
ラグジュアリーウォッチの世界では、複雑であることは珍しくない。けれども、複雑である理由が“文化”と“思想”に裏打ちされているタイムピースとなると話は別だろう。〈ブランパン〉の新作『ブランパン ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー 2026年モデル』(世界限定50本)は、まさにその好例。2026年の丙午(ひのえうま)に合わせて登場したこちらは、メゾンが15年にわたり深化させてきた“東洋と西洋の時間哲学”を、最も完成度の高いかたちで結実させた1本。
時計好きなら誰もが知る永久カレンダー。しかし〈ブランパン〉が挑んだのは、そのさらに先──中国の太陰太陽暦を機械式時計として成立させること。太陽暦と月の周期、閏月、十二支、五行、陰陽。2012年に〈ブランパン〉は世界で初めて、この中国暦にグレゴリオ暦とムーンフェイズを融合させるという前代未聞の時計を完成させた。
今回の午年モデルでまず目を奪われるのが、サーモンローズのグラン・フー・エナメルダイヤル。艶やかでありながら主張しすぎないこの色味は、年齢を重ねたブロンズ肌の手元にこそよく似合う。サブダイヤルはいずれも中国の時間(120分単位)を表示するもので、3時位置は五行と陰陽の60年周期、9時位置は中国の暦における日・月・閏月、12時位置は十二支の12年周期。12時位置には、十二支の表示窓も備える。そして6時位置で存在感を示しているのがムーンフェイズだ。ダイヤルの縁にはグレゴリオ暦の日付表示があり、それをクラシックなサーペント針が指し示してくれる。
ケース素材はプラチナを採用。45.2㎜という堂々たるサイズ感も、ヴィルレらしい丸みのあるフォルムと相まって、実に品がいい。派手なラグスポとは真逆。
「あえてこれを選ぶ」という意思が、そのままセンスになる一本だろう。
心臓部となるキャリバー3638は、464個の部品で構成。香箱を3つ搭載することで7日間のロングパワーリザーブを確保している。複雑さはミニッツリピーター級でありながら、表示は驚くほど整然としている。“わかる人が見れば一瞬で凄みが伝わる”。これも大人にふさわしい価値観だ
サファイアケースバック越しに現れるのは、22Kゴールド製ローターに手彫りで描かれた“馬”。飛翔するツバメの上を疾走するその姿は、中国神話に登場する天馬を思わせ、午年に結びつく力、スピード、持久力を象徴している。自分だけが知っている裏側の美しさ。これもまた、大人の時計選びには欠かせない要素だろう。
世界限定50本。ケース径45.20㎜、自動巻き、プラチナケース、アリゲーターストラップ、3気圧防水。1344万2000円(ブランパン/ブランパン ブティック 銀座)
この時計を最もエレガントに楽しむなら、ネイビーやチャコールグレーのクラシックスーツに合わせたい。カジュアルならベージュのハーフコートに、オフホワイトのニット、ボトムは白パンを合わせた綺麗めコーデがおすすめ。ニットの袖口からちらり覗いた瞬間に伝わるのは、「ただ者ではない」という空気。圧倒的な説得力を、この時計は秘めている。
●ブランパン ブティック 銀座
TEL:03-6254-7233
URL:https://www.blancpain.com































































