PROFILE
1984年、米ミネソタ州生まれ。『トロイ』で俳優デビューを果たした後、『プライド 栄光への絆』『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』などを経て、『トロン:レガシー』でスターに。ほかの出演作に『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』『不屈の男アンブロークン』『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』『ビリー・リンの永遠の一日』、そしてHBO制作のドラマ『モザイク~誰がオリヴィア・レイクを殺したか』やネットフリックス映画『トリプル・フロンティア』がある。
昨年の12月に第1子となる男の子が誕生し、父親になったばかりのギャレット・ヘドランド。息子の母親は女優のエマ・ロバーツで、2人は一昨年の春頃から交際中だという。ヘドランド自身がプライベートについて明かすことはほとんどないが、ロバーツのSNSにはごくたまに登場。妊娠が発表されたのも、インスタグラムに上げられた2人の幸せそうな写真を介してのことだった。
現在、ギャレット・ヘドランドは36歳。20代前半から作品に恵まれてきたこともあり、まだまだ若手俳優の一員として語られがちな存在だったが、いつの間にか30代も後半に突入。親となったことで、今後は俳優としての彼のイメージにもよりいっそうの広がりが出てきそうだ。もっとも、ミネソタ州北部の小さな町で過ごした子供時代には、やがてハリウッド俳優となる未来など想像してはいなかった様子。役者の道を歩み出したのも、引っ越し先のアリゾナ州でタレントスカウトの目にとまり、演技レッスンを受けるようになったことがはじまりだったという。
とはいえ、20代を迎える頃には190㎝近い身長となり、明るいブルーの瞳と陸上、サッカー、レスリングなどで鍛えた肉体を持つヘドランドのこと、ハリウッドに注目されるのは早かった。モデル活動と並行して拠点をロサンゼルスに移した途端、ブラッド・ピット主演の歴史大作映画『トロイ』への出演が決定。ピット演じる主人公アキレスの従兄弟に扮し、重要なシーンで存在感を放った。この幸せな俳優デビューの後も、田舎町の高校アメフト部を題材にしたスポーツ映画『プライド 栄光への絆』、養母を殺害された4兄弟の復讐劇が展開する『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』、大人気ファンタジー小説を映画化した『エラゴン 遺志を継ぐ者』など、話題作に次々と出演。『プライド 栄光への絆』ではピーター・バーグ監督にビリー・ボブ・ソーントン、『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』ではジョン・シングルトン監督にマーク・ウォールバーグといったように、キャリア初期にして名匠・名優たちとの仕事を立て続けにこなす機会が待っていたことも、ヘドランドの俳優人生における大きなトピックとなった。
そして2010年、彼はディズニーのSFアクション大作『トロン:レガシー』に出演。これが、記念すべき初主演映画となった。演じたのは、20年前に失踪した父親の行方を追い、デジタル世界に足を踏み入れていく青年。最新技術を駆使した3D映像も話題となった作品で、ヘドランドはスタイリッシュなアクションシーンの数々に挑戦している。また、劇場公開に先駆けて開催された第23回東京国際映画祭では、プレゼンテーションを行うための初来日も果たした。
さらに、その翌年にはカントリーミュージックを題材にした音楽映画『カントリー・ストロング』が全米公開。カントリー界の元スター歌手が復活を目指す物語で、ヘドランドは主人公に関わる気鋭の若手シンガーを好演。劇中ではフレッシュな歌声で新たな才能を見せているほか、レッスンに励んだというギターの腕前も披露している。ただし、ミネソタで生まれ育った少年らしく子供時代からカントリーミュージックには慣れ親しんでおり、共演者で人気カントリー歌手のティム・マグロウはそもそも彼のアイドル。ちなみに、ヘドランドとマグロウは、『プライド 栄光への絆』でも父子役で共演を果たしている。
大作映画に話題作にとバランスよく出演し、堅実なキャリアを築いてきたヘドランド。そもそも作品規模には関心がないようで、バラエティに富んだ役柄を望んでいるそう。「1つの役を演じ終えたら、次に望むのは異なるタイプの役。同じことは繰り返したくない」と公言している。また、作品選びで重要なのは「自分を成長させてくれるかどうか」とも。ジャック・ケルアックの同名小説を原作にした『オン・ザ・ロード』、高い評価を得たネットフリックス映画『マッドバウンド 哀しき友情』など、『トロン:レガシー』で知名度を上げた後の出演作からも、そのポリシーがうかがえる。
そんな彼の近作として注目したいのが、人気女優のマーゴット・ロビーが製作と主演を務める『ドリームランド』、そして先頃のゴールデン・グローブ賞でアンドラ・デイが主演女優賞に輝いた『ジ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ(原題)』だ。強盗犯の女性アリソン・ウェルズと17歳の少年ユージン・エバンズが逃避行を繰り広げる『ドリームランド』には、ヒロインの亡き恋人ペリー役で印象的に登場。伝説のジャズシンガー、ビリー・ホリデイの生涯を描く後者では、彼女と敵対する連邦捜査官ハリー・アンスリンガーを演じている。どちらもいわゆる主役ではないが、物語を語るうえで欠かせない、キーマンとなる役どころ。作品の一部であろうとする姿勢が、俳優ギャレット・ヘドランドを物語っている。
●4月9日より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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Well, you know what they say.
“No use crying over it.”
しょうがないだろ。“覆水盆に返らず”だ。
『マッドバウンド 哀しき友情』より
『Urban Safari』Vol.20 P8~9掲載
photo : Corina Marie Howell / AUGUST/ amanaimages text : Hikaru Watanabe