
これみよがしな華やかさよりも、惹かれる色がある。曇天の空に差し込むわずかな光。白銀の世界できらめく青白い輝き。自然が垣間見せるグラデーションは、心の奥底に眠る本能を震わせる。〈クロノスイス〉の新作『デルフィス グレイシア』は、まさにそんな情景を腕元に閉じ込めた一本だ。ブランドを代表する『デルフィス』コレクションの最新作として登場した本作は、氷河の持つ静謐な美しさと、機械式時計ならではの複雑な魅力を融合させている。
目を引くのは、その独創的な表示機構。12時位置の窓に時を表示するジャンピングアワー、センターを大きく横切るレトログラード分針、そして6時位置のスモールセコンド。今では〈クロノスイス〉を象徴する存在となったこのレイアウトは、時計を見るという行為そのものを特別な体験へと変えてくれる。
特に印象的なのが、氷河から着想を得たダイヤルだ。レトログラード分針が走る三日月形のアッパーダイヤルには、シルバーのガルバニック加工と手作業によるギョーシェ装飾を採用。曲面状に広がる繊細な模様は、氷の表面に刻まれた自然の造形を思わせる。さらに6時位置のスモールセコンドにはブルーのCVDコーティングを施し、凍てついた氷河のような深みを表現している。
こうした技巧的な仕上げが施されているにもかかわらず、全体の印象は驚くほどクリーン。シルバー、ブルー、グレーを基調としたモノクロームの世界観は、複雑機構の存在感を際立たせながらも決して騒がしくならない。白シャツやグレージャケットといった都会的な装いにも自然になじみ、機械式時計でありながらどこかモダンアートのような雰囲気を漂わせている。
ケースには42㎜のグレード5チタンを採用。アルプスの氷河が持つ静かな強さと純粋さを表現したというナチュラルなメタリックカラーは、軽量なチタン素材ならではの軽快な装着感も実現。ブラックラバーストラップとの組み合わせも現代的で、複雑時計でありながら日常使いしやすいのが魅力だろう。
内部には、自社製ムーブメントC.6004を搭載。ジャンピングアワーとレトログラード分針という複雑機構を支えながら、約55時間のパワーリザーブを確保する。〈クロノスイス〉が長年培ってきた技術力と、独創的なデザイン哲学の結晶といえる存在だ。 
世界限定50本。ケース径42㎜、自動巻き、チタンケース、ラバーストラップ、10気圧防水。418万円(クロノスイス/栄光時計)
氷河が長い年月をかけて形作られるように、本作もまた、時計師たちの長年にわたって積み重ねてきた技術や想いの結晶だ。『デルフィス グレイシア』が表す静謐の刻は、人生の深みを知る大人の腕元によく似合う。
⚫︎栄光時計株式会社
TEL:03-3837-0783
































































