大人の友情が壊れたことでトンデモない事態に発展! 『イニシェリン島の精霊』に恐怖する!
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映画は公開のタイミングが重要。ニュースなどのトピックに上がっている時期に「その作品が観たい!」となる人が増えるから。その意味で、アカデミー賞のノミネートが発表された週末に、本作が公開されるのは最高のタイミングだろう。作品賞など8部門で9つのノミネートを果たしたのが、この『イニシェリン島の精霊』だ。
今から5年前、アカデミー賞で作品賞など7部門にノミネートされ、2部門で受賞を果たした『スリー・ビルボード』。娘をレイプして殺害した犯人を探す母親のドラマは、予想も超えた展開をみせ、多くの人の心をざわめかせた。そのマーティン・マクドナー監督が、またもオリジナル脚本で過去のどんな映画とも違うドラマを完成させた。舞台は1923年、アイルランドの架空の島。パブで一緒に飲み、語り合うのが日課だったパードリックとコルム。しかしある日突然、年上のコルムが絶交を宣言する。理由もわからず困惑するパードリック。2人の壊れかけていく友情に、島の住民の思惑や運命も絡み、事態は想定外の方向へと突き進んでいく。
「友達やめる」という妙に子供じみた争いにはじまり、その理由がわからないことでサスペンス感も充満。コメディのようなやりとりもあれば、目を疑う衝撃シーンも挿入される。犬やロバなど動物に癒される瞬間も。
さらに人生の意味や戦争といった深いテーマも潜んでいるが、それらの要素がひとつの物語として美しく溶け合っているのが、『イニシェリン島の精霊』の魅力だろう。もちろん俳優たちの演技のクオリティも最高級。素朴なパードリックをまっすぐに演じて共感を誘うコリン・ファレル(最近の彼は絶好調!)、複雑な内面をにじませるコルム役のブレンダン・グリーソンを中心に、周囲のキャストも強いインパクトを残す。
アイルランド、アラン諸島で撮影され、荒れた海と曇り空、緑の大地が織りなす映像美とともに、パードリックとコルムが迎える結末は深い余韻を届けてくれるはず。まさしく“映画らしい映画”だ。
『イニシェリン島の精霊』
製作・監督・脚本/マーティン・マクドナー 出演/コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2022年/イギリス・アメリカ・アイルランド/上映時間114分
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