幽霊より人間の方がよっぽど怖い!
狂気に満ちたサイコパス映画5選!
夏の風物詩といえば怖い話。けれども、最近では、あおり運転やら自粛警察やらと、人間の狂気の方がよっぽど怖いな〜と感じることが多い。そこで、サイコパスが登場する映画を5本セレクト。これを見ておけば、トラブルを未然に回避できるかも!?
『私が、生きる肌』
製作年/2011年 監督/ペドロ・アルモドバル 出演/アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ
亡き愛妻の顔を移植する!
主人公は妻に先立たれ、娘をも自殺で亡くしてしまった天才整形外科医。孤独の中で狂気に憑かれ、人工皮膚の開発に熱中する彼は、ひとりの”女性”を地下の研究室に監禁して、禁断の実験を続けていた。予期せぬトラブルを経て、ロベルはついに彼女の皮膚を完成させる。その姿は、亡き妻にそっくりだった。しかし、彼女の心まではロベルのものにはならず、やがて悲劇が起こる……。
『ペイン・アンド・グローリー』で賞レースを賑わせたのも記憶に新しいスペインの鬼才ペドロ・アルモドバルによるサスペンス。『マタドール<闘牛士> 炎のレクイエム』『アタメ』など彼の作品には狂気的な愛情を題材にした作品は少なくないが、なかでも本作はとりわけ鮮烈。
人体実験を行なう医師の執念はもちろん、監禁されている女性のゴムマスクとタイツ姿やうつろな存在感も強い印象を残す。ロベルを演じるアルモドバル作品の常連俳優で、初期の彼の作品でも何度かサイコなキャラを演じてきたアントニオ・バンデラスの怪演に注目。
『ナイトクローラー』
製作年/2014年 製作・出演/ジェイク・ギレンホール 監督/ダン・ギルロイ 出演/レネ・ルッソ
スクープ映像を過激演出!
ロサンゼルスで貧しい生活から抜け出そうともがく青年ルイスは、スクープ映像を売る報道カメラマンの仕事に目をつける。誰よりも早く事件現場に駆けつけて、衝撃的な映像を収めることがすべて。
ルイスは警察無線を傍受してスクープを射止め、スキャンダラスな映像が欲しいTV局に売りつけてはビジネスを拡大。やがて強盗殺人事件の現場に駆け付けたルイスは、このスクープをより大きなものにしようと、常軌を逸した行動に出る……。
フリーの報道カメラマンの暴走を、『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが鮮烈に体現した問題作。主人公ルイスは金になるニュース映像のためなら何でもする。映像の衝撃度を増すために”演出”を施したり、商売敵に罠を仕掛けて事故らせたり。
雇い人の事故死も、彼にとってはニュース映像でしかない。そして、視聴率にこだわるニュース番組のプロデューサーは喜んでそれを買い取る。主人公はもちろん、メディア全体がもはやサイコパスなのかもしれない!?
『ファニーゲームUSA』
製作年/2007年 製作総指揮・出演/ナオミ・ワッツ 監督/ミヒャエル・ハネケ 出演/ティム・ロス
爽やかそうな人には気をつけろ!?
オーストリアの異才ミヒャエル・ハネケが出世作『ファニーゲーム』を英語でリメイクした衝撃作。湖畔で休暇を楽しんでいた一家の別荘に、卵を分けて欲しいと訪ねてきた礼儀正しい青年。それは一家の悪夢の始まりだった。
青年ふたりは別荘に入り込んできて占拠。ゲームと称した拘束と暴力。夫は脚をゴルフクラブで砕かれて身動きができない。子供の、そしてみずからの命の危険を察した妻は必死の抵抗を試みるのだが……。
白いポロシャツをまとった青年ふたりが、爽やかそうに見えるのは、あくまで見かけだけの話。その正体は、いっさいの罪悪感を、また慈悲を抱くこともなく他人を痛めつけるサディストたち。
ゲームのように暴力を楽しみ、極限まで痛めつけて、つまらなくなったら殺してしまう。主人公一家だけでなく、近隣で脈々と被害者たちが続出していることにもゾッとさせられる。一見すると愛想はよいが、悪意の塊のような人間が隣にいるかも!?……そう思わせる怪作。
『アメリカン・サイコ』
監督/メアリー・ハロン 出演/クリスチャン・ベール、ウィレム・デフォー、ジャレッド・レト
マウンティングしてくる奴に注意を!
主人公パトリックは裕福な家庭に生まれ育ち、エリート街道を歩んで投資会社の副社長に上りつめた27歳の青年。ナルシスティックなまでに肉体をケアし、完璧でないことは許せないタチだ。
そんな彼の前に、より完璧に近い青年が現われたことから運命の歯車が狂いだす。嫉妬に駆られ、イラ立ちに突き動かされて、道で偶然出会ったホームレスを撲殺する。以来、殺人衝動は止まることを知らず、彼の周囲には次々と死体が転がっていく。
全米でベストセラーとなった小説を、演技派クリスチャン・ベールの主演で映像化。主人公パトリックのアイデンティティは、自分が誰よりも優れていると思うことにあり、ステイタスを追求し続け、他人を見下しては悦に入っている。
それだけなら、ただのイヤなヤツだが、優生思想も手伝って殺人の欲求が加速。他人の命を奪ってでも、優位に立っていたい。ある意味、究極のマウンティングといえるサイコパス。周囲には絶対いてほしくないタイプだ。
『ミザリー』
製作年/1990年 原作/スティーブン・キング 製作・監督/ロブ・ライナー 出演/キャシー・ベイツ、ジェームズ・カーン
熱烈なファンでも油断禁物!
人里離れた雪道で交通事故を起こし、脚を骨折して身動きがとれなくなった人気作家。彼を助けたひとり暮らしの地元の女性は、奇しくも彼の小説の熱烈なファンだった。大雪で外界と連絡を取る手段も断たれ、怪我が治るまで、作家は元看護士という彼女の世話になることに。
ところが、この女性は癇癪持ちであるばかりかストーカーの気もあり、雪山でポールが執筆していることも知っていた。やがて作家がお礼にと、発刊前の小説シリーズ最終巻の原稿を見せたとき、望んでいた結末とは違うことに激怒した彼女は狂気を加速させていく。
モダンホラーの旗手スティーブン・キングの小説を映画化したストーカー・スリラー。狂気の女性を怪演したキャシー・ベイツは本作でアカデミー主演女優賞を受賞したが、それも納得のなりきりぶりで、とにかく怖い。脚を怪我した作家が動けないのをいいことに小説の書き直しを命じ、脚が治りかけるとハンマーで殴って再び骨折させる鬼女。時おり見せる、機嫌のよい笑顔さえも怖くなる!
photo by AFLO