『セキュリティ・チェック』配信中
製作年/2024年 製作総指揮・監督/ジャウム・コレット=セラ 脚本/T・J・フィックスマン 出演/タロン・エガートン、ソフィア・カーソン、ダニエル・デッドワイラー、テオ・ロッシ
想定外のスリルを体感できる!
主人公のイーサンは、アメリカ運輸保安局(TSA)の職員。その仕事場は、空港の手荷物検査レーン。モニターで乗客の荷物をチェックし、機内に持ち込んではいけない危険物を見つける。空港が大混雑するクリスマスイブに、イーサンは急遽、X線のモニター検査の担当になったところ、乗客が忘れていったイヤホンを発見。それを耳に付けると信じられない指令が聞こえてきた。ある乗客の荷物をノーチェックで通過させろ。さもなくば空港で働くイーサンの恋人の命を狙う、というもの。最初は戸惑うイーサンだが、犯人側が次々と恐ろしい手段を繰り出し、従わざるをえなくなっていく。いったい何が機内に持ち込まれるのか? カウントダウンの攻防が、一瞬も息もつかせぬスピードで展開し、観ているこちらもイーサンの気持ちになって心拍数が急上昇する!
『ピアノ・レッスン』配信中
製作年/2024年 原作/オーガスト・ウィルソン 製作/デンゼル・ワシントン 監督・脚本/マルコム・ワシントン 脚本/ヴァージル・ウィリアムズ 出演/ジョン・デヴィッド・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、レイ・フィッシャー、マイケル・ポッツ
デンゼル・ワシントンの次男、マルコム・ワシントンの監督作!
舞台は1930年代のアメリカ南部。主人公のボーイ・ウィリーが農地を買うため、家族にとって大切なピアノを売りに出そうとする。しかし姉のバーニースは頑なに拒否。そのピアノは、先祖の思い出を語り継ぐうえで大切な品だった……という物語。ピアノにまつわる過去のドラマが重なるのだが、想像どおり、そこにはアフリカ系アメリカ人にとって辛い過去が込められている。そんな風に本作を説明すると、人種差別問題に向き合った社会派作品かと思われるが、そっちに行き過ぎないのが特徴的。家族ドラマとして感情移入しやすい作りなのだ。カメラワークやカット割りなど、ちょっと巨匠のような安定感があり、監督経験もあるデンゼルからマルコムが学んだものが多いと納得。ロマンチックなシーンの見せ方は巧妙だし、要所にはホラー映画っぽい演出があり、意外な展開のクライマックスと、飽きさせない手さばきに感心してしまう。本作はアメリカで高い評価を受けているので、早くも次の監督作が楽しみに。是非今度は父親を俳優として起用してほしい!
『レズ・ボール』配信中
製作年/2024年 製作総指揮・製作/レブロン・ジェームズ 監督・脚本/シドニー・フリーランド 脚本/スターリン・ハルジョ 出演/ジェシカ・マッテン、カウチャニ・ブラット、クセム・グッドウィンド、ジュリア・ジョーンズ、アンバー・ミッドサンダー
テンポのよい展開に心も身体も乗せられていく!
主人公たちは、アメリカ、ニューメキシコ州のチャスカ高校のバスケットボールチーム。州大会を目指し、地区大会に挑むのだが、その
土地柄からチームのメンバーはネイティブアメリカン(アメリカ先住民)。タイトルの“レズ”とは彼らの居留地を意味する言葉で、シュートを重視するプレースタイルが“レズ・ボール”と呼ばれている。何かと人種の違いを意識させられたりするも、チームの結束力は強い。特に中心選手のジミーとナターニーには熱い友情の絆もあり、地区大会を2人で牽引するはずだったが……。“スポ根ムービー”では“お約束”ともいえる悲劇が映画のかなり早い段階で起こり、そこからチームが立ち直り、どんなスタイルで快進撃になだれ込むかが本作のメイン。彼らを奮い立たせる女性コーチのドラマも絡み、テンポのよい展開に心も身体も乗せられていく。
『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』配信中
製作年/2024年 原案・脚本/ウィル・ビール 製作/ジェリー・ブラッカイマー 製作・出演/エディ・マーフィ 監督/マーク・モロイ 出演/ジョセフ・ゴードン=レヴィット、テイラー・ペイジ、ジャッジ・ラインホルト、ジョン・アシュトン、ケヴィン・ベーコン
オリジナルの楽しさが甦る!
