【まとめ】秋の夜に鑑賞したい傑作サスペンス映画15選!
『Safari Online』でこれまで配信してきたサスペンス映画を厳選してご紹介!
『カンバセーション ・・・盗聴・・・』
製作年/1974年 監督/フランシス・フォード・コッポラ 出演:ジーン・ハックマン、ジョン・カザール
盗聴屋が知った男女の運命とは?
オスカー獲得した『ゴッドファーザー』を太陽とするなら、その直後にコッポラが手掛けた本作はまるで月のようにミステリアスな光を放つ一作だ。男の職業は盗聴屋。頼まれた仕事なら何でもこなし、決して細かな事情に踏み込むことはない。だが今回の一件は違った。公園で密会する男女をガンマイクで盗聴し、内容の解析を進めるうちに彼は、男女が誰かに命を狙われているのではないかというパラノイアを膨らませはじめる。果たしてその真相は……。
もともとアントニオーニ監督作『欲望』やヘルマン・ヘッセの小説などから影響を受けて着想した本作。製作準備中にウォーターゲート事件が勃発し、スタッフ一同、フィクションが現実化したかのような衝撃を受けたとも言われる。ちなみにジーン・ハックマンはこれとよく似た役柄で24年後、『エネミー・オブ・アメリカ』(1998年)に登場。盗聴の特殊技能や鉄網だらけの仕事場、半透明コートなど、随所に目配せらしきものが垣間見られる。ストーリー的には異なるものの、どちらも鑑賞すれば楽しみ方が2倍に広がる。
『ミシシッピー・バーニング』
製作年/1988年 監督/アラン・パーカー 出演:ジーン・ハックマン、ウィレム・デフォー
骨太な視点で激動の時代を描く一作!
1964年、ミシシッピー州でアフリカ系の青年と公民権運動家らが行方不明になり、後に射殺体で発見された事件を基にしたサスペンス。これに対処すべくFBIが送り込んだのは、ウィレム・デフォー演じる若手エリートと、ジーン・ハックマン演じるベテラン捜査官だ。片や北部出身の理想に燃える男で、片や南部出身でこの地の社会や人々の心理も知り尽くした男。このなかなか噛み合わないタッグぶりが物語を力強く加速させる。
当時はアフリカ系アメリカ人の権利獲得のため公民権運動が激しさを増していく時代だが、それに対してKKKなどの過激な差別主義者たちは猛烈に反発。舞台の街では保安官までもがその古くからの考えに固執し、秘密を漏らした者には肌の色に関わらず容赦なき制裁が振るわれていく。度重なる暴力、殺人、放火。それに対応してFBIからは更なる大要員が配備され、さながら戦争のごとき“大炎上”へと転じていくさまは壮絶だ。この事件に出口はあるのか。鍵を握るヒロイン役として、若手時代のフランシス・マクドーマンドが好演しているのも見逃せない。
『羊たちの沈黙』
製作年/1991年 原作/トマス・ハリス 監督/ジョナサン・デミ 脚本/テッド・タリー 出演/ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン
クローズアップ映像にスリルが倍増!
若い女性を狙った猟奇連続殺人事件が発生。FBI候補生クラリスは犯人像の手がかりを求めて、獄中の精神科医レクターを訪ねる。レクターは天才的な頭脳を持つ一方で、人を殺してその内臓を食べた猟奇犯罪者でもあった。クラリスは彼と面会を重ね、“バッファロー・ビル”と呼ばれる犯人に近づいていく。その頃バッファロー・ビルは新たな標的として、上院議員の令嬢を拉致・監禁していた……。
サイコスリラーのブームの先駆けたとなった、おなじみのアカデミー賞受賞作。トマス・ハリスのベストセラー小説を、ジョナサン・デミ監督は濃密な構成で映像化。とりわけ、クローズアップのインパクトは大きく、クラリス=ジョディ・フォスターとレクター=アンソニー・ホプキンスの顔を交互にとらえたドアップの映像をはじめ、絵的にドキドキさせられる場面は多い。続編『ハンニバル』や、前日談『ハンニバル・ライジング』と併せて、是非!
『ゆりかごを揺らす手』
製作年/1992年 監督/カーティス・ハンソン 出演/アナベラ・シオラ、レベッカ・デモーネイ、アーニー・ハドソン
夫を亡くした妻の復讐劇にゾッとする!
