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CULTURE カルチャー

2023.02.04

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~Vol.15
『タイタニック』が映画界に残したものとは?

 

 


「俺は世界の王だ!」(I’m the King of the world!)――。

世界制覇のチャンピオンベルトを手にしたような、ジェームズ・キャメロン監督のものすごい歓喜の叫びがいまも忘れられない。1998年3月23日、第70回アカデミー賞授賞式における、『タイタニック』で監督賞を受賞した時のスピーチである。1997年12月19日に全米公開された本作は、14部門ノミネートで、11部門受賞。これは2023年現在でも、第32回(1960年)の『ベン・ハー』(監督:ウィリアム・ワイラー)、第76回(2004年)の『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(監督:ピーター・ジャクソン)と並ぶ歴代の最多受賞記録だ。ちなみに「俺は世界の王だ!」は、レオナルド・ディカプリオ(彼はオスカー受賞を逃してしまった)が演じる主人公の青年ジャックの有名な台詞の引用だが、もちろんキャメロンの“本気”がその言葉にこもっていたことは間違いないだろう。 

 
 

 


20世紀最後を飾る映画界の豪奢な伝説となった、パラマウント・ピクチャーズ&20世紀フォックスの超大作『タイタニック』。その巨大なツメアトを振り返ってみると、改めて圧倒させられる。まず興行成績。リアルタイムの劇場公開当時の記録で、全米で6.6億ドル、日本で262億円、全世界で21.9億ドル。当時、歴代世界興収のトップだった『ジュラシック・パーク』(1993年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)の9.1億ドルを遙かにぶっちぎって首位に君臨。『タイタニック』の記録を初めて抜いたのは、ジェームズ・キャメロン監督自身の『アバター』(2009年)だった。
 

 


ちなみに2023年1月29日までの記録だと(データは Box Office Mojoから引用)、歴代世界興収の1位は『アバター』で29億2370万ドル。

2位は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年/監督:アンソニー&ジョー・ルッソ)で27億9943万ドル。

3位が『タイタニック』で21億9469万ドル。

4位が昨年末に公開されたばかりの『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』であり、現時点で20億7475万ドル。つまりオールタイム・ヒットチャートの最上位はジェームズ・キャメロンだらけなのだ。確かに“King of the world”! 続く5位は『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』(2015年/監督:J・J・エイブラムス)で20億7131万ドルとなっている。
 

 


日本での興収成績では、『タイタニック』は歴代3位。1位は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年/監督:外崎春雄)で404.3億円、2位は『千と千尋の神隠し』(2001年/監督:宮崎駿)で316.8億円。さすがアニメの国ニッポンといった感じだが、しかし『タイタニック』の興収262億円という数字は、のちの3D版の公開分(2012年)は含んでいない。このたび2023年2月10日(金)から、“25周年3Dリマスター版”が2週間限定で日米同時に劇場公開されるのだが、こうやって再映が続くと、上位作品の成績を抜いちゃう可能性もあるんじゃないか?とも思える。

2021年5月の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では前後編に分けて二週連続で放送され、特にリアルタイムで『タイタニック』に出会えなかった未体験世代から大反響を呼んだが、確かに本作の魅力と凄みはいま観てもまったく色褪せていない。
 

 


周知の通り、『タイタニック』のベースとなっているのは実話である。1912年4月14日から15日にかけて、北大西洋上で起こった豪華客船タイタニック号沈没事故だ。

レベッカ・キーガン著『ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男』(訳:吉田俊太郎/フィルムアート社刊)によると、歴史の授業でこの史上最大と呼ばれる海難事故のことを聞いたキャメロン少年は、「偉大なる文明の興亡の象徴」として語られるリアルストーリーにすっかり魅了されてしまったらしい。そして、ウォルター・ロードの1955年の著作『タイタニックの最期』(訳:佐藤亮一/ちくま文庫刊)と、その映画化であるイギリス映画『SOSタイタニック 忘れえぬ夜』(1958年/監督:ロイ・ウォード・ベイカー)に夢中になった。
 

 


10代の頃から海が大好きだったキャメロンは、1954年、カナダのオンタリオ州生まれ。スキューバダイバーや環境活動家としても知られる彼だが、『殺人魚フライングキラー』(1981年)で映画監督デビューし、遭難した米原潜救助に協力する民間深海作業チームを描いた快作『アビス』(1989年)など“海の映画”を撮るうち、タイタニック号事件の映画化というとてつもない夢を現実的に募らせていった。

