『息もできない』
製作年/2008年 監督・脚本・出演/ヤン・イクチュン 出演/キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク
借金取りと女子高生の魂の結びつきに心が震える!
粗暴な借金取りのサンフン(ヤン・イクチュン)は、勝気な女子高生・ヨニ(キム・コッピ)と出会う。それぞれ心に傷を負った2人は強く惹かれ合い、魂と魂で結ばれていくが……。父親への激しい怒りと憎しみを抱えながら生きる男が、シンパシーを覚える相手との時間を経て自らの傷を癒していく。
主演も兼任したヤン・イクチュン監督による力強い演出の中で荒々しい描写が続くが、やがて見えてくるのは一筋の光。ボロボロの日常を送るサンフンとヨニは現状を抜け出し、幸せをつかみ取ることができるのか? まさに、息もできないギリギリのラインを進む展開が大勢の心を震わせ、各国の映画祭を席巻した。
『傷だらけのふたり』
製作年/2014年 監督/ハン・ドンウク 脚本/ユ・ガビョル 出演/ファン・ジョンミン、ハン・ヘジン、クァク・ドウォン、チョン・マンシク
異なる世界に生きてきた2人の運命は!?
高利貸しの取り立てをするテイル(ファン・ジョンミン)は、昏睡状態に陥った男の借金を娘のホジョン(ハン・ヘジン)に肩代わりさせることに。だが、テイルはホジョンにたちまち一目惚れ。借金を帳消しにする代わりに自分とデートをするよう、ホジョンに持ちかけるが……。
武骨で粗暴なチンピラが、堅気の銀行員に恋心を寄せるラヴストーリー。好き勝手に生きてきた男がピュアな想いを実らせようと、たどたどしく奮闘していく。異なる世界に生きてきた2人の関係の行方を追った展開に、心を揺さぶられる観客が続出。名優ファン・ジョンミンが切なくも愛おしい男泣きを見せ、見る者の涙も誘ってくる。
『オアシス』
製作年/2002年 監督・脚本/イ・チャンドン 出演/ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、リュ・スンワン
轢き逃げ犯と被害者の娘の純愛に涙する!
轢き逃げ死亡事故を起こして服役し、出所したばかりのジョンドゥ(ソル・ギョング)。ある日、事故の被害者宅を訪れた彼は、被害者の娘であり、重度の脳性麻痺を持つコンジュ(ムン・ソリ)と出会う。社会に適応できないジョンドゥと日常生活もままならないコンジュはやがて惹かれ合い、確かな愛情を育んでいくことになるが……。
『ペパーミント・キャンディー』などの名匠イ・チャンドンが手掛け、ベネチア映画祭で監督賞などを受賞。はたから見れば特異だが、当人たちにとっては紛れもない純愛が見る者の価値観を大きく揺さぶり、問いかけてくる。主演を務めた実力派2人の魂のこもった熱演も見事。
『声もなく』
製作年/2020年 監督・脚本/ホン・ウィジョン 出演/ユ・アイン、ユ・ジェミョン、ムン・スンア
誘拐犯と少女の奇妙な絆に感動!
犯罪組織の下請けとして、死体処理を黙々とこなしながら生きるテイン(ユ・アイン)。幼い妹と2人で小屋のような家に住む彼は、身代金目的で誘拐された少女・チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることに。だが、トラブルが重なった上に、チョヒの親から身代金が支払われる気配はなく……。
社会の底辺で生きる男と家族に見放された少女が、疑似家族のような生活を始めるヒューマンストーリー。口のきけない主人公・テインの存在、彼と奇妙な絆で結ばれることになる少女、その両者の思いに胸をえぐられるラストが、弱き者たちの孤独を浮き彫りにする。独特のユーモアと切なさが入り混じる語り口も出色。
『嘆きのピエタ』
製作年/2012年 製作総指揮・監督・脚本/キム・ギドク 出演/チョ・ミンス、イ・ジョンジン、ウ・ギホン、カン・ウンジン
暴力的な描写と衝撃のラストに驚愕
極悪非道な手口で借金を取り立てることから、債務者たちに恐れられているガンド(イ・ジョンジン)。身寄りもなく、孤独に生きてきた彼の前にある日、母親だと名乗るミソン(チョ・ミンス)が現われる。当初は疑念を抱き、徹底して邪険に扱うガンドだったが、いつしかミソンの存在を受け入れるようになり……。
生まれて初めて母親の愛を知った男と、彼に無償の愛を注ぐ女のねじれた関係を描いていくヒューマンストーリー。監督を務めたキム・ギドクならではの痛々しく暴力的な描写と予想の斜め上を行く展開、衝撃のラストに心を疲弊させられる。ベネチア映画祭では審査員の支持を集め、金獅子賞を受賞した。
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