ガソリンとディーゼル車販売禁止の動きが進む欧州の主要国を中心に、売り上げを伸ばしているのがEV(電気自動車)。しかし「日本市場における関心はまだまだ低いのが現状です」と、アウディ ジャパン代表取締役社長フィリップ・ノアックは語る。「EVは、日本ではコンパクトカーを中心に浸透しつつありますが、プレミアムセグメント はそれほどではありません。しかし、この10月に日本政府も温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする方針を発表し ました。今後、脱炭素化という流れが加速し、EVがさらに浸透する可能性は十分あります」
同社は、そんな日本市場に向けてブランド初のEVとなる"e-tron Sportback"を発売。さらに2025年までに、30車種以上の電動化モデルを発売し、全販売台数の4割を占めることを目指している。ちなみにノアック社長は、〈アウディ〉のアジアパシフィック地域の販売や、直近ではベントレーモータースの欧州市場のセールスオペレーションを統括し、欧州とロシアの市場を右肩上がりで成長させた実績の持ち主。
果たして彼には、日本の自動車マーケットはどう見えているのか。 「欧米と違うのは、顧客との関係性が非常に近いこと。月あたりの販売台数は欧米より少ない傾向ですが、そのぶん顧客と密なコミュニケーションが必要なのです。これはプレミアムな製品を提供する企業としては当然です。だからこそ顧客 中心主義を徹底し、ディーラーとの連携、アフターサービスといったすべての面で高いクオリティを提供できなくてはなりません。手前味噌ですが、2020 年のセールス満足度調査*で2年連続1位を獲得でき、商談、契約手続き、納車という3部門で最高評価を得られました。努力の甲斐あったと思うと、とても嬉しいですね」プレミアムで魅力ある製品を提供しながらも 、顧客第一主義を徹底する姿勢。日本で愛されている理由は、そこにあるようだ。
*J.D. パワー ジャパン日本の2020年度日本自動車セールス満足度調査(SSI - Sales Satisfaction Index) ラグジュアリーブランド(対象5ブランド)中で前年に続いて第1位。
四輪駆動"クワトロシステム"などの伝統を受け継ぐ 一方、現在は"技術による先進"というテーマを掲げ、 E Vレーシングカーで培った技術を生かした電 動 化モデルに注力する〈アウディ〉。2021年以降に、スポーツモデルの"e-tron GT"やコンパクトSUVの〝Q4 e-tron"とクロスオーバータイプの"Q4 e-tron Sportback"を発売する予定。
『Urban Safari』Vol.19 P7掲載