大切な人に無性に会いたくなる! 『パドルトン』
派手なアクションもないし、スターも出演していない。でも何気なく観てみたら、心にしみわたり、しばらく頭から離れない……。この『パドルトン』は、まさにそんな映画。主人公は、アパートの上下階の部屋で、それぞれシングルライフを送る中年男2人。ビジュアル的には超地味だし、特殊なシチュエーションでもあるのだが、妙に共感してしまう瞬間が多いのだ!
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『パドルトン』
胸アツなポイントは?
“派手じゃない、ドラマチックでもないけど、男たちの友情に心揺さぶられる!”
アパートの1Fに住むアンディが、余命わずかという末期ガンの宣告を受けるところから物語ははじまる。家族もいない彼が最も親しくしているのは、2Fの部屋に暮らすマイケル。孤独な2人は、一緒に食事をしたり、大好きなカンフー映画を観たりという、ご近所づきあい。友情を育んでいたのだ。
タイトルの“パドルトン”は、壁打ちのスカッシュでボールを樽に入れるという、2人だけが楽しむゲーム。このあたりも、“永遠に子供”という男子的ムードがあって微笑ましい。苦しみたくないアンディが安楽死を決意。クルマで6時間かかる遠い町まで、クスリを手に入れるため、2人の旅がはじまる。
設定はシビアだが、2人のキャラが“のんびり”系なので、そのギャップが映画の独特の味わいになっている。主演2人のセリフが、ほとんど彼らの即興というのも驚く。だから、空気感があまりに自然なのかも……。
ここ数年、多くなってきたLGBTを扱った映画を思わせるが、2人の関係はあくまで友情。旅先での未亡人との微妙な駆け引きがあったり、はっきり語られないが、女性との複雑な過去があったりもする。
さらに、2人が夢中のカンフー映画が思わぬ感動を導くなど、クライマックスでは「大切な人が目の前からいなくなったら」という誰もが体験する感情で、静かに心が揺さぶられてしまうはず!
『パドルトン』
監督・脚本/アレックス・レーマン 脚本・出演/マーク・デュプラス 出演/レイ・ロマノ 配信/ネットフリックス
2019年/アメリカ/89分