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2023.03.21


【ハビエル・バルデム】最新作『シング・フォー・ミー、ライル』を語る。

【ハビエル・バルデム】最新作『シング・フォー・ミー、ライル』を語る。PROFILE
1969年、スペイン生まれ。6歳で子役となる一方、10代はラグビー選手として注目される。その後ビガス・ルナ監督に見出され、スペイン映画界で活躍。『ハイヒール』『ハモンハモン』などに出演した後、アメリカ映画『夜になるまえに』でアカデミー賞主演男優賞候補となる。そのほか、『BIUTIFUL ビューティフル』『愛すべき夫婦の秘密』でも同賞同部門の候補に。『ノーカントリー』では同賞助演男優賞を受賞している。現在は、『DUNE/デューン砂の惑星』の続編などが公開待機中。

ハビエル・バルデムといえばスペインが誇る名優で、ペドロ・アルモドバルや故ビガス・ルナなど、同国を代表する映画監督たちの作品でキャリア初期から実力を発揮。その活躍ぶりは国内に留まることなく、現在に至るまでアカデミー賞に4度ノミネートされている。

そのうちの1作、『ノーカントリー』では不気味な殺人鬼を怪演し、アカデミー賞助演男優賞を受賞。また、大作映画でインパクトを放つことも多く、『007 スカイフォール』や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』で彼を知る人も多いだろう。まさに、これ以上ないほど輝かしいキャリアを築いてきたわけだが、それに加え、妻は美しきペネロペ・クルス。2人の子供にも恵まれ、公私共にパーフェクトな人生を歩んでいるように見える。

そんな完璧男ハビエル・バルデムだが、この期に及んでまだ特技が!? と驚かされたのは、彼がミュージカル映画に出演したからだ。『グレイテスト・ショーマン』の音楽チームが楽曲を手掛けた新作『シング・フォー・ミー、ライル』に、主要登場人物の1人として参加。歌とダンスの本格的パフォーマンスを披露しているのだが、ご安心を。実はもともと歌とダンスの才能を秘めていた! というオチではないようだ。

「“なぜ僕に出演オファーが?”と不思議に思ったよ。歌手でもダンサーでもないのにね。きっと、監督たちは予想外のことをもたらしてくれる役者を探していたのだと思う。歌唱シーンのためには、たくさんの練習が必要だった。慣れていない領域に声を広げるのは時間がかかるものだからね。素晴らしい作曲家、ヴォーカルコーチ、監督、プロデューサー、音楽スーパーバイザー、そして楽曲が僕を助けてくれた。ダンスに関してもそう。以前、『愛すべき夫婦の秘密』で少しだけ踊ったことはあったけど、この作品で挑戦したのは、ダンサーではない僕にとってはとても複雑なミュージカルナンバー。多くの時間と努力を要したし、まさに不安だらけだったよ」

製作陣が「予想外のことをもたらしてくれる役者を探していた」のだとしたら、それは『シング・フォー・ミー、ライル』自体が予想外の驚きにあふれた映画だからかもしれない。人気の絵本を原作にした本作には、なんと“歌うワニ”が登場。魅惑の歌声を持つワニのライルを相棒に、ハビエル演じるショーマン、ヘクターがひと儲けを夢見るところから物語は展開していく。

「ヘクター・P・ヴァレンティは自称“舞台と銀幕のスター”で、パフォーマーとして生計を立てることを心から望んでいる。でも、そのためには相棒が必要なんだ。そんな中、ワニのライルという最高のパートナーを見つけ、彼に歌とダンスを教え込む。ヘクターを演じるうえで重要だったのは、他者との関わり方だね。彼の言動や仕草、リアクションが笑いを誘い、ユニークな人物にしている。演じていて、本当に楽しかったよ。その一方で、彼の外見も大きなポイントだと思う。古い時代と新しい時代の中間にあるような風貌が、ヘクターの誇らしげな人となりを雄弁に物語っている。衣装とヘアメイクのおかげだね」

少々怪しげで、胡散臭さもあるヘクターの野望は叶うのか。それは本編を見てのお楽しみだが、ライルとヘクターの“相棒関係”も見どころのひとつ。CG製のキモかわいいライルに、歌手のショーン・メンデスが歌声を吹き込んでいる。

「なにもない空間で演技をしたり、CG処理用にワイヤーやライトをまとった人と一緒に演技したりすることになにも戸惑いはなかった。そもそも、役者は想像力や直感を生かしながら演じるものだから。それより、緊張したのはショーン・メンデスとのデュエットだね! 最終的に僕の声と彼の声が合わさると知り、レコーディングではワクワクすると同時にものすごく緊張した。けれど、それ以上に気にしなくてはならないことが山ほどあって。英語の歌詞を正確に、ちゃんと歌うことに集中しなくてはならなかった」

映画俳優としてのキャリア30年を超えるオスカー俳優が緊張しながらレコーディングブースに立ち、新たな挑戦に臨んだのだと思うとひたすら頭が下がる。チャレンジの理由は「コミカルでおかしなキャラクターを演じ、不慣れなダンスや歌を披露するということ。そして、ワニと非常に美しい関係を持つこと」に興味を抱いたのはもちろん、「自分の子供たちをはじめ、すべての子供たちが最高の時間を過ごせる素敵で感動的な作品を作りたかったから」だという。

そんなハビエル・バルデムの今後の新作に、ディズニーのミュージカル映画『リトル・マーメイド』が控えているのも気になるところ。こちらでも彼の歌声を聴くことができるかどうかはまだ定かでないが、役者としての挑戦と父親としての思いが交わる瞬間は再び見られそうだ。ハビエルはトリトン王役を演じている。監督はロブ・マーシャルで、日本公開は6月9日。

『シング・フォー・ミー、ライル』
【ハビエル・バルデム】最新作『シング・フォー・ミー、ライル』を語る。売れないショーマンのヘクター(バルデム)は古びたペットショップで、魅惑の歌声を持つワニのライルに出会う。ヘクターはライルを相棒に舞台に立とうとするが、ライルはステージ恐怖症でショーは大失敗。そんなライルの前からヘクターが姿を消した何年か後、ライルの潜む家にある一家が越してきて……。監督は『俺たちフィギュアスケーター』のウィル・スペック&ジョシュ・ゴードン。●3月24日より、全国ロードショー


It takes time to expand one's voice
into unfamiliar territory.
慣れていない領域に自分の声を広げるには時間がかかるものです。
ハビエル・バルデム

 
Information

『Urban Safari』Vol.32 P6~7掲載

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写真=AFLO 文=渡邉ひかる
photo by AFLO text : Hikaru Watanabe
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