『ミザリー』(90)、『氷の微笑』(92)など、過去に類をみないヒロインが登場するサスペンスやスリラーがブームとなっていた1990年代の初め。この1992年の映画も、主人公の恐ろしさが全世界を震え上がらせた。発端は、ある産婦人科医の患者に対するセクハラ騒動。その患者、クレアの訴えで窮地に立たされた医師は自殺。ショックで医師の妻ペイトンも流産してしまう。やがてクレアの家にベビーシッターが雇われる。そのベビーシッターこそ、ペイトンだった。クレアに対する信じがたい復讐劇がはじまる。
無垢な赤ちゃんが眠るゆりかご。それを揺らす手の正体は……という物語。喘息の持病があるクレアに発作を起こさせるなど、ペイトンの行動は強烈にエグいのだが、クレア側も長女エマの機転などで対抗。壮絶なバトルの要素も呈していき、終盤は肉弾戦にまで発展し、呆然とさせられる。完璧に“悪女”のペイトンなのだが、赤ん坊であるクレアの息子に自分の母乳を与えるなど、母性を失った悲しみも抱えているところがポイント。基本は戦慄のスリラーながら、切ない後味に引きずられる人も多いことだろう。
『セブン』
製作年/1995年 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ
不穏な空気感にハラハラする!
“GLUTTONY=暴食”として殺された肥満の男、“GREED=強欲”として殺された悪徳弁護士……。キリスト教の“七つの大罪”をモチーフにした猟奇連続殺人事件を追うことになった退職間近の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と、若手刑事のミルズ(ブラッド・ピット)。ジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー)を名乗る犯人が自首してきたが、“七つの大罪”の残るふたつ“ENVY=嫉妬”と“WRATH=憤怒”の死体はまだ発見できていない。取引を持ちかけたジョンは、サマセットとミルズをある場所に連れて行き……。
予測不可能な意外すぎる展開、彩度の低い映像で感じさせる不穏な空気、カイル・クーパーが担当した斬新なタイトルバックとエンドロール。さまざまな要素が話題となった傑作サスペンスで、一躍デヴィッド・フィンチャーの名を知らしめた。ブラッド・ピットはワイルドと美しさが同居した佇まいや、ラストでの衝動と決断の一連のシーンなど、キャリア初期の中でもベストアクト! 蛇足だが妻役のグウィネスとは本作をきっかけに交際した。
『黙秘』
製作年/1995年 監督:テイラー・ハックフォード 出演:キャシー・ベイツ、ジェニファー・ジェイソン・リー
変幻自在、キャシー・ベイツの存在感に唸る!
米メイン州の屋敷で死亡事件が発生。現場で鈍器のようなものを振り上げる姿を目撃されたメイドが容疑者として浮上する。その中年女性は、かつて夫が死亡した際も容疑をかけられており……。あらゆる状況から見て彼女が怪しいのは明らかだが、演じるのが『ミザリー』で強烈なイメージを残したキャシー・ベイツというのも、先入観を強める一つの大きな要因だ。その結果、我々は物の見事に騙され、ラストではまさかの胸揺さぶる熱い感動すら押し寄せてくるのだから、これは本当に油断も隙もない映画である。
スティーヴン・キングの原作小説を脚色したのは、有名劇作家の息子であり、当時脚本家として駆け出しだったトニー・ギルロイ。今や『ボーン』シリーズの脚本やSWドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』のクリエイターとしても知られる彼だが、本作ではフラッシュバックを巧みに使い、過去と現在をスリリングに併走させながら女性たちの人間ドラマをより深みあるレベルへ昇華させている。いま見直しても語り口に無駄がなく、非常に“技あり!”な一本だ。
『ファーゴ』
製作年/1996年 製作/イーサン・コーエン 監督/ジョエル・コーエン 出演/フランシス・マクドーマンド、スティーブ・ブシュミ
寒さは判断力を失わせる?
米ミネアポリスで、多額の借金に悩むカーディーラーが、妻の偽装誘拐を画策。チンピラコンビを雇い、彼女を誘拐させて、富裕な義父から身代金を巻き上げようとする。ところがチンピラコンビが犯行中、目撃者らを殺害したことから計画が狂い始めた。妊娠中の保安官マージは丁寧な捜査で、少しずつ事件の真相に迫っていく。一方、カーディーラーやチンピラコンビは不測の事態によって追いつめられ、図らずも惨劇を広めてしまう。
米映画賞を席巻した、鬼才コーエン兄弟の秀作サスペンス。舞台となるミネアポリスは、真冬には気温が氷点下より上がることが稀で、当然降雪量も少なくない。そんな極寒の中で物語は展開。雪原に死体が転がり、真っ白な大地は鮮血に染まる。犯罪に手を染めた人々が暴走する物語は、緊張感とブラックユーモアに彩られ目が離せない。彼らを狂気に追い込んだのは、それぞれの欲望に加え、判断力を失わせる寒さが影響しているのかもしれない。
『マルホランド・ドライブ』
製作年/2001年 監督・脚本/デヴィッド・リンチ 出演/ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、ジャスティン・セロー
ハリウッドの深い闇を描く!
