
ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールに、ひときわ誇り高い拍手が響いた――。12月1日に開催された英国ファッション協議会(BFC)主催『2025 ファッション・アワード』で、ブルネロ・クチネリが名誉ある『アウトスタンディング・アチーブメント賞』を授与された。
“ファッション界のオスカー”として知られるこの賞は、創造性、クラフツマンシップ、美意識、そして革新性を体現するブランドに贈られるもの。過去にはカール・ラガーフェルド、ラルフ・ローレン、ミウッチャ・プラダなど、錚々たるレジェンドが名を連ねてきた。そこに今年、新たにクチネリの名が加わった形だ。
今回の受賞理由としてBFCが称えたのは、〈ブルネロ クチネリ〉というブランドが築いてきた“ジェントル・ラグジュアリー”の哲学。上質な素材と卓越したデザインを追求しながらも、ソロメオの村を拠点に、人間の尊厳や働く喜びを重んじた“人間主義的資本主義”を実践してきた。
創業は1978年。わずかな工房から始まった小さな挑戦は、今や世界中のエレガンスの象徴へと進化。とりわけカシミヤにおける革新性は高く評価され、その確かな品質と普遍の美学がファッション界に新たな可能性を示したとされている。
クチネリのファッションハウスは、熟練のクラフツマンシップと美意識が静かに息づく場所。素材へのこだわりはもちろん、働く人々が誇りを持てる環境づくりを何より大切にしてきた。彼らが生み出す一点一点の美しいプロダクトには、“利潤と恩返しの調和”というブランドの理念が織り込まれている。
その姿勢こそが、今回の受賞をより意味深いものにしている。
授賞式では、世界的映画スターのシャロン・ストーンから直接トロフィーが手渡されたクチネリは次のように語っている。
「英国ファッション協議会より “ファッション界のオスカー” と呼ばれるこの賞を頂き、大変光栄に思います。この賞は、我々のファッションハウスの創造的活動だけでなく、“思索する魂” を持つ仲間たちの献身と勤勉さが認められたものだと感じています。今日、私はここに、イタリアそのものが讃えられている姿を見ています。その創造的精神、美への愛、卓越性への揺るぎない献身です。このような光栄に深く感謝いたします。
私はこの名誉ある賞を、若い皆さんに捧げたい。彼らこそが “人類の担い手であり、未来の守り手だからです。どうか夢を追うことを恐れず、恐れを希望に変え、星々に導かれるように歩んでください。必ずや、天がその道を示してくれると信じています」
華美なトレンドとは距離を置き、静かで確かなエレガンスを追求する――。〈ブルネロ クチネリ〉のスタイルは、成熟した大人たちから支持され続けている。
今回の受賞は、その揺るぎない哲学が世界に広く認められた証。“上質とは、つくる人も着る人も幸せにするもの”というクチネリの考え方は、これからもラグジュアリーの在り方に新たな指針を示してくれそうだ。











































