『ビバリーヒルズ・コップ』は、1984年に第1作が公開。エディ・マーフィの底抜けに明るいキャラが刑事役にハマって大ヒットし、1994年の第3作までシリーズが続いた。つまり今回は第1作から40年ぶり。そして前回の作品から30年ぶりという、かなり長いインターバルでの復活だ。さすがにエディもシブいベテラン刑事に変貌しているかと思いきや……30年前のイメージとほぼ同じ! エディ・マーフィは現在63歳なのだが、演じるアクセル・フォーリーの、おなじみの調子の良さ、マシンガントーク、さらに軽やかな肉体の動きを完璧にこなし、観ているこちらがタイムマシンで過去に戻ったような錯覚さえおぼえてしまう。デトロイト市警のアクセルが、ビバリーヒルズにやって来て難事件を捜査する展開はシリーズのお約束どおり。ただし今回は、アクセルの娘の命が危険にさらされる、というきっかけだ。
シリーズの最初の2作を手がけたジェリー・ブラッカイマーが製作に戻ったせいか、エンタメ的なノリが全開。オープニングでいきなり、あの『ヒート・イズ・オン』が流れ、オリジナルの楽しさが一気に甦る。カーチェイスや銃撃がポイントで派手に演出され、アクセルがベテラン刑事ならではの裏テクも駆使。笑えるネタ、父と娘の葛藤でによるちょっぴりシリアスな展開など、バランス良く盛り込んだ構成に、ハリウッド映画の王道を感じられる。
『ULTRAMAN: RISING』配信中
製作年/2024年 監督・脚本/シャノン・ティンドル 共同監督/ジョン・アオシマ 声の出演/タムリン・トミタ、ゲディ・ワタナベ、キーオニー・ヤング、クリストファー・ショーン、ジュリア・ハリマン
英語で”シュワッチ”はどう表現する!?
主人公は、野球界のスーパースターであるサトウ・ケン。LAのドジャースから日本球界に移籍した彼は、スーパーヒーローに変身する能力を持っており、現れた怪獣と戦う。基本は、おなじみのウルトラマンの設定。怪獣が存在する世界は、明らかに非現実的なのだが、この作品、驚くほどリアリティ満点なパートがある。それは野球まわりの描写、日本の街並みの映像だ。ケンが入団するのは読売ジャイアンツ。そのユニフォームは本物どおりで、東京ドーム(名前は『新東京ドーム』に変更)の内部から、TV中継のスコア表示まですべて、われわれ日本人が見慣れた光景になっている。ケンは松井秀喜に憧れて野球選手になり、メジャーリーガーも経験したのでイチローや大谷の名前も出てくる。登場人物が『六甲おろし』を歌ったりも。そしてウルトラマンが戦う日本の街は、おなじみの看板が並び、微妙に変更された会社名や商品名を見ているだけでテンションUPしてしまう!
『REBEL MOON ー パート2:傷跡を刻む者』配信中
製作年/2024年 製作・監督・脚本/ザック・スナイダー 出演/ソフィアブテラ、ジャイモン・フンスー、エド・スクレイン、アンソニー・ホプキンス、ペ・ドゥナ
エモーショナルな結末が待っている!
パート1のラストで、コラに倒された宿敵のノーブル提督だが、明らかに“復活”の予感を漂わせていた。パート2は、そのノーブルの再生を描くオープニングから衝撃的である。そしてパート1では謎だった戦士軍団の過去や、アイデンティティーが明かされ、彼らの戦いへのモチベーションがさらに伝わってくる作り。このあたりをじっくり観せると逆に中だるみになるが、短くスッキリ描いたのも好印象だ。コラが“流れ者”の戦士になった経緯は、ザック・スナイダー監督らしい壮大かつ幻想的な映像美も備わっている。そしてスナイダーらしさと言えば、アクション場面の巧妙すぎる演出。物語の流れからして、あちこちでの戦いが同時進行するが、その配分や、何が起こっているのかの的確なアングル&編集、スローの使い方、さらにアクション映画としての斬新な試み……と、まさに一瞬たりとも目が離せない時間が続く。その先にエモーショナルな結末が待っているのは、もちろん言うまでもない!
『スペースマン』配信中
製作年/2024年 原作・製作総指揮/ヤロスラフ・カルファシュ 監督/ヨハン・レンク 脚本/コルビー・デイ 出演/アダム・サンドラー、キャリー・マリガン、クナル・ネイヤー、ポール・ダノ
宇宙の感覚を疑似体験!?
