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CULTURE カルチャー

2025.09.12


日本代表の正ゴールキーパーとして、一時代を築いた【川島永嗣】自分を信じ続けて掴んだ守護神の座!

4度にわたるW杯でサムライブルーの守護神を担い、現在はジュビロ磐田で新たな戦いに挑んでいる川島永嗣。不可能と思われる状況を乗り越え続けてきたレジェンドが、日本代表のゴールマウスを守るチャンスを掴んだ一戦を語る。

サッカー選手 川島永嗣
1983年、埼玉県生まれ。浦和東高校卒業後、2001年に大宮アルディージャでプロキャリアをスタート。国外ではベルギーの強豪スタンダール・リエージュなど5つのクラブでプレイし、2024年にJリーグ復帰。日本代表では、国際Aマッチ95試合出場。

自国開催以外では初の決勝トーナメント進出で日本が沸いた、2010年のW杯南アフリカ大会。開催前の成績不振で縮んでしまっていたサッカー日本代表への期待を、大幅な戦術と選手変更による躍進で呼び戻し、初のベスト8進出まであと一歩というところまで迫ったこの大会で絶対的な信頼を獲得した選手の1人が川島永嗣だ。本大会前の予選での出場はなく、川口能活と楢崎正剛がスタメンを争っていた中で正ゴールキーパーの座を掴み、その後12年間にわたって日本代表のゴールマウスを守り続けた。そんな大役を任されるチャンスを掴んだ一戦、それは大会直前の5月30日にオーストリアで行われたイングランド代表とのテストマッチだ。

「当時は海外でプレイしたいという思いを抱きながらもなかなかチャンスを掴めず、日本代表でも出場の機会に恵まれない状況が続いていました。そうした歯痒さと戦っていた中でチャンスをもらい、現実的に大きな歯車が回りはじめた。あのイングランド戦は、そういった意味で大きな分岐点だったと思います」

代表メンバーに選ばれたものの控えに甘んじていた川島は、このイングランド戦で先発に抜擢されると、チェルシーの歴代最多得点者として名を馳せたフランク・ランパードのPKを阻止するなど強豪相手に好セーブを連発。本大会での正ゴールキーパーを任されるには十分な信頼と期待を得られる活躍を見せた。

「なかなか結果を出せなかった中でも自分を信じ、築き上げてきたものをゲームの中でしっかり発揮できた試合でした。イングランド代表は前線にウェイン・ルーニー、守備にはリオ・ファーディナンドもいてフルメンバーでしたが、余計なことは考えず自分がやるべきことをやろうという感じだったので、必要以上に緊張はしていなかったですね」

驚くことに、日本が沸いた後半11分のランパードのPK阻止はイメージしていたとおりのプレイだったという。

「試合に出ることは前日にわかっていたのですが、与えてもらったチャンスに対して自分がどう挑むべきなのかを事前の練習でいろいろ考えていました。その中でPKに関しても、もしその状況になったら誰が蹴るのかということで、ランパードだったらどれくらい自分が待ってどんなタイミングで跳ぶのかというのをなんとなくイメージしていたんです。実際にあの場面になったときにそのイメージと同じことが起きて、タイミングも全く同じで自分でもびっくりしました(笑)」

川島といえば、浦和東高校時代から練習の虫といわれ、“学校の正門は川島が開け、川島が閉める”と校内でいわれるほど自主練習に打ち込んだ努力の人として知られている。これまでも“成功するために、そのときなにができるか”を考えることの大切さを語り、それを実行することでチャンスをものにしてきた。

「10代の頃から世界で通用するレベルでプレイしたいと思い、ゴールキーパーとして自分がどういう選手になりたいのか、そのためにはなにが必要なのかということは常に考え続けてきました。そういった土台というか自分のフィロソフィーのようなものを持ち続けていれば、必ず形になっていくんだということは、このイングランド戦で強く感じましたね」

分岐点となった試合を経た2010年のW杯で守護神の座を掴んだ川島は満を持して欧州挑戦に乗り出し、ベルギーでは常に優勝を争う名門のスタンダール・リエージュでプレイ。全部で5つの欧州クラブで実績を残し、現在は14年ぶりに復帰を果たしたJリーグでジュビロ磐田のキャプテンを担っている。

「日本においても現代のサッカーは進化していて、ゴールキーパーにもゲームの一員としてより多くの仕事が求められます。今季は新しくハッチンソン監督が来て、攻撃的なスタイルを根づかせるという部分でスタートしました。なかなかうまくいかない時期もありましたが、今は監督が目指すところと自分がやるべきことをピッチで表現できている手応えを感じています。チームが攻撃的にいく中で、ディフェンスラインのケアをどれだけできるのかといったことなど、キーパーとして求められている役割は多岐にわたる。自分自身を進化させ続けるという意味では、本当にやりがいのある挑戦ができています。J1に上がるということだけでなく、ジュビロ磐田というクラブがJ1で優勝できる土台を作るという高い目標を課して戦ってきたいと思います」

アーティスト 田村大
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは10万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura

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※『Safari』10月号174〜176ページ掲載

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