『恋はデジャ・ブ』
製作年/1993年 監督・脚本/ハロルド・ライミス 出演/ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル、クリス・エリオット、スティーヴン・トボロウスキー
延々と2月2日を繰り返す!
タイムループとは、何度も同じ時間が繰り返され、その“ループ”から抜け出せないこと。しかし繰り返すことで運命が変わっていき、新たな何かが見えてくる……。非現実的なシチュエーションながら、映画にはぴったりの題材。ジャンルも意外なほど多岐に渡っている。そのタイムループものの中で“お手本”的な作りで長年愛されているのが『恋はデジャ・ブ』だ。春の到来を告げる2月2日のお祭り、グラウンドホッグデー(これが本作の原題)を取材するため、ペンシルベニア州の町を訪れた人気気象予報士のフィルが、原因不明のタイムループにハマり込んでしまう。目を覚ますと、前日の朝に戻っており、フィルは延々と2月2日を繰り返す。それはフィルだけの現象で、やがて彼は前日の失敗をやり直したりして、思いのままに運命を変えていく。
仕事仲間の女性との関係を接近させるなど、身近な出来事について“前日をリセットする”設定なので、誰もが感情移入しやすいのがポイント。延々と終わらないタイムループに嫌気が差しながら、開き直って新たな趣味を見つけるなど、フィルの心の変化にいちいち納得させられる。フィル役のビル・マーレイが、おなじみのとぼけた味わいを全開。監督のハロルド・ライミスは、マーレイと『ゴーストバスターズ』で共演した盟友だ。“人間の幸福とは何か?”という深いテーマも込められつつ、オチのつけ方が軽やかだったりして、とにかく観ていて心地いい傑作!
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
製作年/2014年 原作/桜坂洋 監督/ダグ・リーマン 出演/トム・クルーズ、エミリー・ブラント、ビル・パクストン、ブレンダン・グリーソン
繰り返すたびに強くなる描写が面白い!
執拗に繰り返されるタイムループを、アクション大作で巧妙に取り入れたのが、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。原作が日本の桜坂洋のライトノベルというのも、公開時に話題となった。舞台は近未来の地球。強大な戦力を有する侵略者“ギタイ”によって、人類は滅亡の危機に瀕していた。軍の広報担当だったウィリアム・ケイジ少佐が最前線に送られるも、戦闘経験がなかったため、あっけなく死亡。しかし次の瞬間、彼が目を覚ますと出撃の前日になっていた。そしてこの“ループ”が続くことになる。
兵士として未熟だった主人公が、繰り返される戦闘でどんどん技術や瞬発力、さらに精神力まで磨かれていく。タイムループの“効能”が、ここまで実感できる作品も珍しい。ウィリアムがループする理由も、劇中ではっきりと描かれており、この点も異色。トム・クルーズが演じているので、ウィリアムが強くなっていくプロセスには説得力もあり、むしろ初期段階の“弱さ”がトム・クルーズ作品としては新鮮かも。かつて同じ経験をした軍曹のリタとウィリアムの関係性が、ループの繰り返しとともに変化していく様子や、戦闘用の機動スーツ、ギタイを模したトレーニング用のマシンなど、SF映画として秀逸なガジェットデザインも見どころ。
『ハッピー・デス・デイ』
製作年/2017年 監督/クリストファー・B・ランドン 脚本/スコット・ロブデル 出演/ジェシカ・ローテ、イズラエル・ブルサード、レイチェル・マシューズ
誕生日に訪れる死をどう切り抜ける!?
