名作家具が美しく映えるミッドセンチュリーハウス
1968年築のヴィンテージマンション4戸分をスケルトンにして再構築した住まい。低い天井と大きな窓からの自然光が生む陰影、柔らかなフォルムと硬質な素材使いなど美しい対比が際立つ。ミッドセンチュリーの家具の洗練と時間が醸成したこなれ感を味方にする空間構成は、そのままお手本にしたいエッセンスが満載。
- SERIES:
- 西海岸的なハッピー・ルーム! vol.17
今月の部屋 佐々木邸/3LDK/210㎡
1つ1つ吟味して組んだ石積みの壁とキッチン周りに施したPタイル。重厚感と工業化製品の軽快さのギャップが絶妙。アームシェルチェアは、脚部の多様さそのままにH型やコントラクト型などが
ミッドセンチュリーの家具や当時の空気感が好きで、築50年になるヴィンテージマンションを購入しリノベーションした佐々木邸。「壁を取り払った横に長い空間は、ミッドセンチュリーのアメリカで人気だったアイクラーホームなど、平屋の工業化住宅に通じるものがあります。当時の家具ともバランスがとてもいいんです」とその理由を語る。
自然光がたっぷり入る大窓や玄関ホールから続くオープンな間取り、ガラス壁を使ったバスルームなどは、まさにアイクラーホームを彷彿させる。玄関ホールを挟んで右は子供部屋や寝室などプライベート空間、左はLDKとしてゾーンを分けた。そのLDKは、白い梁が水平ラインを強調し、石積みの壁が存在感を見せる。シナベニヤを張ったキッチンとの対比も美しく、〈イームズ〉のセグメンテッドベーステーブルやソファコンパクト、フローレンス・ノールのキャビネットなど名作家具がしっとりと馴染む。
「壁や床はこだわってプロにつくりこんでもらいました。でも、キッチンは扉材に有孔ボードを張り、自分たちで古い取っ手に付け替えたりして遊んでいます」
アメリカ生活で身につけたほどよい抜け感も、家の魅力となっている。
01 多灯で大空間を緩やかに分け居心地のよさを生み出すカーペット敷きの広いLDK。〈イサム・ノグチ〉のフロアライトやジョージ・ネルソンのバブルランプが柔らかな陰影をつくる。鎧戸のスモーキーピンクが空間の差し色に
02 好きなものに囲まれればデスクワークもご機嫌邪魔に感じる柱の凸部も、横にジョージ・ネルソンCSSシリーズのシステムデスクを据えたことでご機嫌ワークスペースに。日中は窓からの自然光が照明代り
03 親子で読む! 飲む! 遊ぶ! 過ごし方自在プレイラウンジ玄関ホール正面のラウンジは、親子で卓球を楽しむことも。夜は天井のミラーボールやエタノール暖炉をつけて光の煌めきに浸るなど、シーンに応じて遊べる場所だ
04 コーナー窓に合わせて設けたカウンターベンチは特等席
コーナー窓の高さに合わせてカウンターベンチを造作し、床と同じカーペット敷きに。日当たりがいい特等席で、妻がギターをつま弾いたり、子供たちが寄りかかったり。寝転がってもいい奥行き
05 アクセントカラーのドアが玄関土間をポップに飾る8畳ほどある玄関土間。フロアライトはイームズの原点でもあるレッグスプリント
INTERIOR POINT
40年の時を経ても美しい音とデザインオーディオのハイブランドであり、〈モマ〉のパーマネントコレクションに数多く選ばれている〈バング&オルフセン〉の1979年モデル。タッチパネルや水平移動するアームなど、当時の機能面での革新性、また、ヤコブ・イェンセンによるデザイン性の高さに惚れこみ購入した。希少品となっている美しいローズウッドを使ったスピーカーから、深みのある音がダイニングに流れる。ラウンジチェアとオットマンにカラダを預けて、お酒を飲みながら音楽に浸るのは至福の時なんだとか。
●ハウストラッド
TEL:03-6412-7406
URL:www.housetrad.com
雑誌『Safari』9月号 P174~175掲載
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photo : Takafumi Matsumura text : Kuniko Nakajo