自動車事故によって記憶を喪失し、とある留守宅に迷いこんだ女性。そこはとある女優の家だった。その姪であり、叔母に憧れて上京してきたベティは、リタと名乗るこの女性に同情して、彼女の記憶探しに協力することに。謎を解くカギは、リタがふと思い出した“ダイアン・セルウィン”という女性の名前。ベティは映画のオーデション通いのかたわら、調査を進め、一方でしだいにリタに魅了されていく。その先には、驚がくの事実が……。
ロサンゼルスの名所といえば、何といってもハリウッド。この映画の都に、『ツイン・ピークス』でおなじみの奇才デヴィッド・リンチが切りこんだ。マルホランド・ドライブは実在する山道で、LAの夜景を見下ろすことができるが、本作は見据えるのはその美しさではなく、むしろ深い闇。物語はシュールかつ難解だが、人々の夢を吸い寄せ、欲望が絡み合うハリウッドの、魔物のような側面を感じてしまうに違いない。
『ゾディアック』
製作年/2007年 原作/ロバート・グレイスミス 監督/デヴィッド・フィンチャー 脚本/ジェームズ・バンダービルト 出演/ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.
“容疑者と地下室で二人きり”という恐怖!
1969年の米サンフランシスコで、残虐な殺人事件が続発。現地の新聞社に送られてきた声明文により、正体不明の犯人は“ゾディアック”と呼ばれ、恐れられるようになる。刑事や記者が事件の調査に当たり、容疑者も浮かび上がるが、解決には至らなかった。一方、新聞社の風刺画家グレイスミスは事件に興味を抱き、独自の調査を熱心に続けた結果、ある怪しい人物に行き当たる。
ゾディアック事件として知られる実際に起こった未解決連続殺人事件の謎に、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・ファンチャー監督が肉迫。記者や刑事ら、事件に憑かれていくことで疲労を募らせる人々の心理に焦点を絞る。一方で、グレイスミスが容疑者らしき人物と地下室でふたりきりになる場面など、緊張感にあふれた見せ場も。ジェイク・ギレンホールやロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロら演技派俳優たちの競演も見どころだ。
『ブラック・スワン』
製作年/2010年 原案・脚本/アンドレス・ハインツ 監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、ウィノナ・ライダー
ヒロインが闇に落ちる姿に衝撃を受ける!
真相がわからずハラハラさせるサスペンス。そして、背筋も凍るようなシーンが登場するスリラー。両方の要素をハイレベルで合体した作品は少ないが、『ブラック・スワン』はそんな貴重な一本だ。NYの一流バレエ団に所属するニナは、次回公演『白鳥の湖』の主役候補に上がっていた。美しく純粋な白鳥と、官能的に相手を誘惑する黒鳥を一人で演じ分けるという難役だが、演出家はニナの隠れた才能に気づいて抜擢。しかしリハーサルがはじまり、役に没頭しようとするニナは不可解な現象に見舞われるように……。
主役を踊るプレッシャー、代役に選ばれたライバルのダンサーや演出家との悩ましい関係などから、ニナは幻覚や妄想に襲われる。それが一瞬の映像で表現されたり、かなりダークな描写だったりと、さまざまに駆使されるので、多様な恐怖を味わう感覚。なかでもニナの肉体が白鳥と一体化するビジュアルは生々しくて衝撃的! 現実と非現実がひとつになるクライマックスは、本作でアカデミー賞主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマンの狂気ともいえる熱演に圧倒されるはず。いま何かと話題のセクハラ、パワハラ問題も取り入れており、その部分もスリリング。
『ルート・アイリッシュ』
製作年/2010年 監督/ケン・ローチ 出演:マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ
知られざる”戦場の真実”が胸に突き刺さる!
バグダッド中枢部から空港へと延びる道を”ルート・アイリッシュ”と呼ぶ。この世界で最も危険な場所で、民間軍事会社スタッフの親友はなぜ命を落としたのか? 自らもかつて同じ仕事を担っていた主人公が、人脈を伝って、産業の闇を暴き出そうとするーーー。ケン・ローチ作品といえば英国内の労働者階級、貧困、社会問題などに焦点を当てた作風で知られるが、本作ではリヴァプールを舞台にしながら当地とイラク戦争とを一直線につなぐ優れた社会派サスペンスに仕上がった。
核となるのは民間軍事会社の存在だ。正規の軍隊とは異なる同社のリクルートによって労働者階級の英国人たちが戦地に派遣され、そこで大きなリスクに晒され、トラウマを抱え、時には亡骸となって無言の帰国を遂げる。しかも最大の皮肉は、こういった働きが戦争を抑制するどころか、軍事産業をさらに根強く発展させ続けるということだ。ドラマとしての緊迫感を高めつつも、こうした渾身の告発が胸に突き刺さる一作である。
『誰よりも狙われた男』
製作年/2014年 監督/アントン・コービン 出演/フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス
複雑化した諜報戦の内幕を描く!
