンバージャケットに、首から下げたド派手なアクセサリーは絶対に欠かせない。1970年代前半にブームを巻き起こした、『黒いジャガー』(1971年)や『スーパーフライ』(1972年)に代表されるアフリカ系アメリカ人をターゲットに製作された映画は、ブラックスプロイテーションと呼ばれ、大ヒット。『黒いジャガー』で主人公の私立探偵シャフトを演じるリチャード・ラウンドトゥリーが、ロングのレザーコートを風に靡かせて街を闊歩する姿は本当にカッコよくて、ため息が出たものだ。
さて、スパイク・リーがアメリカ、コロラド州の警察署で、初の黒人刑事として採用された実在の人物、ロン・ストールワースにフォーカスする『ブラック・クランズマン』(2018年)の背景は1979年。ここでも衣装が時代の香りを客席まで運んでくれる。ジョン・デヴィッド・ワシントン扮する主人公のロンが纏うのは、まさに、1970年代のブラックパワーを象徴するアイテムばかり。ロンはシープやスウェードのジャケットは勿論、タートルネックの上にシャツ、シャツの上には襟を合わせたデニムジャケットというかなり上級のレイヤードルックで現れる。アフロヘアとアフロピックジュエリーが彼の必需品だ。ロンの素顔はそんな感じなのだが、白人至上主義団体、KKKにコンタクトする際、電話は自分で、対面は同僚の白人刑事、フリップ(アダム・ドライバー)が受け持ち、二人羽織的な潜入捜査が展開していくところが物語としての面白さだ。
この世代(39歳)でワシントンほど人懐っこくて映画ファンフレンドリーなアフロ系俳優はいないと思う。逆に高級スーツで登場した『テネット』(2020年)と比べて着こなしの幅の広さでも申し分ない。服と着る人が揃うと衣装担当者も力が入る。本作の衣装デザイナー、マーシ・ロジャーズはニューヨークやの”ビーコンズ・クローゼット”や”Lトレイン・ヴィンテージ”といった人気ヴィンテージショップを片っ端から回ってコスチュームを調達したという。どちらも1970年代のブラックカルチャーやストリートファッションに憧れるヴィンテージファンにとってはお馴染みのショップ。つまり、『ブラック・クランズマン』に登場する衣装は単なるオマージュではなく、今も愛され、着られている服たちなのだ。
『ブラック・クランズマン』
製作年/2018年 監督・脚本/スパイク・リー 出演/ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー
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photo by AFLO