美しいうえに絶体絶命のピンチでも切り抜けるたくまさが魅力のサンドラ・ブロック。ここ数年出演作がなかったものの、12月にはネットフリックス『消えない罪』が配信スタート。さらに、来年にはともにブラッド・ピットと共演する『ザ・ロストシティ』と『バレット・トレイン』が公開予定と、再び、脚光を浴びる予感! そこでサンドラの魅力を再確認するため代表作5本をセレクト。アナタはどのサンドラがお好き?
『スピード』
製作年/1994年 監督/ヤン・デ・ボン 脚本/グレアム・ヨスト 共演/キアヌ・リーヴス、デニス・ホッパー、ジェフ・ダニエルズ
大ブレイクしたアクション作!
シルヴェスター・スタローン主演の『デモリッションマン』などで、その名を知られるようになったサンドラ・ブロックが、大ブレイクしたのが『スピード』。作品自体が特大ヒットしたうえに、まだ彼女を認識していない一般の観客にとって、大事件に巻き込まれるヒロインは、これ以上ないハマリ役として記憶された。ロサンゼルスの路線バスに爆弾が仕掛けられ、速度が50マイル(80km)を下回ると爆発する設定のため、バスは猛スピードで街を走りまくる。アクション映画としても斬新なシチュエーションと、一瞬もとぎれない緊迫感が観る者の心をとらえた。
サンドラが演じるアニーは、バスの乗客で、負傷したドライバーに代わって運転を任される役どころ。本来ならクルマで通勤していた彼女が、スピード違反で免停中のためにバスに乗っていたわけで、慣れないバスを運転しつつも、スピードを出すのはへっちゃらという点が、ありえない展開にリアリティを与えた。バスに乗り込んだキアヌ・リーヴスのSWAT隊員との息もぴったり。キアヌとサンドラは私生活で恋人にならなかったものの、当時おたがいに相思相愛だったことを告白。そんな2人の思いも重ねながら観ると感慨深い。続編の『スピード2』ではサンドラが単独主演を果たした。
『デンジャラス・ビューティー』
製作年/2001年 監督/ドナルド・ペトリ 共演/マイケル・ケイン、ベンジャミン・ブラット、ウィリアム・シャトナー
サンドラの魅力を決定づけた!
多くの人にとって、サンドラ・ブロックの魅力を決定づけた作品がこれ。デンジャラス(ちょっぴり危険)で、ビューティー(無敵の美しさ)と、タイトルからして彼女の個性を言い当てている。サンドラが演じるのはFBI捜査官のグレイシー。子供時代からケンカが強く、ファッションやメイク、そして恋愛にまったく興味ナシ。仕事に人生をかけてきた彼女が、ミスコンテストの参加者となって潜入捜査を命じられる。一応、素顔は美人のグレイシーなので、美容コンサルタントを雇って、なんとかそれらしく変身するが、コンテストでの捜査は波乱の展開になだれこむ。
本作のサンドラがスゴいのは、前半、髪はボサボサ、まったくオシャレじゃないというグレイシーの姿に違和感がないこと。人気スターの場合によくある“作った感じ”のイケてなさとは明らかに違う。だからこそ後半の変身が鮮やかすぎて、感動レベルになるのだ。基本はコメディ部分の多いエンタテインメントなのだが、「ミスコンなんて頭の空っぽの人が出る」と、自分でも偏見をもっていたグレイシーの“心の変身”もドラマにうまく込められて感心させられる。
『クラッシュ』
製作年/2005年 原案・製作・監督・脚本/ポール・ハギス 共演/ドン・チードル、マット・ディロン、ジェニファー・エスポジート
演技力を存分に発揮!
基本的に明るい作品が多く、観た後に前向きになれるのが、サンドラ・ブロックの映画だが、その分、彼女が超シリアスな演技をみせると意外性で印象に残る。『クラッシュ』はそんな一作だ。クリスマスシーズンのロサンゼルスを舞台に、ある交通事故を発端に、さまざまな人種の人々の運命が連鎖していくドラマ。2004年度のアカデミー賞で、当初の予想を覆して作品賞を受賞した。
黒人刑事と同僚のヒスパニックの恋人、リッチな黒人夫婦、差別主義者の白人警官、家族のために銃を買うペルシャ人の店主……と、出てくる人物は、それぞれ心に不満がくすぶり、いつ爆発してもおかしくない。そんな彼らが事故や犯罪、人種差別によって衝撃の決断を下す瞬間が切実で生々しい。サンドラが演じるのは、検事の妻。黒人の強盗2人組にクルマを襲われたことから、それまで眠っていた差別意識、白人優位主義があらわになっていく。ふだんから、やや神経過敏で、満たされない孤独感を抱えているという複雑なキャラクターで、サンドラの演技力が満点に発揮。終盤は心を激しく揺さぶる名シーンも用意される。
『しあわせの隠れ場所』
製作年/2009年 原作/マイケル・ルイス 監督・脚本/ジョン・リー・ハンコック 共演/ティム・マッグロウ、クィントン・アーロン、キャシー・ベイツ
オスカーを獲得したサンドラの代表作!
初めてノミネートされたアカデミー賞で見事に主演女優賞を受賞。サンドラ・ブロックのキャリアで、ひとつの頂点となった。真冬の夜、1人で歩いていた黒人少年のマイケルを見つけ、放っておけなくなったリー・アン。マイケルの過酷な境遇を知った彼女は、後見人となって家族として迎え入れることに。やがてマイケルはアメリカン・フットボールの才能を開花させる。実在するNFLの選手の運命を描いた、誰もが心を揺さぶられるヒューマンドラマ。
見ず知らずの少年を家族同然の存在として愛する。その少年が成功への道を進む。ややできすぎた感のあるストーリーも、実話として観れば素直に入りこめる。何より、このドラマに説得力を与えるのがサンドラで、「これしかない」と決意したときの突進力と、マイケルの本心にも気を使いながらの繊細な愛情表現。その両面を演じ分けて、観ているこちらのハートをわしづかみする。恵まれた環境にある白人女性と、黒人少年の関係という点で、『クラッシュ』からの流れで観ることで、さらに感動が増幅されるはず。
『ゼロ・グラビティ』
製作年/2013年 製作・監督・脚本/アルフォンソ・キュアロン 共演/ジョージ・クルーニ、エド・ハリス
何事も乗り切る“たくましさ”に惹かれる!
スペースシャトルの大事故を描いた本作は、無重力の状態や、少なくなっていく酸素残量、宇宙の果てしない広がりなど、あらゆる要素がセンセーショナル。映像もリアリティ満点で、サンドラ・ブロック主演映画の中でも大ヒットした作品のひとつ。彼女が船外活動をしているオープニングから、宇宙空間に一気に没入させる。ロシアが爆破させた衛星の破片によって、サンドラが演じるライアン・ストーン博士のスペースシャトルが損傷。ジョージ・クルーニーの宇宙飛行士とともに、宇宙へ放り出されてしまう。
ストーン博士は医療用品の開発が専門であり、スペースシャトルの危機にもパワーで対抗するわけではない。だからこそ、観ているわれわれは彼女のサバイバルに感情移入してしまうのだが、サンドラが演じていると、何事も乗り切ってしまう“たくましさ”を感じるのも事実。宇宙空間の信じがたいアクションに説得力が与えられるから不思議だ。クライマックスでは思わぬエモーショナルな瞬間もあり、ほかに類をみない映画体験が待っているという意味で、最も記憶に新しいサンドラの代表作と言えるだろう。
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