映画『アイアンクロー』は事実を再現することに徹した衝撃のヒューマンドラマ!
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実話の映画化は、その元ネタに詳しい人にとって、どこまで再現度が高いかによって評価が分かれるもの。モデルとなった人物を美化し過ぎたり、危うい部分をオブラートで包んで描かれたりすると、物足りない結果になることもある。この『アイアンクロー』は、あらゆる要素で“事実を再現する”ことに徹し、驚くほど!
まず圧倒されるのは、プロレスシーンの迫力だ。本作の題材になったのは、フォン・エリック・ファミリー。プロレス好きな人なら、その名前に聞き覚えがあるだろう。1970年代末に、アイアンクロー(鉄の爪)という得意技でAWA 世界ヘビー級チャンピオンになったフリッツ・フォン・エリック。80年代になるとその息子たちも成長してリングに上がり、最強のプロレス一家として人気を博した。長男は子供時代に亡くなったので、次男ケヴィン、三男デヴィッド、四男ケリー、五男マイクの4人の活躍を再現するうえで、演じる俳優たちも肉体改造。試合シーンにも自ら挑み、超危険な技も全力でこなす。その姿に観ているこちらはストレートに興奮してしまうのだ。なかでもケビン役のザック・エフロンは、目を疑うようなムキムキの筋肉で登場。トップロープからのジャンプや、豪快なキックも披露するうえ、弟たちを鼓舞するリーダーシップで存在感をみせつける。
“真実味”という観点から、もうひとつ唖然とさせられるのは、このフォン・エリック・ファミリーを襲った悲劇にも目を逸さなかったところ。一家の運命を知っている人なら、ある程度の覚悟とともに本作を観るはずだが、詳しくない人にとってこの展開はショックの連続に違いない。まさに“呪われた一家”の物語。ここに実話の映画化としての覚悟が感じられる。ドラマとしてはリング内外での兄弟の絆が過剰なまでにフィーチャーされ、悲劇の深刻さに否応なく共感させられる。そして母親や、ケビンの妻となる女性のエピソードが悲劇に癒しも与える。監督のショーン・ダーキンがガチなプロレスファンということで、フォン・エリック・ファミリーへのリスペクトが全編に貫かれた力作が完成。背景となる80年代カルチャーも楽しみながら、一家の伝説を目にやきつけたい。
『アイアンクロー』4月5日公開
製作・監督・脚本/ショーン・ダーキン 出演/ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ 配給/キノフィルムズ
2023年/アメリカ/上映時間132分
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