人気俳優の最期の演技が胸を衝く!『マ・レイニーのブラックボトム』
これからの活躍を期待されながらも、早すぎる死を迎えたスターは、伝説として語り継がれる……。2020年、ガンのため43歳で逝った、『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマンもその1人だ。彼の最後の出演作となったのが、『マ・レイニーのブラックボトム』。アカデミー賞を与えたいとの絶賛も相次ぐ、渾身の演技は必見。
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『マ・レイニーのブラックボトム』
胸アツなポイントは?
“ブラックカルチャーへの不当な扱いに憤る!”
チャドウィックが演じるのは、トランペット奏者のレヴィー。1927年のシカゴで、“ブルースの母”と呼ばれる人気シンガー、マ・レイニーのレコーディングが行われ、レヴィーのバンドが参加する。
しかしマ・レイニーは周囲とことごとく衝突。レヴィーが提案するアレンジも頭ごなしに却下し、なかなか本番がはじまらない。その間に、レヴィーはマ・レイニーの付き人の女性といい雰囲気になったりするが、控え室ではバンドのメンバーが、当時の黒人たちの切実な現実をぶつけ合ったりもする。
そうしたシリアスな場面も、登場人物たちの会話がバンドのセッションのように軽やかに展開するので、身構えて観なくても問題ナシ。
オスカー女優のヴィオラ・デイヴィスが魅せる、マ・レイニーの傲慢ぶりが圧巻だが、やはりチャドウィックの変幻自在の演技が今作は光る。歌やダンスを軽妙に披露したかと思えば、ピカピカの靴を踏まれた際に怒り出すなど、レヴィーの神経質な面も名演。
そして過去の辛いエピソードを語るシーンは、それまでの表情が一変。観ているこちらの胸を締めつける。撮影時、末期ガンのために過酷なキモセラピー(化学療法)を受けていたため、痩せこけた顔での名演技は痛々しいばかり。
チャドウィックはこの作品で、すでにロサンゼルスやサンフランシスコの映画批評家協会賞で主演男優賞を受賞。アカデミー賞の可能性も高く、死後にオスカーを受ければ、ピーター・フィンチ(76年の『ネットワーク』)、ヒース・レジャー(08年の『ダークナイト』)に続いて史上3人めの俳優となる。
『マ・レイニーのブラックボトム』
製作/デンゼル・ワシントン 監督/ジョージ・C・ウルフ 出演/ヴィオラ・デイビス、チャドウィック・ボーズマン 配信/ネットフリックス
2020年/アメリカ/94分
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