クリス・パインが演じる、元軍人の孤独な戦いを描いた『ザ・コントラクター』
なんとなくタイトルに惹かれて、“掘り出しもの”の映画に出合う可能性もある。自分だけの発見をしたときこそ、思わず誰かになにかを伝えたくなる。今回はそんな1本だ。
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- 思わず誰かに伝えたくなる映画! vol.6
映画のタイトルを目にしたとき、あるいは耳にしたとき、内容はよくわからなくても、その響きが印象に残って、作品のイメージを想像してしまうことがある。この『ザ・コントラクター』も、アクション、さらにサスペンスの予感が漂ってくるタイトルではないだろうか。コントラクトの意味は“契約”。なにか重要な契約を決意した主人公が、予想もしなかった事態に巻き込まれ、決死の闘いに身を投じる……。この壮絶かつ切実な運命が『ザ・コントラクター』という言葉に凝縮されている。
有能な軍人だった主人公のジェームス(演じるはクリス・パイン)が、新たに選んだ仕事は、民間の特殊部隊と契約を交わした危険なミッション。ジェームスの能力をもってすれば、高額な報酬も確実に得られる。しかし、そんな降って湧いたような仕事が“おいしい”だけとは限らない。だからこそ映画としてドキドキの展開になだれ込む、というわけだ。
アメリカからベルリンへ向かい、生物兵器を奪い取ろうとするジェームスらのミッションは、究極の身体能力に最新テクノロジーや武器も駆使され、あのイーサン・ハントやジェイソン・ボーンを思い出す、激烈なアクションシーンも登場。緊迫感と興奮をストレートに体感させる。同時に、その背後にはジェームスの悲壮な思いが貫かれており、エモーショナルに胸を締めつけてくるのも事実。
アメリカ国家に命を捧げた軍人が、その見返りを受けられず、利用されるだけの人生になるなんて、そんな現実でいいのか? クリス・パインが、ジェームスの複雑な内面を表現。作品の本質とは別だが、やたら強調される彼の肉体は筋トレのお手本にもなりそう。そしてキーファー・サザーランドら実力派キャストが、ストーリーを予測不能にする名演。テーマに加え、俳優たちのインパクトにも圧倒される秀作だ。
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『ザ・コントラクター』
監督:タリク・サレー
出演:クリス・パイン、ベン・フォスター、
エディ・マーサン、キーファー・サザーランド
10月7日(金)より全国公開
配給:クロックワークス
Story
負傷が原因で特殊部隊から除隊をいいわたされたジェームスは、家族を養うため民間軍事組織での仕事を決意。かつての戦友マイクとともにベルリンへ向かった彼はスゴ腕チームを結成し、テロ組織が隠し持つ生物兵器を奪還するミッションに挑む。しかし何者かの罠によってジェームスとチームは命の危機にさらされる。
この2作で味わう!
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text : Hiroaki Saito illustration : Kaoru Sato