観る映画を選ぶポイントは何か? 内容はもちろん、主演スターや監督などがあるが、ここ数年、ある映画会社の名前が挙げられることが多くなった。それは“A24”。アメリカの新進気鋭の映画製作・配給会社で、日本でも『ミッドサマー』が大ヒットしたように、若者を中心に絶大な人気を誇る。未体験のドキドキや面白さを提供してくれるのが、A24作品の魅力だ。
そのA24が北米で配給を手がけたのが『LAMB/ラム』。タイトルどおり、ラム=子羊が重要な役割を果たすのだが、とにかく心ざわめく展開&描写が待ち受けており、A24作品に期待する人を満足させるはずだ。舞台となるのはアイスランドの山間。羊飼いを生業とするイングヴァルとマリアの夫婦は、静かな日常を送っていたが、ある日、羊の出産に立ち会ったところ、産まれてきたのはいつもの子羊とは違う“何か”だった。かつて子供を亡くしていた彼らは、それを“アダ”と呼び、自分たちの子供として育てようと決意。優しく抱きしめ、ベビーベッドに寝かせ、お風呂にも入れ、やがてアダは立って歩くようにもなる。しかし、その姿は……。
誕生の瞬間、アダの外見はよく見えず、その後もしばらくは首の周辺しか画面に映らなかったりと、実体がわからない時間がしばらく続き、観ているこちらはどんどん前のめりになってしまう。そこが『LAMB/ラム』の巧妙さだ。成長するにつれ、動きや意思の表現も人間の子供に近づいていくアダ。奇妙な光景に何度も目を疑いつつ、どこか神聖な空気が漂う白夜のアイスランドで描かれるせいか、アダの存在が日常に馴染んでいくから不思議! つねに危険な事件が起こりそうな緊張感はキープされ、中盤、そしてクライマックスでは衝撃の演出も用意。強烈なインパクトが残されるのが、A24作品らしい。この『LAMB/ラム』の後も、A24関連の新作の日本公開は続き、その中にはアカデミー賞に確実に絡む作品もあるので、A24はさらなる大きなブームを起こしそうな気配だ。
『LAMB/ラム』9月23日公開
製作総指揮・出演/ノオミ・ラパス 監督・脚本/バルディミール・ヨハンソン 出演/ヒナミル・スナイル・グブズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン 配給/クロックワークス
2021年/アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作/上映時間106分
©2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON