文字盤やベゼルなど、腕時計の正面で中心となる部分を一括して“フェイス”と呼ぶ。つまり、人間で言うところの“顔”。時計のフェイスはデザインの要であり、機能性と同様、実力や魅力の重要な指針となる。
そのフェイスにおいて見逃せない要素が、カラー。時計がファッションの一部であることを踏まえると、フェイスの色味や質感などはれっきとしたスペックと言っても過言ではない。実力派の時計が麗しい新色を纏ったとしたら、これはもうニュースに違いない。
〈パネライ〉の人気コレクション、“ルミノール ドゥエ”の最新作PAM01424は10.7㎜厚のスリムなケースに新色のバーガンディダイヤルを採用。バーガンディはフランスワインの名産地“ブルゴーニュ”の英語名。果たしてこのモデルのダイヤルは熟成した高級ワインのような深みと精彩を含みながら、美しいグラデーションを描くサンブラッシュ仕上げが上品な色みをより魅力的に見せている。
さらにこのモデルの文字盤は2枚の文字盤を重ね合わせたサンドイッチ構造となっており、インデックス部分を切り抜いた上層の文字盤から、スーパールミノバ夜光を塗布した下層の文字盤が覗き、クリアなコントラストによる視認性や審美性の高さもポイント。クッション型のケースや特許取得のリューズガードなど、象徴的なデザインと相まってドレッシィな機能美ともいうべき、同社の真骨頂が発揮されている。
〈パネライ〉は1860年から続くイタリアの老舗時計ブランドで、当初はフィレンツェの時計店からスタートし、当地で時計学校としても機能した。まごうかたなき老舗なのだが、世間がこのブランドを認知するのはずっと後。1990年代に入ってからだ。〈パネライ〉は創業ほどなく技術の高さを買われてイタリア海軍のサプライヤーとなり、多くのダイバーズウォッチを手がけたものの、これらは軍事機密のため門外不出。1993年に正式に民生用のラインナップを発表するまで、同社はいわば幻のブランドだった。
巷間に打って出た〈パネライ〉は市場のニーズを機敏にとらえ、多彩なモデルを展開。根底には軍用モデルの開発で培った機能性や耐久性。デザインは機能性ありきのシンプルな美しさが宿り、そこに日常使いを意識した付加機能やファッション性などが加味された。
その、端的な集大成とも言える存在が、2016年に誕生したルミノール ドゥエ。〈パネライ〉にはルミノールとラジオミールという2つの代表コレクションがあるが、ルミノール ドゥエは前者に紐づく新機軸で、往年の軍用ダイバーズの直系として多様なバリエーションを展開するルミノールの中でも、もっともデイリーシーンに軸足を寄せた存在として注目されている。
ポイントは、新規にデザインされたケース。厚みが従来のルミノールより約40%も薄くなり、持ち前の、精悍である種の無骨さも漂わせる軍用ダイバーズの面影を巧みに生かしながら、よりモダンに、エレガントにソフィスティケートされている。スリムゆえフォーマルな装いでもシャツの袖口に引っかかることもなく所作までが美しくスムーズになる。民生用モデルとしてのベクトルが、いよいよ純度を増して結実しているのだ。
ケース径42㎜、自動巻き、SSケース、アリゲーターストラップ、5気圧防水。95万3700円。(オフィチーネ パネライ)
〈パネライ〉は、民生用モデルの進化・拡充の核として2005年に自社製ムーブメントを発表。以来多様なバリエーションを展開しているが、PAM01424に搭載される自社製のCal.P.900は自動巻き式で、9時位置にスモールセコンド、3時位置にデイト表示を搭載し、フル巻き上げの状態から約3日間連続で駆動する。このモデルのエレガンスは絶妙なシンプリシティに依拠しているが、あくまで高精度なムーブメントの、簡潔な機能の構成がその下支えともなっている。
ブラックのアリゲーターストラップは工具不要で手軽に脱着できる“PAMクリックリリース”を採用。交換用のストラップを揃え、コーディネートに合わせて“着せ替える”のも愉しい。ちなみにネーミングの“ドゥエ”はイタリア語で“2”の意味。軍用ダイバーズという特異な出自から、現代の華やかなライフスタイルに馴染む汎用性を獲得した“新境地”をほのめかしている。
●オフィチーネ パネライ
URL:panerai.com