上質なオリジナル生地を創り出す一方、イタリアンファッションブランドとして他に類を見ない存在感を放つ〈エトロ〉。その象徴といえば、創業者ジンモ・エトロがインド・カシミール地方の伝統紋様の美しさに魅了され、それらを芸術の域まで高めたペイズリー柄のテキスタイル。また、大胆な色や柄使いも多くを魅了するところだ。そんな華やかなイメージを放つブランドの魅力をエトロ ジャパン代表取締役社長のファビオ・ストラーダに聞くと、意外な答えが返ってきた。
「楽しく遊び心があってカラフルであることはオリジナリティのひとつです。でも、私たちのコアバリューは本当に心地よいと思える服。あるいは、こうありたいと願う自分を演出できる服です。それは人に見せるための服というより、むしろ自分が喜ぶための服。とはいえ〈エトロ〉の服は、女性から褒められるという声をよく聞きます(笑)」
実は、〈エトロ〉は日本でのマーケットシェアが世界No.1。次第にメンズの認知度も高まってきているが、それでもやみくもに店舗数を増やすことは考えていないという。
「やはり“量より質”が第一なのです。そんなブランドの価値観を伝えるうえで、ショップは非常に大切な場所。そのため店頭のスタッフは、ファッションアドバイザーとしてプロのスタイリストと同じレベルの知識と提案力を身につける研修を受けています。そうしたスタッフがまずお客様と信頼関係を築くこと。その積み重ねがあってはじめて、クラフツマンシップにこだわるブランドの魅力が伝わるのではないでしょうか」
とかく華やかなイメージがある〈エトロ〉だが、その真ん中にある魅力はイタリア伝統のクラフツマンシップにあるという。袖を通すことで得られる喜びは、まさにブランドの価値そのもの。リピーターが多いのも頷ける。
写真=仲山宏樹 文=遠藤 匠
2020-04-15