『スペースマン』の主人公は、チェコの宇宙飛行士ヤコブ。木星の向こう側に広がる、チョプラと呼ばれる雲を調査するミッションに、わずか一人で挑んでいる。地球に残った妻は妊娠中。ヤコブは広い宇宙空間で、孤独のためにやや精神的な限界も感じていた。そんなある日、宇宙船内で“何か”の存在を感じはじめるヤコブ。地球から遠く離れたこの場所で、彼には信じがたい運命が待ち受けていた……。2017年に発刊された小説『ボヘミアの宇宙飛行士』の映画化。宇宙でのミッションを展開するのがヨーロッパのチェコというのが斬新で、しかもライバルの国が韓国。グローバル化が進んだ未来を観ているような感覚を味わえる。ヤコブを演じるアダム・サンドラーは、得意のコメディ演技を封印し、シリアスさで勝負。妻レンカは『マエストロ:その音楽と愛と』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたキャリー・マリガンで、彼女の絶好調ぶりがうかがえる。
『ポップスが最高に輝いた夜』配信中
製作年/2024年 製作・出演/ライオネル・リッチー 監督/バオ・グエン 出演/マイケル・ジャクソン、ブルース・スプリングスティーン、シンディ・ローパー、ボブ・デュラン、スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、ヒューイ・ルイス
次から次へ興奮の映像が、ここまで途切れないのは奇跡的!
それは、1985年のこと。音楽の世界で、ひとつの歴史が作られた。超一級のアーティスト45人が“USAフォー・アフリカ”として集まり、レコーディングした『ウィ・アー・ザ・ワールド』が、全世界で2000万枚という大ヒットを記録。アフリカへのチャリティーとして、その印税は全額寄付された。あまりに有名な曲となったわけだが、当時から“よくここまでのメンバーが一同に集まれたものだ”と話題になった。本作は、その舞台裏を貴重な記録映像とともに展開。レコーディング決行の1月28日は、アメリカン・ミュージック・アワード(AMA)の授賞式で、人気ミュージシャンが揃っており、さらに賛同した面々が駆けつけたことで、LAのスタジオで信じがたい光景が実現したのである。
AMAの司会を務めたライオネル・リッチーに、作詞・作曲を手がけたマイケル・ジャクソン、プロデュースのクインシー・ジョーンズが中心となり、驚くほど短期間で曲を完成するプロセスもスゴいし、“本当にみんな来るのか?”というスリリングなムードも再現。
そして当日のレコーディング風景には、ビッグネームたちの素顔がたっぷり収められ、1980年代ポップスを少しでも好きな人は感涙モノである。マイケルの献身的努力、意外に仕切るスティーヴィー・ワンダー、かなり戸惑っているボブ・ディラン……。カオスと化す時間、明け方までかかり、声も出づらくなってのソロパートの録音など、約40年前の映像とともに、現在のブルース・スプリングスティーンやシンディー・ローパーらが振り返るコメントも心にしみまくる。観ているわれわれに、彼ら天才ミュージシャンの気持ちを、同じ人間として近い感覚で共有させるのも本作の素晴らしさ。『ウィ・アー・ザ・ワールド』という曲自体がもちろん、音楽の偉大さを実感できる必見作だ。
『雪山の絆』配信中
製作年/2023年 原作/パブロ・ビエルチ 製作・監督・脚本/J・A・バヨナ 出演/エンゾ・ボグリンシク、アグスティン・パルデッラ、マティアス・レカルト、エステバン・ビリャルディ
クライマックスは激しいまでに感動!
1972年、ウルグアイのモンデビデオからチリのサンティアゴへ飛行中のチャーター機の連絡が途絶える。ウルグアイのラグビー・チーム一行45人が乗った同機はアンデス山脈で墜落。パイロットらは死亡し、続いていた捜索も打ち切られるなか、生存者16人はどのような運命をたどったのか……。航空機事故の歴史でも語り継がれるこの実話は、ハリウッドで1993年にイーサン・ホークらの出演で『生きてこそ』として映画化されたが、今回は『ジュラシック・ワールド 炎の王国』で知られるスペイン出身のJ・A・バヨナ監督が、ラテン系の俳優を集め、セリフもスペイン語にするなど徹底してリアリティ重視で再現している。
極寒の雪山。食料もわずか。目の前で仲間が次々と命を落としていく。もちろん外部と連絡する方法は見つからない。そんな過酷な状況での、生存者たちの“究極の選択”も本作は、しっかりと見据え、背筋が凍る瞬間が多発する。食べ物が制限されると、こんな生理現象が起こるのか、というシーンにはびっくり。俳優の極端なアップで寒さと閉所の両方を伝え、広大な雪山をとらえたワイドショットで孤立感を倍増。こうした映像の使い方も計算されたうえ、日に日に死が迫ってくる恐怖と、「絶対に生還する」という決意や勇気が、それぞれの人物を通してエモーショナルな高みへと達する展開が見事だ。
Sam Lothridge/Netflix © 2024
© 2024 Netflix, Inc.