【傑作選】心に残るヒューマン映画10選!
これまでSafari Onlineで配信してきたヒューマン系映画の中から傑作10作品選んでご紹介!
『ショーシャンクの空に』
製作年/1994年 監督/フランク・ダラボン 出演/ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン
ヒューマンドラマの傑作!
無実の罪で終身刑を言い渡された堅物の元銀行員アンディが刑務所の中で最後まで希望を捨てずに生き抜くヒューマンストーリー。冤罪を主張しても誰にも聞いてもらえず、所長や刑務官は利己的で残虐、暴力的な服役囚には常に狙われ……。絶望の中でもアンディは持ち前の人柄の良さで味方を増やし、鉱物収集という趣味を見つけて楽しみ、そして何より自身の知恵をフル回転して居場所と地位を獲得していく。
ヒューマンドラマであり脱獄ものとしても秀逸な本作。あっと驚く脱獄の方法、所長や刑務官への痛快すぎる“復讐”。約20年もの長い間、決行のその時までアンディは希望と尊厳、そして知識を武器にひとり静かに戦っていたのだ。特にアンディが『フィガロの結婚』を流すくだりは、彼の人間性――ひいては人間にとって根源的に大切な感情や意思が描かれる名シーン。普段は柔和でおとなしいアンディの清々しくも不敵な表情も必見だ。ちなみに、その数年後に製作される『ミスト』は同じスティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督と思えぬ、正反対の絶望に満ちた作品なのも面白い。
『レスラー』
製作年/2008年 監督/ダーレン・アロノフスキー 主演/ミッキー・ローク
ボロボロになっても立ち上がる姿に男を感じる!
主人公の姿にミッキー・ロークの人生を重ね合わせずにはいられない作品で、かっこ悪さをさらけ出した姿が胸を打つ人間ドラマ。主人公ランディは、かつてメジャー団体で活躍したが、今はステロイド剤の射ちすぎでボロボロになった中年プロレスラー。若手レスラーやプロレスファンからリスペクトされる一方、普段はスーパーマーケットで働かざるをえないほど落ち目になっている。
心臓の手術を受け引退を決意するが、どうしてもリング上で感じた高揚感を忘れることができない。そのうえ、不器用な生き方しかできないため、大好きな娘の約束をすっぽかしては嫌われ、勤務中のスーパーマーケットではファンに見つかり、恥ずかしさから店をグシャグシャにしてしまう。そんなつもりじゃないのに、同じ過ちを繰り返してしまう。誰しも、こんなときがあるだけに、ランディの気持ちが痛いほど伝わってくるはずだ。
ラスト、ランディはボロボロのカラダながら命懸けでリングに上がる。そこには天職に巡り合ってしまった男の喜びと哀しみが見てとれる。‘80年代にフェロモン系男優として一世を風靡したミッキーだが、その後は低迷。破産、離婚、整形手術の失敗……と辛酸を舐めわけだが、本作でベネチア映画祭金獅子賞を受賞しカムバックする。まさにミッキー自身のセミドキュメンタリーを観ているかのようでもある。
『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』
製作年/2008年 監督/デビッド・フィンチャー 共演/ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン
ブラピのイケメンの変遷が一気に観られる!
若い時代から、中年になった現在まで、それぞれの年代でカッコいい男のトップに君臨し続けたブラピ。その“変貌”を一気に再現してくれるのが、この作品だ。
主人公のベンジャミン・バトンは、生まれたときに80歳の肉体で、時間とともに若返っていくという、“逆行人生”を歩む。背景となるのは、第一次世界大戦の終わりからの激動の歴史。かなり壮大で突飛なシチュエーションだが、軸になるのはベンジャミンのラブストーリー。
監督は、ブラピの起用が今回で3度めとなる鬼才、デヴィッド・フィンチャー。新たなビジュアルへの挑戦が大好きな監督ということで、特殊メイクや、顔の演技をキャプチャーしたCGなど、最大限に駆使される特殊効果が見どころ。
戦争アクションから、恋人デイジーの踊るバレエといった幻想的シーンの数々、エモーショナルな人間ドラマ……。あらゆる映画のジャンルが詰め込まれたぜいたくな内容でもある。
『弁護人』
製作年/2013年 監督・脚本/ヤン・ウソク 共演/イム・シワン、キム・ヨンエ、クァク・ドウォン
正義に目覚めていく弁護士を熱演!