かくして1997年、製作費2億ドル(約240億円)を投じて完成した『タイタニック』は3時間14分の長尺となった。だが、そこから現代のシーンと、最後のエンディングカットを除くと、実際にタイタニック号が沈没した時間と同じ2時間40分ぴったりに設計されていることは有名である。

ほぼ実物大のタイタニック号の複製セットを製作し(実際は全長269mのところを236mで設計)、史実の事件をそのまま再現するようなトチ狂った撮影を敢行。我々観客はタイタニック号が本当に2時間40分かけて沈んでいく過程をリアルタイムで体験することになる。

この壮絶な臨場感の追究により、名作『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年/監督:ロナルド・ニーム)などを受け継ぐ海洋パニック超大作の進化形ともなったことが、『タイタニック』の決定的な卓越のひとつと言える。
 

 


また水深1万3000フィート(約4km)で機能する35㎜カメラシステムを開発するべく、工学技師である弟のマイク・キャメロンに指令を出すなど、テクノロジー面の破格の逸話もやはり枚挙に暇がない。

その一方、『タイタニック』が広く大衆的な人気を獲得した要因は、王道のラヴストーリーでもあることだ(ちなみにキャメロンは「俺の映画はすべてラヴストーリーだ」と豪語している)。

主演はレオナルド・ディカプリオ(1974年生まれ)と、ケイト・ウィンスレット(1975年生まれ)。すでに日本でも“レオ様”の王子的愛称で大ブレイクしていた当時25歳のディカプリオに対し、オーディションで抜擢された当時24歳、イギリス出身のケイト・ウィンスレットは、『いつか晴れた日に』(1995年/監督:アン・リー)でアカデミー助演女優賞にノミネートされていたものの、まだ世間一般では新人扱いに近かった。

この若いふたりが“船上のロミオとジュリエット”という明快なコンセプトのもと、運命的な出会いを果たすジャックとローズを鮮烈に演じた。奇しくもディカプリオは『ロミオ+ジュリエット』(1996年/監督:バズ・ラーマン)でロミオ役を演じたばかり。ジャックとローズのイニシャルのJとRは、ロミオとジュリエットのイニシャルを入れ替えたものになっている(つまりあくまで架空の人物設定である)。

なにより素晴らしいのは、40代後半になったディカプリオもウィンスレットも、現在まで百戦錬磨の名優として順調にキャリアを重ねていることだ。公開当時は、ウィンスレットのプラスサイズの体型を揶揄する心ない声も目立ったが、いまでは女性のルッキズムやエイジズムに対して声をあげる先駆的な存在として支持されている。ディカプリオも“レオ様”からとっくに脱皮。味わい深い演技者として熟成しまくっている。
 

 


この“映画史上永遠のカップル”が、『タイタニック』以来、11年ぶりに最共演したのが『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』(2008年)だ。監督のサム・メンデスは当時のウィンスレットの夫。彼女とメンデスは2010年に離婚したが、ディカプリオとの友情は現在も揺るがぬものとして続いているらしい。

先ほどパニック超大作という観点から『ポセイドン・アドベンチャー』を引き合いに出したが、むしろ史実を背景にしたラヴストーリーのクラシックとして、『タイタニック』は『風と共に去りぬ』(1939年/監督:ヴィクター・フレミング)に近い作品なのかもしれない(ちなみに米劇場主協会によるとインフレ調整をした実質的な歴代世界興収では、現在でも『風と共に去りぬ』がNo.1だと言う)。

最近でも第74回カンヌ国際映画祭グランプリ(第二席)を受賞したフィンランド映画『コンパートメントNo.6』(2021年/監督:ユホ・クオスマネン)の中で『タイタニック』への言及があったし、木村拓哉&綾瀬はるか主演の東映時代劇『レジェンド&バタフライ』(2023年/監督:大友啓史)でも同作オマージュとおぼしきシーンが出現する。やはりジャックとローズは“映画史上永遠のカップル”なのだ。
 

 
『タイタニック』
製作年/1997年 製作・監督・脚本/ジェームズ・キャメロン 出演/レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼイン、キャシー・ベイツ
 

 

 
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