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2022.11.01


【ジョージ・クルーニー 】最新作『チケット・トゥ・パラダイス』を語る。

【ジョージ・クルーニー 】最新作『チケット・トゥ・パラダイス』を語る。PROFILE
1961年、米・ケンタッキー州生まれ。人気ドラマ『ER緊急救命室』のドクター・ロス役でブレイク。『オーシャンズ』シリーズなどで映画界のトップスターとなる。2006年、『シリアナ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞。以降、『フィクサー』『マイレージ、マイライフ』『ゼロ・グラビティ』などに出演している。監督としての評価も高く、『グッドナイト&グッドラック』でアカデミー賞監督賞の候補に。近年の監督作に、『ミッドナイト・スカイ』『僕を育ててくれたテンダー・バー』などがある。

ハリウッドきっての大物独身セレブとして50代前半までを過ごしていたジョージ・クルーニーも、いまやよき家庭人であり、2人の子供の父親。2011年の主演映画『ファミリー・ツリー』で等身大の悩める父親を演じたときは随分と新鮮な印象を受けたものだが、近頃はさすがに父親役が板についてきている。もっとも、近年はかなり出演作を絞っているのもあり、映画の中で彼を目にする機会自体が貴重でもあるのだが。

そんな中で届いた出演最新作『チケット・トゥ・パラダイス』は、ハリウッドらしさ満載のハートフルなリゾートコメディだ。クルーニーが演じるのは、25年前に結婚し、娘を授かるものの5年で結婚生活の終焉を迎えた男。元妻と犬猿の仲にある彼は離婚以来の20年間、ことあるごとに元妻といがみ合い、皮肉の応酬を続けてきた。そんな両親の姿に、いまやロースクールを卒業し、司法試験に合格して弁護士事務所に就職しようという娘もあきれ顔を見せている。

「僕が演じたデヴィッドは、大抵のことには自信を持っている。けれど、妻だったジョージアに対してだけは、どこかぐらついてしまうんだ。離婚してもう何年も経つのに、まだ熱いものが彼の中にくすぶっているんだろうね。でも、きっとジョージアのほうは吹っ切れているとデヴィッドは思い込んでいて、その事実と折り合いをつけなきゃいけないと感じている。彼女には新しい彼氏がいるし、自分なしで人生を切り開いてきたはずで、今さら傷ついたり、ただでさえややこしい事態に拍車をかけたりするようなことは避けたいと思っている。そして、娘との親子関係が崩れるのだけはご免なんだ」

しかし、映画の開始早々、デヴィッドが最も避けたかったという“親子関係の崩壊”を招きかねない事態が発生。就職前のバカンスに出かけていた娘リリーが旅先のバリで地元の青年と恋に落ち、電撃結婚するという。帰国後まもなくはじまるはずだった新生活を捨てて。驚いたデヴィッドとジョージアは一旦休戦し、娘の結婚を阻止しようと一路バリへ。しかしながら休戦協定がすんなり守られるはずもなく、やがて2人は“くすぶっていた熱いもの”にも翻弄されはじめる。まるで、ハリウッドの古きよき香りすら漂うロマンチックコメディの主人公たちのように。ジョージアを演じるジュリア・ロバーツとクルーニーといえば、『オーシャンズ』シリーズのダニーとテスとしても知られる仲。思い返せばダニーとテスも、“くすぶっていた熱いもの”に翻弄されがちな元夫婦だった。ちなみに、クルーニーとロバーツは2016年のサスペンス映画『マネーモンスター』でも共演している。

「ジュリアも僕も再共演できる企画を積極的に探していたわけではなかったけれど、彼女とまた仕事ができるとなればやっぱり出演したい気持ちにはなった。監督のオル・パーカーは僕ら2人を想定して物語を書き、僕とジュリアへ同時に脚本を送ってきたんだ。それで僕は読み終えてすぐ、ジュリアに電話をした。『そっちがやるなら、こっちもやる』とね。彼女は『そっちがやるならやるわ』と返してきたよ。それからまもなく、ジュリアも僕も撮影地のオーストラリアに向かった。ジュリアと相性がいいのは、お互いの笑いのツボを心得ているからだと思う。笑いのセンスが似ているし、お互いにピンとくるんだ。昔からそうだったね。それに僕は(1997年の)『素晴らしき日』以来ロマンチックコメディをやっていなかったから、絶好のチャンスだとも思ったんだ」

『素晴らしき日』は30代クルーニーの姿が見られる1作で、実はこの映画で演じた役もバツイチの子持ち。ではあるが、元妻と暮らす幼い娘を久々に預かる役どころで、“父親っぽさの欠如”が物語の鍵にもなっていた。それでいうと、『チケット・トゥ・パラダイス』のデヴィッドはよい父親かどうかはさておき、娘の決断にオロオロする姿も、余計なことをして事態をより混乱させる様も“父親らしい”。自身と役柄を比べることはないだろうが、年々長くなっていくクルーニー自身の夫歴や父親歴が、ナチュラルな演技と違和感のなさに繋がっている気はする。

ところで、実生活のジョージ・クルーニーはというと、もちろん進んでプライベートを明かすタイプではないが、先月は弁護士の妻アマル・クルーニーとともに公の場に姿を現す機会が続いた。29日には、自身が主宰するクルーニー財団のイベントに夫婦揃って出席。ちょうど同じ月に、結婚8周年の記念日も迎えている。こうなると主人公のデヴィッドが見習うべきお手本にも思えてくるが、そんなクルーニーだからこそ役を余裕たっぷりに楽しめたのかもしれない。この調子で、いろいろな父親像を演じてみるのはいかがだろうか。というより実のところ、出演本数がもう少しだけ増えればそれでいいのだけど。

『チケット・トゥ・パラダイス』
【ジョージ・クルーニー 】最新作『チケット・トゥ・パラダイス』を語る。ロースクールを卒業したばかりの愛娘が、卒業旅行先のバリで地元の青年と恋に落ち、電撃結婚を決意。20年前に離婚して以来、ことあるごとに対立してきたデヴィッド(クルーニー)と元妻は娘の結婚を阻止すべく結託し、バリへと乗り込んでいくが……。監督は『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』のオル・パーカー。クルーニーと元妻役ジュリア・ロバーツは製作総指揮にも名を連ねている。●11月3日より、全国ロードショー
©2022 Universal Studios. All Rights Reserved.


Julia and I weren’t actively looking for a project
to do together, but, of course, it was easy to say yes
to a chance to work on another project with her.
ジュリアも僕も、共演できる企画を積極的に探していたわけじゃなかったんだけれど、
彼女とまた仕事できるとなればやっぱり、受ける気になったね。
ジョージ・クルーニー

 
Information

『Urban Safari』Vol.30 P6~7掲載

photo by Getty Images 文=渡邉ひかる
photo by Getty Images text : Hikaru Watanabe
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