『羊たちの沈黙』
製作年/1991年 原作/トマス・ハリス 監督/ジョナサン・デミ 脚本/テッド・タリー 出演/ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン
クローズアップ映像にスリルが倍増!
若い女性を狙った猟奇連続殺人事件が発生。FBI候補生クラリスは犯人像の手がかりを求めて、獄中の精神科医レクターを訪ねる。レクターは天才的な頭脳を持つ一方で、人を殺してその内臓を食べた猟奇犯罪者でもあった。クラリスは彼と面会を重ね、“バッファロー・ビル”と呼ばれる犯人に近づいていく。その頃バッファロー・ビルは新たな標的として、上院議員の令嬢を拉致・監禁していた……。
サイコスリラーのブームの先駆けたとなった、おなじみのアカデミー賞受賞作。トマス・ハリスのベストセラー小説を、ジョナサン・デミ監督は濃密な構成で映像化。とりわけ、クローズアップのインパクトは大きく、クラリス=ジョディ・フォスターとレクター=アンソニー・ホプキンスの顔を交互にとらえたドアップの映像をはじめ、絵的にドキドキさせられる場面は多い。続編『ハンニバル』や、前日談『ハンニバル・ライジング』と併せて、是非!
『ゾディアック』
製作年/2007年 原作/ロバート・グレイスミス 監督/デヴィッド・フィンチャー 脚本/ジェームズ・バンダービルト 出演/ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.
“容疑者と地下室で二人きり”という恐怖!
1969年の米サンフランシスコで、残虐な殺人事件が続発。現地の新聞社に送られてきた声明文により、正体不明の犯人は“ゾディアック”と呼ばれ、恐れられるようになる。刑事や記者が事件の調査に当たり、容疑者も浮かび上がるが、解決には至らなかった。一方、新聞社の風刺画家グレイスミスは事件に興味を抱き、独自の調査を熱心に続けた結果、ある怪しい人物に行き当たる。
ゾディアック事件として知られる実際に起こった未解決連続殺人事件の謎に、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・ファンチャー監督が肉迫。記者や刑事ら、事件に憑かれていくことで疲労を募らせる人々の心理に焦点を絞る。一方で、グレイスミスが容疑者らしき人物と地下室でふたりきりになる場面など、緊張感にあふれた見せ場も。ジェイク・ギレンホールやロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロら演技派俳優たちの競演も見どころだ。
『マシニスト』
製作年/2004年 監督/ブラッド・アンダーソン 脚本/スコット・コーサー 出演/クリスチャン・ベール、ジェニファー・ジェイソン・リー
不眠と苦境のピリピリ感が観る者にも伝わる!
工場で働く男トレバーは不眠症に悩まされ、1年にわたって眠ることのない生活をおくっていた。食欲もなく体はやせ細り、なじみの娼婦にも心配される始末。アイバンと名乗る新人の溶接工と出会った日、彼は不注意から職場で事故を起こしてしまう。“アイバンに気を取られた”と弁明するも、そんな人物はおらず、トレバーは工場で孤立を深めていく。しかし再びアイバンは姿を現わし、トレバーは真実を追求しようとするが……。
『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』など、サスペンスの分野で才気を発揮しているブラッド・アンダーソン監督の代表作。主人公トレバーが見ているものは現実か、幻想か!? 不眠症と苦境ゆえにピリピリとした感覚を増していく、彼の精神状態の描写がスリリングで、衝撃的な事実を明かす結末まで目が離せない。体重を30キロ減量してガリガリの体型で役に挑んだクリスチャン・ベールの熱演も話題となった。
『あるスキャンダルの覚え書き』
製作年/2006年 監督/リチャード・エアー 脚本/パトリック・マーバー 出演/ジュディ・リンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ
孤独なオールドミスの黒い欲望にハラハラ!
定年を間近にした独身の女性教師バーバラは堅物ゆえ、同僚や教え子にも疎まれていた。そんなある日、家庭を持つ美人の美術教師シーバが教え子と関係を持っていることを知る。彼女に友情以上のものを感じていたバーバラはシーバに近づき、黙っている代わりに教え子との関係を止めるよう説き伏せる。だが、ことはこれでは終わらず、孤独をこじらせたバーバラはシーバを自分のものにしようと画策し……。
英国ブッカー賞の候補になった名著を、アカデミー賞に輝く2大女優の共演で映画化。シーバ役のケイト・ブランシェットは誰からも愛されているキャラクターを妙演。しかし、衝撃的なのはバーバラ役のジュディ・デンチだろう。飼い猫だけが友だちのオールドミスの孤独と、心の底から沸き起こる欲望が黒く染まっていくさまを体現。後に明かされる意外な事実とともに、その変容には大いにハラハラさせられる。
『ネオン・デーモン』
製作年/2016年 原案・監督・脚本/ニコラス・ウィンディング・レフン 出演/エル・ファニング、キアヌ・リーヴス、カール・グルスマン
嫉妬と妬みがジワジワとやってくる!
モデルになる夢を追い、ロサンゼルスにやってきた少女ジェシー。モーテル生活をおくりながらモデル事務所との契約にこぎつけ、敏腕カメラマンに見出されてチャンスをつかんだ彼女は。事務所の先輩である売れっ子モデルたちを差し置いて、ファッションショーのトリに抜擢される。華々しい成功はジェシーに自身の美ぼうを自覚させるに至った。だが、一方ではそんな彼女を妬んだ者たちの恐ろしい策略が……。
『ドライヴ』の鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンがファッション業界の狂気に切り込んだ衝撃作。ヒロインが抱く成功への渇望や、見知らぬ地での不安、それらが自信や傲慢へと変わるさまを見据える。一方では、嫉妬という他者の激しい感情があり、それらが絡み合って突入するクライマックスは弱肉強食の冷酷な世界を象徴するかのようで、ただただ壮絶。キアヌ・リーブスが、何を考えているかわからない不気味なキャラで出演している点にも注目。
photo by AFLO