1980年代初頭、軍事政権下の韓国、プサン。高卒だが独学で法律を学び、弁護士となったウソクは法廷には立たず、割のよい税務の仕事で家族を養っていた。そんなある日、恩人である食堂の女将の、大学生の息子が共産主義者のレッテルを貼られ、不当に逮捕・拘束されるという事件が発生。拷問を受け、自白を強要された彼を救うため、ウソクは弁護にあたる。しかし、それは自身を危険にさらすことを意味していた……。
後に韓国の大統領となったノ・ムヒョンの若き日の体験に基づく社会派ヒューマンドラマ。最初は家族のために金を稼ぐことしか考えていなかった弁護士が、法を逸脱した権力に怒りを覚え、社会正義に目覚めていく。そんな胸中の変化を、ガンホが鮮やかに体現する。法廷で怒りに突き動かされて怒鳴るのは常識的にどうかと思うが、ガンホが演じるとそこに人間味が宿る。彼の愛すべきキャラクターを再確認できるに違いない。
『ワンダー 君は太陽』
製作年/2017年 原作/R・J・パラシオ 監督・脚本/スティーヴン・チョボスキー 出演/ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、ジェイコブ・トレンブレイ
ベタな感動が苦手な人も涙に誘われる!
映画で感動するポイントは人それぞれ。物語や登場人物にいかに共感するかが重要だが、ストレートでわかりやすく涙腺を刺激するパターンが好きな人もいれば、ベタな表現には引いてしまうけど、静かに胸にしみわたる繊細さは好きという人もいる。しかしごく稀に、あらゆる人を納得させる感動映画が誕生する。この『ワンダー 君は太陽』は、そんな1作だ。
主人公は、トリーチャー・コリンズ症候群という遺伝子疾患によって、人とは違う顔で生まれてきたオギー。10歳にしてすでに27回もの手術を経験した彼が、一般の小学校にはじめて登校するところから、この物語ははじまる。外見のせいで奇異な視線を浴び、いじめを受けながらも、友人を作り、学校生活に必死に慣れようとするオギー。この設定だけで、ストレートな感動は保証される。
しかしこの作品は、さらに一段上の予期せぬ感動を用意している。最初はオギーと仲良くするが、その裏にさまざまな葛藤を抱えたクラスメイト。オギーを育てるために自分の夢を犠牲にした母。両親がオギーのことばかり考えるので、つねに放っておかれる姉。そしてその姉の親友も複雑な状況に悩み……と、周囲の人物に視点を切り替えることで、彼らの心情が切なく胸に迫る作りが素晴らしい。しかも各人物のドラマが、パッチワークのように見事に絡んで行くものだから、難病モノというジャンルを軽々と超え、ベタな感動が苦手な人も、あちこちで不覚な涙に誘われるのだ。
『運び屋』
製作年/2018年 製作・監督・出演/クリント・イーストウッド 出演/ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ
ダメ老人の愛嬌になぜだか応援したくなる!
ベースになっているのは、2014年に全米を驚愕させた実話。メキシコの犯罪組織に雇われ、コカインをせっせと密輸したおじいさんの物語だ。家庭をないがしろにしたせいで妻や娘に去られ、そのうえ大好きな仕事も失った老人。そんな彼がなんとなく請け負った麻薬の運び屋、これがなんだかんだで意外とうまくいってしまう。
90歳も近い彼の性格は、一言でいうとむちゃくちゃマイペース。そもそもこの人、反省はするけど「まぁ、いっか」的な態度が家庭をダメにしたわけで。運び屋中も自由で、麻薬を積んでいるくせに美味しいダイナーに寄り道したり、困っている人を助けたり。のほほんとした姿勢が、逆に功を奏していく。
たぶん彼をイーストウッド以外が演じたらイラッとすることもありそうだが、そうはならないのが愛され俳優たる“イーストウッド力”。憎めないし、なんなら応援したくなる。とはいえ、「俺ってチャーミングだろ?」的な嫌味はなく、犯罪に手を染めちまった感も一応漂わせているのがいい。このあたりのどうしようもなさを、冷静に描いているのは監督としての“イーストウッド力”。無償でリスペクトされている理由を、ぜひ本編で。
『ホテル・ムンバイ』
製作年/2018年 監督・脚本・編集/アンソニー・マラス 出演/デヴ・パテル、アーミー・ハマー
誰が犠牲になるかわからない状況に震える!