タイムループという設定は、それだけでスーパーナチュラルなので、映画のジャンル&展開も極端な方がマッチする。そんな法則を証明するのが本作。ハッピーバースデイを文字ったタイトルから想像できるように、誕生日に“死”が訪れ、それが繰り返されるという、なんとも恐ろしいストーリー。しかも襲ってくるのは、ベビーのお面を着けた謎の殺人鬼。それなのに全体のノリは青春コメディといバランス感覚が絶妙で、異色のサプライズを味わえる快作だ。
主人公のテレサ(通称:ツリー)は、寮で生活する大学生。すべてにおいて自分中心の性格で、恋愛も自由奔放。誕生日を迎えた朝も、男子学生の部屋で目を覚ました。その夜、ツリーは殺害されるのだが、気がつくと前日の朝、同じ学生の部屋というシチュエーション。そこから“毎日殺される”最悪なループに突入する。何とか死を回避しようとするツリーの抵抗。それを上回る相手の策略。真犯人を探す奮闘。これらがノンストップで続くうえ、笑えるシーンも絶妙なスパイスになって飽きさせない。最初は“イヤな女”だったツリーを、いつしか観ながら応援したくなっていくのも本作の魅力。タイムループの謎は続編『ハッピー・デス・デイ 2U』まで持ち越されるので、2作セットで観る楽しみも!
『パーム・スプリングス』
製作年/2020年 監督/マックス・バーバコウ 脚本/アンディ・シアラ 出演/アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、J・K・シモンズ、カミラ・メンデス
2人でタイムループを経験する!
タイムループものは基本的に、1人の主人公が何度も時間を戻され、何も知らない周囲との関係を変えていくという流れ。しかし本作は、2人がタイムループを経験するというのが特殊! とある結婚式で出会い、意気投合したサラとナイルズ。式を抜け出した2人に突然、弓矢が飛んできてナイルズの肩に命中。サラは彼と逃げ込んだ洞窟で光に包まれる。そして彼女は目覚めると、再び結婚式の朝だった。当然のことながら再びサラとナイルズは出会うのだが、そこで衝撃の真実が発覚する。すでにナイルズは数えきれないほどその日を繰り返す、タイムループの“大ベテラン”だったのだ……。
ナイルズの言動が示すように、本作の主人公たちはタイムループする現実を楽しみはじめる。たしかに永遠に続けていれば、年もとらないし、将来の心配をしなくて済む。その意味で最高にポジティブ&ハッピーなタイムループ映画と言えそう。サラとナイルズの関係性は微妙に変わっていくので、ラヴコメとして受け止めてもいい。タイトルのパーム・スプリングスは、カリフォルニア州の“砂漠のオアシス”とも呼ばれるリゾート都市。プールやビリヤード、小型機の飛行などラグジュアルな遊びもドラマに盛り込まれ、ちょっとした旅行気分を味わえるオトクな一作である。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』
製作年/2013年 監督・脚本/リチャード・カーティス 出演/ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー
タイムループ+タイムトラベルの極上作品!
何度も同じ時間を繰り返す。しかも自分ではコントロールできず、そこから抜け出すのは難しい。それがタイムループの原則。そこに“変化球”的なアレンジを加えたのが、この『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』だ。主人公のティムは、何をやってもイマひとつのさえない日常を送っていたが、先祖から受け継いだタイムトラベルの能力がある事実を21歳で知らされる。父から“より良い人生のために、それを使え”と諭された彼は、最愛の相手を見つけるべく何度も時間を戻ることに。
妹の友人シャーロットを相手にタイムトラベルを試した後、やがて恋の“本命”となる女性、メアリーとの出会いから、ティムは自分の能力をフル稼働。何か失敗すると、やり直すためにその時間に戻るというループも繰り返すが、ここで大きな問題も発生。過去に戻って行動を変えてしまうと、その後の運命も変わるという『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などと同じ状況になってしまうのだ。本作はタイムループものとタイムトラベルものの“おいしさ”をブレンドした構造と言っていい。いろいろなルールが整理されてくる後半には、意外なほどエモーショナルな展開も用意され、ティムが知る人生の大切さが、こちらの心に響いてくる。キャストではシャーロット役のマーゴット・ロビーに注目。ブレイク直前の原石の輝きに魅入ってしまうはず!
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