アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市の北東部に位置するチャールズタウンは、アメリカのどこよりも強盗が多発する街として知られる。同じボストン生まれの作家、チャック・ホーガンのハメット賞受賞作『強盗こそ、われらが宿命(さだめ)』には、家業のように強盗を親から引き継ぐ宿命にある主人公の葛藤が描かれていて、それに目をつけたのがベン・アフレックだ。
アフレックはチャールズタウンの過酷な環境についてほとんど知らなかったという。名門ハーバード大学が本部を置く同じマサチューセッツ州の学園都市、ケンブリッジ出身であるにも関わらずだ。アメリカではあり得る話かも知れない。そこで、彼は高校の同級生、アーロン・ストッカードと共にリサーチを開始。地元のFBI暴力犯罪課や地域のコミュニティに対して多くのインタビューを試み、地域密着型犯罪青春グラフィティ『ザ・タウン』を作り上げた。
とまあ、製作のバックグラウンドはこれ位にして、ボストンと言えばレッドソックス。大リーグの中で最もサポーターがホットなことで知られる街での撮影だけあって、映画の冒頭からレッドソックスの関連グッズが次々登場する。
ベン・アフレック自身が熱狂的なレッドソックス・サポーターなのは有名な話だが、劇中でも然りで、彼が演じる主人公、ダグは胸に”B”マークのウィンブレを愛用しているし、ダグの仲間は同じ”B”マークのキャップを被って現れる。レッドソックス関連以外にも、例えば、ダグが羽織るアディダスのジャージ、ジェレミー・レナー扮するダグの友達、ジェムが着ているプーマのジャージ&サイドに白の1本ラインのスウェットパンツ等々が、日常着として登場。
フード付きスウェットの上にレザージャケットやコットンジャケットを羽織るスタイルは彼らの生活に自然に定着している。言ってみればこの映画、よく見るとアメカジの宝庫なのだ。
レッドソックスが後に”史上最高のボストン映画”と呼ばれることになる『ダ・タウン』のために、クライマックスの舞台になるチームの本拠地、フェンウェイパークでの撮影を許可する等、全面的な協力を申し出てくる。だが反面、同じボストンをホームにしているNFLの古豪、ブルーインズは映画のテーマに難色を示して協力を拒否。
そこで、衣装デザイナーのスーザン・マシソンはブルーインズのジップアップのトラックジャケットに似たジャケットの胸元に、フェルトを切り抜いて”B”の文字をホッケーのスティックが取り囲むチームのロゴを貼り付けるという荒技に出る。勿論、アプルーバルは取っていない。描く物語は厳しいけれど、映画『ザ・タウン』はアメリカでスポーツがいかに地域に根ざしているかを痛感させる作品でもあるのだ。
『ザ・タウン』
製作年/2010年 原作/チャック・ホーガン 監督・脚本・出演/ベン・アフレック 出演/レベッカ・ホール、ジョン・ハム、ジェレミー・レナー、ブレイク・ライブリー
photo by AFLO