Aフレームの山小屋建築をモダンにリノベーション!
ビバリーヒルズの奥に渓谷があることはあまり知られていない。ハリウッドの巨匠監督も家を所有している地に、古いキャビン風の邸宅を購入し、リモデルした建築家が住む。山小屋を愛した哲学者に触発された“心の聖域”を覗いてみよう。
- SERIES:
- 西海岸リビング&インテリア! vol.26
Beverly Hills
カリフォルニア州ロサンゼルス ビバリーヒルズ
owner
アーシャ・マムーディ
建築家
採光窓と壁に収まる可動式ガラス窓で、明るいリビングルームに。ソファは〈B&Bイタリア〉で購入した、マリオ・ベリーニのデザインによる〈カマレオンダ〉。バルコニーの目隠しには米軍仕様カモフラージュネットを。
過去と現代を融合した“聖域”!
ゲスト用ベッドルームは白の家具で統一。正面奥にはカスタムメイドのガラス製クローゼット、右手はバスルーム。
アーシャ・マムーディ[Arshia Mahmoodi]
1969年イラン生まれ。5歳から米国で数年間暮らす。
イランの大学卒業後、1997年から米国カリフォルニア州LAに移住。
建築家歴7年。建築事務所〈アーシャ・アーキテクツ〉を経営している。
ビバリーヒルズの歴史はベネディクト渓谷からはじまったそう。山の保養地として開発され、狩猟小屋や山小屋などの名残りが見られるヨークム通りには、映画監督のジョージ・ルーカスやフランシス・フォード・コッポラなどが所有する小さめの家がずらり。イタリアの路地裏を思わせる風情がある。建築家アーシャ・マムーディが、この地を選んだ理由は「オークやカリフォルニア・ウォールナットやレッドウッド、シカやコヨーテなど多様な動植物が楽しめる。近隣の街とは異なる独自の微気候も魅力だから」。
1973年築の山小屋風の家を購入したのは2020年。山小屋で思索を深めた哲学者マルティン・ハイデガーに触発され、スイスの典型的なキャビンに憧れていたとか。リモデルのコンセプトは、過去からの重みを持つ構造に現代性を吹き込むこと。昔ながらの屋根や天井の特徴を残しつつ、空間の流れや繋がりをもとに複数あった部屋をひとつに変えた。
インテリアは「モノを増やさないミニマリズム」がモットー。家具はデザイン性に優れたものを厳選する。「透明感は“今この瞬間を生きる”というマインドフルネスを強化する」と自作した、ガラス製クローゼットも印象的だ。あなたにとって家とは? と問うと「単なる物理的シェルターではなく、心の聖域。ハイデガーのいう精神的な能力を養い、若返らせるために捧げられた空間」。建築家に宿る“哲学者の魂”が垣間見えた。
邸宅データ●敷地面積:0.3エーカー(約370坪)
●家の面積:1800平方フィート(約50坪)
●家の値段:300万ドル(1ドル151円換算で約4億5300万円)
●部屋数:6部屋(3寝室含む。バスルームは4室)。2階建て
●改築年:2024年
●建築家:アーシャ・マムーディ
●家族構成:1人
植物の眺めがよい庭は、ゆったりくつろげる場所。座り心地のいいオットマン付きソファは、ノエ・デュショフール=ローランスによる〈リーン・ロゼ〉。
庭に面した家主のベッドルーム。透明のガラス製クローゼットは自らデザイン。「『ドン・ファンの教え』の中で、“それぞれの場所にはエネルギーと活力の中心点であるユニークなスポットが存在する。幸福を育むために最も重要だ”と説いている。それを参考にした」。感銘を受けた本を、建築へのインスピレーションにしている。
北欧式にダイニングルームを兼ねたキッチンにして、好みの黒で統一。黒のミステリアスさが魅力だそう。電子レンジは〈フリッジデール〉、冷蔵庫は〈サムスン〉。
黒と白でまとめたバスルーム。シャワー室はドアを設置せずに、開放感たっぷり。天井に配した一直線のライトがアーティスティック。「洒落たインテリアは照明の使い方がポイント」だとか。
①キャットウォーク
高い天井を活用して、キャットウォーク風ラウンジを増設。「建築家としては最先端の空間を扱うが、自分の家は控えめで再生と再利用に注意を払う理想を体現した」とマムーディ。重厚な木造建築の伝統にモダンな要素を融合させた。アームチェアはパトリシア・ウルキオラのデザインによる〈ハスク〉で、〈B&Bイタリア〉で購入。
②シックなパティオ
トーマス・ヘザウィックがデザインした黒のスパンチェア〈マジス〉が存在感たっぷり。外と内が繋がるように可動式ガラス窓が壁に収まるように設計。
③真っ白なバスルーム
ゲスト用ベッドルーム横にある客用バスルームも白をメインに。シンクなどは高級家具をリーズナブルな価格で販売する〈ホーマリー〉で購入。
④環境に優しい庭
「水や養分に頼らずにたくましく生きるサボテンは、劣悪な環境条件に立ち向かう忍耐力と決意の証」とマムーディ。木々が生い茂る丘の眺めを楽しみながら、自宅の庭には水をあまり使わずに栽培できるサボテンを植栽。
⑤白でまとめた別棟
玄関の横にはワンルームのゲストハウス。〈イケア〉で注文したキッチン、リビングルーム、ランドリールーム付きベッドルームをコンパクトにまとめた。キッチンのアイランドカウンターは食事もできる仕様。入り口脇には小型クローゼットも設置。
⑥静寂な屋外ラウンジ
母屋とゲストハウスの共有スペースにもくつろげる庭を。チェアは〈CB 2〉で購入した〈アカプルコ・ブラック・エッグ・アウトドア・パティオチェア〉。黒が瞑想的な世界へと繋げる。
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雑誌『Safari』7月号 P43〜46掲載
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photo : Toshi Sakurai text : Yoko Fujimoto