ムンバイの各所で起こる銃撃や爆発シーンで、オープニングから一気にたたみかけてくる本作。この緊迫感は、最後の最後まで途切れることはない。その後に描かれる高級ホテルでの攻防、ロビーでの銃乱射、レストランからの脱出、鍵をかけた客室にも迫る危機は、リアルな表現で、その惨劇に目を覆いたくなるほど。いつ、誰が、次の犠牲者になるかわからない不安と戦慄は、この手のテロ事件映画の中でも最高レベルだろう。9.11同時多発テロで、ハイジャックされた機内を再現した傑作『ユナイテッド93』を彷彿とさせる作品だ。
生まれたばかりの我が子を救おうとするアメリカ人夫婦など感動ポイントも多いが、最も胸を揺さぶるのは、従業員たちの自己犠牲精神。ホテルから脱出できたにも関わらず、宿泊客を守るためにホテルに残るという彼らの選択は、まさに“名もなきヒーロー”の姿そのもの。一方、本作では少年のようなテロ実行犯たちの素顔にもフォーカス。電話越しに指示を出す首謀者によって彼らが“操られていた”という沈痛さもあぶり出している。かなりヘビーな体感映画かもしれないけれど、生き残るために立ち向かった人々の勇気には胸を打たれるはず!
『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』
製作年/2019年 製作総指揮・出演/リズ・アーメッド 原案・監督・脚本/ダリウス・マーダー 出演/オリビア・クック、ポール・レイシー、ローレン・リドロフ、マチュー・アルマリック 配信/アマゾン プライム・ビデオ
聴覚を失ったミュージシャン、その生き方とは?
本作の主人公は、恋人とロックバンドを組み、トレーラーハウスを走らせながらアメリカ各地でライブ活動を行っているルーベン(アーメッド)。ドラム担当の彼はある日のライブ中、聴覚の異常に気づく。医師の診断を受けた彼は、回復の見込みがないと知って自暴自棄に。心配する恋人の勧めを受け、ろう者のためのコミュニティで暮らすことになるが……。
音を失ったルーベンが、今までのままでいるのは不可能。彼にできるのは、新しい現実を受け入れることだけ。そんなルーベンの戸惑い、恐怖、嘆き、もがき、そして気づきを、リズ・アーメッドが誠実に切々と演じている。
また、物語はルーベンだけでなく、恋人のルー(オリヴィア・クック)にも目を向けている。ルーベンが“今まで”と切り離されたように、ルーにも新しい日々が。変わりゆくものが押し寄せる中で自分自身と向き合ったとき、果たして愛だけは今までのまま存在し続けるのか? リアルなラブストーリーとしても、考えさせられるものがある。
『ミナリ』
製作年/2020年 製作総指揮/ブラッド・ピット 監督・脚本/リー・アイザック・チョン 出演/スティーブン・ユアン、ハン・イェリ、アラン・キム、ユン・ヨジョン
新天地で支え合う家族の姿に感動!
農業での成功を目指す韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、家族を連れてアーカンソー州に移住。広さはあるものの荒れた土地とボロボロの住居を前に妻は不安を隠せないが、しっかり者の長女と好奇心旺盛な長男は新天地での日々に期待を膨らませる。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、一家の暮らしはゆっくりと前に進みはじめるが……。
80年代のアメリカ南部で、理不尽な運命に翻弄されながらも逞しく生きる家族の物語。祖母役のユン・ヨジョンが、アカデミー賞助演女優賞を受賞。どんな困難が襲い掛かっても家族と一緒なら乗り越えられるという、ストレートなメッセージに背中を押される。
『ノマドランド』
製作年/2020年 原作/ジェシカ・ブルーダー 製作・監督・脚本・編集/クロエ・ジャオ 製作・出演/フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン、リンダ・メイ
オスカーを制した話題作!
先日のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞を獲得した話題作。経済破綻で自宅を手放すことにした主人公ファーンが、ワゴン車を住居にして働き口を求めて転々とする。物語だけ聞くとシビアで重い印象。ところが、予想以上にポジティブな気分に導かれるのが、この映画のマジックなのだ。
大企業アマゾンでの梱包作業や、国立公園の清掃などで出会いと別れを繰り返すファーンの日常に、アメリカ各地の雄大な自然が重なって、ロードムービーに浸っていく感覚。とにかく各地の映像が美しい! これまでのアメリカ映画では目にしたことのない珍しい風景も出てきたりして、まるで旅行気分も味わえるのが『ノマドランド』の魅力なのだ。
タイトルのノマドは、本来の意味である“遊牧民”から発展し、定住しないで人生を送る人たちのことを指すようになったが。ファーンのノマドライフを観ていると、余計なものを持たず、自由に生きる幸せが伝わってくる。
ファーン役のフランシス・マクドーマンドは、ノマドライフを体験して役作り。そしてファーンの仲間には、実際にノマドとして生きる人々もキャスティング。味わい深い演技を見せてくれる。
寒さに耐えて車内で眠ったり究極にお金に困ったりと、現実的エピソードもあるが、料理やトイレのアイデアなどキャンプ生活のヒントにもなるし、DIYに役立ちそうなネタもいっぱい。とりあえず断捨離したくなるのは確実!? ノマドたちの生き方は、いろいろな意味でお手本になるはずだ。
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