バイオレンスな描写に衝撃を受ける映画『ハント』は第一級の韓国スパイ映画!
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ロバート・レッドフォードやクリント・イーストウッド、メル・ギブソンなど、スター俳優が名監督となって活躍する例は数多い。そこに新たに加わりそうなのが、あの『イカゲーム』の緑色のジャージ姿が世界的人気となった、韓国のイ・ジョンジェだ。
そのイ・ジョンジェが4年間も温めてきたシナリオを、初監督作として満を持して完成させたのが『ハント』。韓国映画ならではの、南北の分断を絡めたポリティカルアクションで、あの『シュリ』を思い出すような衝撃作になっている。舞台は1980年代。韓国では1980年、軍事政権に対する民主化デモで多数の犠牲者が出た光州事件が起こるなど、政治が混迷していた。そんな状況で、アメリカの首都ワシントンD.C.で米韓首脳会談が行われ、韓国大統領の命が狙われる。かろうじて阻止したのは、安全企画部の精鋭たち。一連の不穏な事件の背後に“トンニム”という暗号名の北側のスパイが関わり、安全企画部にも侵入しているという疑惑が濃厚になるなか、同部の国内チームのキム次長と、海外チームのパク次長は、たがいに疑惑の目を向けながら半ば強引に捜査を進めていき……。
イ・ジョンジェ監督の演出は冒頭からキレキレ。メインキャラのキムとパクのほかに、周囲の人物の関係はやや複雑なのだが、アクションの勢い、カット割りのうまさなどで、観ているこちらは飲み込まれる感覚。テンポよく展開が進み、そこにキムとパクの過去の因縁などをさりげなく盛り込んでいく。要所には目を覆うような残酷なシーンがあり、このあたりも監督の強い“覚悟”を感じられるはず。アメリカではじまり、東京やタイが舞台となる本作だが、撮影が行われたのはすべて韓国。1980年代の東京を再現したシーンは素晴らしく、細部まで目を凝らしてしまうほど。パク役を自身が演じ、キム役を『頭の中の消しゴム』などの、こちらも人気スター、チョン・ウソンに任せたイ・ジョンジェの思いは、ショッキングな事実も明らかになる後半にひしひしと伝わってくるはず。“俳優ならこういう役を演じたい”という瞬間が何度もあり、 “俳優監督”の作品として最高の例となっている。
『ハント』9月29日公開
監督・脚本・出演/イ・ジョンジェ 出演/チョン・ウソン、チョン・ヘジン、ホ・ソンテ 配給/クロックワークス
2022年/韓国/上映時間125分
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