PROFILE
1988年、米・テキサス州生まれ。10代で俳優デビューし、『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』『ファーストフード・ネイション』などに出演。テキサス大学を卒業後ロサンゼルスに移り、『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『スクリーム・クイーンズ』『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』『ドリーム』『ガーンジー島の読書会の秘密』などで注目を集める。今後の作品に、主演映画『セットアップ:ウソつきは恋のはじまり』ほかで共演したゾーイ・ドゥイッチとの再共演作などがある。
トム・クルーズをトップスターにした青春スカイアクション映画『トップガン』が公開されてから36年、その続編にあたる『トップガン マーヴェリック』がまもなく公開される。アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校、通称“トップガン”に学び、天才パイロットとして名を馳せた“マーヴェリック”ことピート・ミッチェルはあれからどんな人生を歩んだのか。今、どこでなにをしているのか。その謎が待望の続編で明かされる。
ヒット作の続編製作が当然となった昨今、『トップガン』の続編企画も過去に何度も浮上したが、なぜ36年の歳月を経ての今回となったのか。その理由は、トム・クルーズにとって『トップガン』が大切な1作であることにほかならない。続編製作の権利を持つクルーズは長い時間をかけ、企画を熟成。
「本物の飛行シーンを撮影すること」を続編製作の条件に、技術の進化を粘り強く待ったという。そのため、『トップガン マーヴェリック』では過酷なトレーニングを積んだキャストたちが現実のパイロットさながら、本物の戦闘機に乗りこむ姿を見ることもできる。
ここまで入魂の企画となれば、当然ながら登場人物およびキャストの顔触れも重要に。マーヴェリックことトム・クルーズはもちろん、『トップガン』でマーヴェリックのライバルを演じていたヴァル・キルマーも登場。さらには、マイルズ・テラー、グレン・パウエル、ルイス・プルマンら若手キャストが大きな役割を担う。というのも今回の物語は、マーヴェリックがトップガンに舞い戻ってくるところからスタート。いまだ現役であり続けるマーヴェリックが、若手キャスト演じるトップガンの新世代パイロットを率い、困難な任務に命を懸けることになる。
そんな中で注目したいのが、新世代パイロットの1人であり、有能だが不遜な“ハングマン”を演じるグレン・パウエルだ。実は彼、当初は別の役の候補に挙がっていたものの、あえなく最終オーディションで涙を呑むことに。しかしながらクルーズや製作陣に高く評価され、ハングマン役のオファーを受ける。となると、若手としては申し出に飛びつきそうなものだが……。パウエルはオーディション不合格にショックを受けていたこともあり、オファーを拒否! トム・クルーズ直々の説得を受けることになる。
「“僕はこれまで、キャラクターの素晴らしさで役を選んだことはない。素晴らしい映画を選び、その中にキャラクターを作り出してきた。君もどんな映画を作りたいか、なにの一員になりたいかを考えるべき”とトムが言ったんだ。感銘を受けたよ。実をいうと、『トップガン』は僕が俳優になった理由の1本。10歳のとき、父と一緒にビデオで見たのがはじまりなんだ。見終わった後、僕は父に演技のクラスに通いたいと頼んだ。だから続編が作られると知ったときは、まるで自分が映画にもう出ているような口ぶりで話したりもした(笑)。これほど情熱を注いだ映画はないからね。そして夢が叶った。素晴らしいことだよ。僕のせいで、危うく実現しないところだったのに。トムと一緒にハングマンを作り上げるチャンスがあるなんて、考えもしなかったよ」
「映画の『ラスト・アクション・ヒーロー』を覚えてる? 夢中だった映画の中に、少年が文字どおり入りこんでしまうよね。僕の体験はまさにそんな感じだった」とも語るパウエル。そんな彼へのサポートをクルーズも惜しまず、クリスマスにはあるものがプレゼントされたという。
「本物のパイロットに憧れてしまって、プライベートでも飛行免許を取りたくなったんだ。そしたら、飛行訓練学校に通えるようにトムが手配してくれた。費用もすべて彼の負担でね」
もちろん、クルーズの粋な計らいには、俳優グレン・パウエルへの称賛が大いにこめられていたのではないか。10代のころからキャリアを積んできたパウエルは主演作こそまだ少ないものの、出演した作品で確実に印象を残してきた。なかでも、TVドラマ『スクリーム・クイーンズ』や映画『ドリーム』での評価は高く、ホラーとブラックコメディをミックスさせた前者では“リッチで超イケている”大学生をシニカルに怪演。破壊力のあるコメディ演技を見せつけ、シーンの話題をしばしばさらった。
一方、NASAの宇宙開発計画を題材にした後者では、実在の宇宙飛行士ジョン・グレン役に抜擢。計画を支えるスタッフ(タラジ・P・ヘンソンらが演じた)に対し、分け隔てなく紳士に接する英雄を好演している。また、本格的初主演映画にあたる『セットアップ:ウソつきは恋のはじまり』もパウエルの巧さが光るラブコメディで、記憶に新しいところ。そんな彼がトム・クルーズの目に留まったのはもはや必然。これから先どんな活躍を見せてくれるのか、まずは『トップガン マーヴェリック』での勇姿を見届けたい。
アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校トップガンに、伝説のパイロット、マーヴェリックが舞い戻ってくる。彼に与えられた任務は、トップガンの精鋭パイロットたちをもってしても絶対不可能な任務を成功させること。マーヴェリックは新世代トップガンともいうべきルースター、ハングマン(パウエル)らを率いることになるが……。監督は『オブリビオン』のジョセフ・コシンスキー。●5月27日より、全国ロードショー
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Tom Cruise has been a guy
I’ve admired my entire life.
トム・クルーズは私が一生を通して尊敬してきた男です。
グレン・パウエル
『Urban Safari』Vol.28 P6~7掲載
photo by Robby Klein / Contour by Getty Images text : Hikaru Watanabe