ジョン・ル・カレ原作による激渋なスパイ映画。かつて9.11テロの実行犯らが拠点にしていたとも言われるハンブルグを舞台に、諜報組織内のライバル同士やCIAらが繰り広げる”新時代の勢力争い”をジリジリと焼け焦げるような筆致で描く。起点となるのは、この地にふらりと流れ着いたイスラム系チェチェン人の若者。どうやら彼は莫大な遺産を相続しているらしく、彼を泳がせて資金の流れを辿れば隠れたテロ計画を炙り出せるかも……そう画策するベテラン諜報員バッハマンだったが、事態は思いもよらない力学によって内側からことごとく崩れ落ちていく。
名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最晩年作品としても名高く、タバコをくゆらせ、相手を出し抜き、焦燥に駆られ、笑顔を浮かべつつ刃のような言葉を突きつける姿が、まさにリアルなスパイとしての凄みを漂わせる。悪者は一人も登場しない。誰もがより良い世界を望んでいる。なのに周囲の誰一人として信用できず孤独は増すばかり。暗闇の中、おぼろげな出口を求めてさまよう、玄人好みの一作である。
『ネオン・デーモン』
製作年/2016年 原案・監督・脚本/ニコラス・ウィンディング・レフン 出演/エル・ファニング、キアヌ・リーヴス、カール・グルスマン
嫉妬と妬みがジワジワとやってくる!
モデルになる夢を追い、ロサンゼルスにやってきた少女ジェシー。モーテル生活をおくりながらモデル事務所との契約にこぎつけ、敏腕カメラマンに見出されてチャンスをつかんだ彼女は。事務所の先輩である売れっ子モデルたちを差し置いて、ファッションショーのトリに抜擢される。華々しい成功はジェシーに自身の美ぼうを自覚させるに至った。だが、一方ではそんな彼女を妬んだ者たちの恐ろしい策略が……。
『ドライヴ』の鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンがファッション業界の狂気に切り込んだ衝撃作。ヒロインが抱く成功への渇望や、見知らぬ地での不安、それらが自信や傲慢へと変わるさまを見据える。一方では、嫉妬という他者の激しい感情があり、それらが絡み合って突入するクライマックスは弱肉強食の冷酷な世界を象徴するかのようで、ただただ壮絶。キアヌ・リーブスが、何を考えているかわからない不気味なキャラで出演している点にも注目。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
製作年/2020年 製作/マーゴット・ロビー 製作・監督・脚本/エメラルド・フェネル 出演/キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー
世の病巣をあぶり出す傑作!
主人公キャシーは医大で優秀な成績を収めていたものの、ある事件が原因となって中退し、カフェで店員をしている。ある事件とは、彼女の親友で、主席の成績を収めていた同級生がパーティのさなかで酔ったあげく、男子学生にレイプされたこと。カフェにやってきた当時の男子学生と偶然、再会したキャシーは彼との恋愛関係を育む一方で、レイプの主犯者の情報を集め、傷ついて世を去った親友の復讐に乗り出していく……。
ひとりの女性の復讐が、男性優位社会への抵抗へとつながっていく社会派リベンジムービー。成績優秀な女性に対する男性のやっかみや、それを解消するためのレイプ、それを隠ぺいするための権力、結局は女性にバカでいてほしい男権……といった社会構造に切り込み、世の病巣をジワジワとあぶり出す。現実を鋭く見据えたまなざしや、それを娯楽映画の枠に落とし込んだつくりが評価され、米アカデミー賞で5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。
『ザ・メニュー』
製作年/2022年 監督/マーク・マイロッド 出演/レイフ・ファインズ、アーニャ・テイラー=ジョイ
これは新感覚!予測不能のダークで豊潤な味わい
美食家のタイラーと同伴者のマーゴは、他のゲストたちと共に専用船に乗って高級レストランへ到着する。なかなか予約の取れないこの店はシェフ、ジュリアン・スロウィックのこだわりのすべてを表現した、まるで要塞のような場所。提供されるディナーは一品一品にストーリーがあり、シェフの理念とこだわりが詰まったものばかり。さすが伝説のシェフ……と誰もが感心する中、徐々にその内容は異様なものへと転じ、ついには脱出不可能の恐怖のメニューへと変わりゆく。
こんな常識破りなサスペンス・ホラー見たことない! そもそも脚本家が新婚旅行の中でノルウェーの孤島レストランを訪れたことが着想のきっかけらしいが、本作の根底にあるのは”与える者”としての情熱や理念を粉砕された者の怒りや哀しみであり、金や権力さえあれば何事もまかり通ると考えている人々や消費社会への復讐劇とも言えるのかも。いやいや、まずは小難しいこと抜きにしてご来店を。あなたの食の概念が覆ること請け合いだ。
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photo by AFLO